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システム開発規模の肥大化はなぜ起きるのか?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

ある中堅企業の社長さんから「鈴木さん、システム化しようとしているのですが、提案された見積があまりにも高すぎて困っています。」とのご相談がありました。その会社は社員数にして1,000名を越えている、押しも押されもしない大企業と言っても良い規模です。早速お邪魔して過去の経緯などを調べさせて頂いたところ、社長が高すぎると言わざるを得ない状態に至る理由がはっきりしました。

この会社は、過去1年以上前に外部コンサルティングファームの支援の元、システム化プロジェクトを全社で発足させ、各部門の課題を集約しました。その結果の資料(全部印刷してみましたが、久しぶりに風呂敷が無いと運べないボリュームでした)を見たところ、実に様々な課題が書いてあり、それを全部とりまとめて数十の課題群に分類した上で優先順位を付けていました。また、それぞれの業務のプロセス図も添付されており、作業が大変だったことを物語っています。

ここまでは、良くある流れなので、全く問題ありませんが、実はこれが「規模の肥大化」を招くプロジェクト迷走の開始点です。課題を集約して分類するところまでたどり着いたプロジェクトは、この後それを解決するシステム要求の明確化に突入しました。当然その検討作業の終着点にはシステム選定があります。要求をシステム会社に渡したわけなので、当然のことならがそれに対応する提案と見積が来ます。問題はそれが巨大だったことです。

前述の通り、「困りごと」レベルを分類したものをシステム会社に渡して、「これを解決できるシステムを提案してください」とやったので、受けたシステム会社はこれらの課題を全部理想的にクリアできるものを提案しなければなりません。一つでもクリアできない課題が残るようであれば採用されませんから、全部をクリアしてあまりある規模のパッケージソフトなどを提案せざるを得ません。

結果的に、数億円規模の見積書が社長の机に並べられ、「どれを採用するか?」という社内での話が始まります。会社の財務体質面では数億円の投資にはなんとか耐えることができるので、システム担当者も決裁をもらえると思っていたことでしょう。

ところがです。社長は現場の細かい課題を全部分類したもの見ても、経営方針の実現や会社の将来の為になる施策には見えません。社長が考えていることと全然リンクしていないのです。厳密に言えば、きちんと理論的に社長のお考えと現場課題の間の関連性を分析すればリンクするはずのものも多くありますが、課題群が玉石混淆状態なので、社長にそこまで読み解くことは無理です。結果的に「経営の役に立たないものに何億もの資金を投じることはできない」という判断になってしまいました。

このプロジェクトはいったいどこで失敗したのでしょうか?課題をヒアリングするところまでは良かったのですが、それと平行して経営の課題についても分析分類を進めるべきだったのです。それによって、少なくとも社長がびっくりしてしまう事態を免れることはできたはずです。1年以上も活動していて、その間要所要所で社長への報告をしていたので、チャンスは何回もあったと思います。それが返す返す残念です。

この会社がその後どう立ち上がったか・・・については折を見てご紹介したいと思います。

経営者の皆さんには、システム化を社員に丸投げするのではなく、経営者としてきちんとプロジェクトに関与し、経営改革に貢献するシステムを企画できるように舵取りするべきだと進言致します。ITの知識は全く不要です。若手の社員は充分サポートしてくれますから。

 

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