VOL12. 競合と10年顧客戦略
10年顧客が増える企業は「異業種も競合として丁寧に見ている」、
たどり着けない企業は「同業界ばかり競合として見ている」
先日、売上が落ちている経営者の方とお話する中で、「同業の企業に勝っていると思うんですよ。やっぱり“業界全体が落ち込んでいるから”なのかな」というお話をお伺いしました。
確かに日本の市場は、一つ一つの業界を10年単位で見ると売上がダウンしている業界がたくさんあります(アパレル業界・百貨店業界等)。日本全体がほぼゼロ成長なので、ちょっと大雑把ですが、半分の業界が上がって、半分の業界は下がっているのです。
- 業界動向と自社売上の関係
業界のマーケット規模がドンドン拡大している時は、同業の企業に負けていても(市場シェア5%下がっても)、それ以上に業界が上がっていれば(10%アップしていたら)自社売上は上がります。成長時代は異業種に売上を取られている現実はありましたが、それほど異業種を意識する必要がなかったのです。
業界のマーケット規模が下がっていると、同業の企業に勝っていても(市場シェア3%上がっても)、それ以上に業界が下がっていれば(5%ダウンしていたら)、自社売上は下がります。自分とは異なる業界から、売上を取ってくることで、はじめて売上が上がります。
市場が拡大しない日本市場で、これからも企業を成長させたい経営者は、同業はもちろん、異業種も競合として捉えていく必要があります。
- 異業種との競合をお客様の視点から見る
正直な所、ここまでの話はマーケティングのNEWS・本等で書かれていることも多いですよね。これからいよいよ核心に入っていきます。
これからの時代に10年顧客を増やしていくために大事なのは、「お客様の目線で実感として異業種と競合していることを認識すること」です。「売る側の視点だけではなく、異業種と競合していることをお客様の実態から身近に感じること」です。
言い換えると、お店のお客様は、自分の人生をより豊かにするために、その時々で楽しい気分になるために、どのお店(ネットショップも含む)でお金を使うのが望ましいのか、その時の状況を考えて、業界を横断して判断している実態を感じていることです。
例えば、ある男性に30万円のボーナスが入ったとします。
「どうしようかな。この30万円のボーナスの使い道…。もうそろそろ自動車が車検だなあ~、自動車の買い替えの頭金にしようかな、この前TVでやっていた海外旅行に行くのもいいなあ~、会社でこれから英語が話せるかが出世に影響するみたいだから英会話スクールに行こうかな…」=自動車業界、旅行業界、教育業界が競合しています。
例えば、ある女性の手元に、3万円の臨時収入が入ったとします。
「この3万円、どうしようかな…。この前、お店で見たかわいいジャケットを買おうか?そうだ、仕事用のパンプス、買おうと思っていたんだ?でも、昨日の夜、試してみた高級クリームのサンプル、よかったな。」=アパレル業界、靴業界、化粧品業界が競合しています。
私自身もそうですが、「このお店で、年間〇〇円使おう」と決めている人は少数派でしょう。ある一人のお客様の中では、自店、同業他店、異業種店、ネットショップのシェアは、大きく揺れ動いています。極めて現実的に異業種と競っている現実があります。生活必需品ではない場合、特に異業種との競合が顕著ですね。
- あらためて企業側の立場から考えてみる
今はお客様の気持ちを詳しく見てきましたが、店舗として詳しくみて見ましょう。
例えば、あるアパレルショップをあなたが経営しているとします。
洋服が売っているお店はたくさんあるので、まずは洋服を売っている同業店よりも、ウチのお店で買った方が良いと感じてもらうことが大事です。最初は同業のアパレルショップとの競争になります。
洋服を買うならこのお店と分かっていただいてからは、エステや旅行等の他のカテゴリーは必要最小限にして、洋服でお金を使う方が自分の人生が豊かになることを感じ続けてもらうことが大事になります。2万円でエステに行くよりも2万円で洋服を買った方が良いと考えてもらう必要があります。徐々に異業種との戦いに移っていきます。
10年間通ってもらうには、同業のアパレルショプだけを意識していては、お客様のカテゴリーの優先順位が変わった時に(洋服からエステに興味が移った等)、お店に来なくなってしまいます。異業種も丁寧に見つめて、優位性を維持し続けることで、10年間通ってくれます。
- まとめ
同業はもちろん、異業種のお店(ネットショップ含む)よりも、皆さんのお店でお金を使う方が楽しい、幸せな気分になれる、そう感じてもらうことが大切です。例えお客様が節約しようと思っても、大好きなお店での消費は、減らないものです。10年間、ずっと通い続けてもらえるものです。
同業界ばかり競合として見ていませんか?
10年顧客が増える企業の経営者は、異業種も競合として丁寧に見つめています。
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