売れたものの悩み
コロナ禍であってもそうでなくても、世の中が経済で成り立っており、経済が止むことなく動いている以上、そこには必ず「売れるもの」と「そうでないもの」があります。経済に従事する者の悩みは、そうでないものをどうしたら売れるのか?が大半だと思いますが、売れたら売れたでそこには新たな悩みが生じます。
もっと売るにはどうすればよいか、この先長く売れるには何が必要か、どうすれば競合より良いものを手に入れられるか・・。悩みは尽きないように思えるのですが、よく考えるとこれらすべてに共通した要因があることが見えてきます。それは「人」というファクターです。
悩みの種を業務に置き換えるとその理屈がよくわかります。もっと売る:営業、長く売る:開発、良いものを手に入れる:購買など、いわゆるライン業務が悩みの発生源として特定できることも多いのですが、多くの場合、手っ取り早い解決策は「何より人手」だったりします。人手にはコストがかかるので、それをどうにかしてシステムや外部との連携などの工夫で凌ごうとするのですが、良いシステムの導入も、外部との上手い連携も、結局は担当者次第で成果が出たり出なかったりするので、結局ここでも「人」が大きなファクターだということになります。
人についての悩みは果てしないです。思うように動かない、居ても使い物にならない、そもそも人がいない・・。そのような状況にあって、とにかく売れることは売れるので、悩みはさておき、日々の仕事をこなすことにばかり時間と労力をつぎ込むことになります。
そうなると、悩みは永遠に解決できなくなります。売れる→時間がない→とにかく仕事を捌く→さらに売れる→さらに時間がなくなる、という負の連鎖をどこかで断ち切らないことには、この悪循環から抜け出せない状態が続きます。
ところが本来、人は自律的に動くように生まれついているので、その性質を活用して思うとおりに動いてもらう仕組みを作ることは、実はそれほど難しいことではありません。仕組みが上手く回り出すと、想定以上の成果を出すことすら珍しくはないのです。
人は、その働きが①社会の求めに応えていること、②目に見える形で報われることの2つが叶えられると分かれば、その範囲で自律的な動きをするようになります。方法論についても①与えられたものを習う、②自ら工夫を施す、③最適化された方法論を編み出す、くらいのことは普通にやってのけるものなのです。
このうち「社会の求めに応えていること」は、そうなのかどうか自分で証明することが意外と難しいという特徴があります。自分の仕事に自信を持つこと、とも言えますが、周囲の承認や報酬など、目に見える成果が伴わないと、自分だけで手ごたえを感じるのはなかなか難しいのです。たとえば昨今よく言われる「持続可能性」に対する貢献は、本来資源循環産業が最も得意とするはずの部分なのですが、顧客がそういう視点で積極的に評価してくれる、という場面はまだ必ずしも多くありません。変化は少しずつ起きているのですが、全体としてまだゆっくりとしたスピードです。
実はこの部分こそ経営者の出番なのです。事業の社会的意義やその背景について、しっかりと読み解いたうえで社員へ自分の言葉で伝える。このプロセスを踏むだけで、明らかに社員の目の色が変わるのです。さらなる高みを目指したい経営者にはぜひ心掛けていただきたいポイントです。
他方で、「目に見える形で報われること」については売上高や収益との連動がポイントになります。この二つのファクターをうまくバランスさせることで、人は自ら動き出すようになるのです。それまで悩みの種だった人の問題を強みに変えるアプローチを、今年はぜひ取り入れてみてはいかがでしょう。
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