急増する外国人観光客が教えてくれる“大きな意味”
「最近、お忙しいですか?」 久しぶりにお会いした老舗旅館の社長様にお声をかけると、「はい。おかげさまでここ数年は外国からの観光客も増えて、忙しくしています・・・でもね~」と何だかスッキリしない様子でしたので、気になってその理由を聞いてみました。
「インターネットからも申込が出来るおかげで、地域を問わず24時間予約を受け付けることができるのですが、うちの旅館を気に入ってくれたお客様ばかりが来るワケではなく、他の予約が取れなかったから・・・という理由で来られるお客様も多いので、なかなかリピートにつながらなくてね、このブームがいつ終わってしまうのだろうと心配で先行きが不安なんですよ。」ということでした。
近年、日本を訪れる外国人観光客が急増しており、その主な理由に「ビザの条件緩和」や「最近の円安」などがあげられますが果たしてそれだけなのでしょうか?どんなにビザが緩和されても、どんなに円安になっても、そもそも日本という国に魅力が無ければ来てくれません。はるばる遠い海外から何時間もかけてやって来ようと思わせる何かがこの国にはあるはずなのです。
ちなみに、先ほどの旅館では何を魅力とされているのか?と聞いてみると、「この地域の観光名所から一番近いことがウチの売りです」という回答でした。サービス業において確かに立地は大切なポイントですが、何かあまりにも他人任せな印象で、それは先行きも不安にならざるを得ないだろうなと感じました。
以前、飲食店のお客様に同行してテナント物件を見て歩いたことがありますが、不動産屋の社員さんは、大通りに面している、駐車場が広い、駅から近い・・・などの立地条件が良く、しかしテナント料が高い物件を優先的に紹介し、借主の側はその提案された物件の中からチョイスするという受身な方向に流されていました。その様子を見ていて気付いたことは、互いが「立地が良ければあたかも事業がうまくいく」・・・かのような大きな勘違いのまま物事を進めていくということです。
すべてのビジネスにおいてこのような勘違いは存在していますが、特にサービス業においてはその傾向が顕著です。皆さまの周りにもありませんか?駅前の好立地に出来たレストランがすぐに撤退してしまった、新しくできた駅ビルの一等地にオープンしたラーメン屋さんがいつの間にか閉店していた・・・など。
ジュースやおにぎりなどどこで買っても同じものなら立地に大きく左右されますが、“特別なこだわり”が大切にされるこの時代、大事なデートのカフェや、家族旅行の旅館を立地だけで選ぶことはまず考えられません。有名なコーヒーショップが人気なのも、立地が良い以前に、きちんとブランドが確立されていることを忘れてはなりません。
「場所」はひとつの枝葉でしかなく、大切なのはその幹が何であるか?自分達が提供できる最高のおもてなしは何なのか?これが腹に落ちないうちは、値段や条件など何で比べるかを相手任せにしてしまう受身な経営になってしまうのです。
建物の立地条件の前に、皆さんの“経営の幹”は、太くしっかりとそこに立っていますか?
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