『森のこびと』に出会えた土地選び
かごしま薪事情
例年、鹿児島ではお正月を迎えてから寒くなってグッと冬らしくなることが多いです。
色づいたモミジの葉も元旦のころようやく散り終えるので、クリスマスの頃はいまいち雰囲気が出ないのです。季節感というものは住む地域で違うものですね。
鹿児島の冬は晴天の日が多く、雲ひとつない日和もぜんぜん珍しくありません。 そういう環境なので、空気式のソーラー集熱はフル稼働して夜間も床が暖かい状態で生活できます。これは、毎日ありがたいものです。
お天気がすぐれずに太陽が出なかった日は薪ストーブで暖を取っています。ここ数年は少なくなってきたように思いますが、鹿児島は台風が強い勢力のまま上陸する地域です。
まともにきた時には大きな木が折れて倒れたりします。近ければチェンソーを持って即出動。玉切りにして回収、冬場の薪になります。倒れた家の人も救援に向かった家の人もウィンウィンです。
↑台風通過の後は近所の大きな木が倒れたりして大忙しです
↑大きな木1本でこんなにたくさんの薪になります
こういう時には一度に大量の薪を仕入れられることになります。このチャンスを十分に活かせるかどうかは、薪棚のキャパシティに大きく左右されるのです。
ということもあって、自宅の薪棚はどんどん増殖していきました。だんだん玄関に近い場所が増設されていき現在では3箇所になっています。玄関に近い場所に薪があると寒い日にさっと取りに行くのには都合よくなりました。(灯油の給油と同じ理屈です)
↑玄関ポーチの目隠しの裏は、その年の量に応じて薪棚の範囲を変えて使っています
↑夏場にたくさん仕入れることが出来た年はここも一杯になります
森のこびと
来客の際は必ずと言っていいほど「薪はどのように(調達)されているのですか?」と尋ねられます。いつも薪棚はいっぱいになっていますので、不思議に思われるのは当然です。毎年台風が来て倒木が手に入るわけでもないですし。
その問いには「お迎えのおじさんが分けて下さるのです」「しかも、使った分だけそっと積んでおいてくれるのです」とお答えしています。なんとありがたい。なんといい立地。妻はおじさんのことを「森のこびと」のようだと言っています。
実はお向かいさん、お風呂が薪風呂なのです。長年薪風呂を焚いていると、知り合いから剪定した木など太いのがどんどん集まって来るのだそうです。おじさん曰く「ジャンジャン燃やしていいよ。なんぼでもあるから」とのこと。なんだか薪の神様のようです。
薪棚の上のほうの薪を家の中に運び入れて燃やします。すると、おじさんがどんどん積んでくれるので薪棚の下のほうの薪はずっと棚にいて出番が巡ってきません。
↑寒い日に暖をとり、少し薪棚に隙間ができてくると・・・
↑次の日の朝になると、薪棚が満タンになっています。
土地の見たてで見えるもの
自宅界隈は田舎っぽいように見えると思いますが鹿児島市内です。長年この地で暮らしてこられた家と私たちのように新しく土地を購入して引っ越してきた家が半々ぐらいです。設備や生活習慣も新旧様々まだら模様です。畑もまだまだ残っていますので、野焼きもまだまだ普通に日常なのです。
この場所を選ぶ際に、土地の下見に何回か足を運びました。
当時、営業マンだった私はまだ覚えたばかりの土地の見たて術を駆使してこの場所を観察しました。「なぜ、この土地がいいのか?」必ず社長から尋ねられます。社長にプランを描いてもらうには、まずこの問いにちゃんと答えられないといけませんので、自宅ともなればいつも以上に必死です。
正直なところ自分の家ともなると舞い上がってしまい、いいところばかりが目に入ってしまうのでした。いちおうプロの自分でもそうなのだから「お客様はもっと盲目的なのだろうな」とその時に思いました。お向かいのお宅が薪風呂であることは気がついていましたが、薪ストーブをつけることなど頭にありませんでしたから「時間帯によっては煙いかも。でもそのうちにこの煙は出なくなっていくのだろう」ぐらいに思っていました。
↑夕方になると、カツカツッと焚き付けを割る音が聴こえてくるのです(神様の音です
↑近所には野焼きスポットがいくつもあります
かなり最近になってから、もう1軒のお向かいさんも薪風呂であるととに気がつきました。このお宅の焚き口は裏手にありましたので、煙が出てるけど「野焼きしてるのかな」ぐらいに思っていたのでした。まさか、近所に2軒も薪風呂があるなど考えてもいなかったので、勝手にそう思い込んでいたのです。
↑野焼きのように見えるもう1軒のお向かいさんの煙
結果的には自宅が煙の発生源となることには問題なさそうということもあって、工事途中に薪ストーブを入れることになりました。薪風呂の家の近くの土地は、一般的に後から引っ越してくる住まい手にとってはネガティブ要因かもしれません。しかし、薪ストーブユーザーにとっては逆になり完全にポジティブ要因です。(薪風呂がその後どのくらい使われるのか未知数ですが)
土地の下見で自宅周辺にはよく通っていましたので、近所の人たちとも早くから顔見知りになっていました。目には見えない、でも住まう人にとっては大切な情報の多くは近所の人たちの話から得られたものでした。それまでもお客様の土地選びの際もその場所に通って近所の情報収集をするようにしていました。何をどう見ていいのかわからないうちは、確かに見てはいるのですが何度も行かないと気づかないことが多く、いかにも要領の悪いことをしていました。
自宅の土地下見を通じて見えるものがグッと増えました。そこに年中生活して、ずっと死ぬまで過ごす前提と想像力さえあれば見えてくるのです。「その土地で決めるぞ。建物新築の契約を今月もらうんだ」という営業マンとしてのゴールだと見えなかったものがふっと見えるのです。
それからというものは不思議に、土地探しの相談を色々な方からどんどん頂けるようになったのです。
足繁く通って見たてた土地に建てられた家の未来には「やっぱりな」という事も「そうくるか」という事も訪れますが、大筋では想定範囲で対応可能な事ばかりで好ましい変化も多く経験できます。
住まいづくりをお手伝いさせていただいたお客様宅では、それぞれ違うシナリオで時の経過を楽しんでおられます。それゆえに、古くなってもなおその家から次の仕事が生み出されるのです
あなたの会社は、建設予定地の周囲の様子やその未来に意識を置いて土地の下見をしていますか?また、そういった知見を基にした土地の選択指南をお客様にされていますか?
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