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スーパー社員の存在がIT化のハードルだ

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

新型コロナ感染が拡大した今年(2020年)。春先の緊急事態宣言の前後より、多くの社長さんから飛び込みの相談が相次ぎました。そのほとんどが「テレワークを導入したいがどうすれば良いか?」とか「できるところを自動化しないと…」といったものでした。

多いときで週に10回以上もスポット相談に応じましたが、これはかつて経験したことのない件数です。一つ一つの相談に丁寧に対応しましたが、一番問題だったのは「そもそも業務の標準化が全く進んでいない為、IT化のハードルが非常に高い」という会社が多かったことです。特に、社内のキーマンが「スーパー社員化」していて、その人の能力や業務量への依存度が高い状態の会社が多いことです。

これは会社の規模には関係なく日本の企業に典型的に見られ、従業員の質が元々高い日本ならではの現象です。例外的な業務が発生しても、そのヒトにお願いすればいつのまにかなんとかしてくれる。複雑な調整が必要なことでもなんとかしてくれる。なににつけても「ヒト」に頼めば進むため、一見便利で能率が良い様に見えますが、反面その「ヒト」のキャパシティや人間関係に依存しているため、それ以上の合理化を望むことができない、という会社全体へ制限をかけてしまうことになります。

緊急事態宣言下、当社にご相談を頂いた社長のほとんどが、この「スーパー社員に頼る業務」を抱えており、社長からそのスーパー社員に対してテレワークや自動化を打診しても、即座に否定的な回答が返ってきてしまうことに頭を悩ませていました。組織統率の面からみても、社長や経営層のリーダーシップが制限を受けてしまうことになるので、これは好ましからざる状態と言えましょう。逆に言えば、今までそれに甘えてきたツケが回ってきた、と言ったら厳しすぎますかね?

もちろん、ほとんどの社長がその状態を良しとしていたわけではなく、常々課題と考えていたところに新型コロナ禍となり、急ぎ対策を取る必要に迫られただけです。ただ、残念ながらこの「スーパー社員への依存体質」はそう簡単には解決できません。スーパー社員のやっている業務を一つずつ分解し、可視化し、標準化し、他の人でもできるようにした上でITのチカラも借りる、という実に地道な努力が必要となりますし、そのプロセスにスーパー社員を巻き込むことが必須です。多くの場合スーパー社員は多忙を極めているので、この標準化作業への関与を否定的に捉えることが多く、それが社長の精神的ストレスになっていることもあります。

では、どうすれば良いのか?残念ながら短期的に対策することは難しいのですが、数ヶ月程度の期間があれば多くの場合解決に向けて動き出すことは可能です。そのために、社長が抱える課題やストレス、スーパー社員やその周辺の社員の抱える課題や負担、これらをきちんとフランクに俎上に載せる場を設定することが第一ステップです。このステップをきちんと登ることができれば、スーパー社員も社長含む周囲の社員がいかに困っているのか、きちんと理解できることでしょう。そして、標準化への流れ作りにとりかかる…。IT化はこの流れの中でツールとして登場することができます。

「直ちにIT化を進めたい」という社長の願望は理解できますが、物事には順番があります。まずスーパー社員は誰か?その社員がやっていることは標準化できるか?標準化できるようであればそこにITを使ってもっと合理化できないか…。この順番で検討することが王道であり、この道から外れたIT化は部分最適に終わったり、投資対効果のバランスがとれないものになるのです。

重たい内容ではあるものの、日本の企業特有の業務環境を有る程度打破しないとIT化はなかなか進まないことをご理解頂ければと思います。

 

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