経営者が、危機的状況下においても維持すべき姿勢や考え方とは― 普段、どれだけ未来志向で仕事に向き合っているのか―
今回の新型コロナウイルス禍の状況下において、多くの企業が回復不可能といえるほどの打撃を受けました。業績悪化によるマイナスを取り戻すのは容易なことではないでしょう。
そんな中、私がコンサルティングと並行して経営する会計事務所では、普段よりむしろやることは増え、ルーチンワーク以外の様々な新しいことにチャレンジしました。
それは大きく分けて2つのことに集約されます。
一つは、一律給付金や助成金、特別融資など普段は実施されることのない公的金銭の給付や特別枠の融資について、お客さんの申し込みや手続きをお手伝いすることでした。
もう一つは、テレワーク、リモートワークといった、これまでやったことのない仕事のやり方を実践することだったのです。
3月から4月にかけては、緊急事態宣言に次いで、感染の拡大とその脅威が連日報道されていました。状況が状況だったので、多少強引かとは思いましたが、所内における人員のシフトや仕事のやり方を、そういった世の中の動きに合わせて変更しました。
ただこれについては、いきなり実施できたわけではありません。今回の事態には関係なく、ずっと以前からテレワーク的な仕事の処理方法は可能ではないだろうか?という発想は持っていました。おそらく、やろうと思えば、事務所側としてはもっと早くからできたのではないか、と思います。ただ、このサービスを受ける側、つまり顧客側の意識や全体的なビジネス環境が、まだそういう状態ではありませんでした。
すでに売り切れ状態にあったPC用のカメラやマイクといった機材の調達など、実際にそういった業務を始めるにはいろいろとハードルはありました。これらのツールをなんとかそろえることができて、いざやってみると比較的うまくいったと思います。セッティングや操作など、みんなが慣れるのにもそんなに時間はかかりませんでした。
日本のみならず、世界の経済にとっても極めて大きな打撃を受けた今回の災厄でした。
しかしこれは、ビジネスにおいて、新しいノウハウを身につけるチャンスでもあったと思います。
また、そんな風に捉えなければ、今回の事態を活かすことにもなりません。
まだ、今回の新型コロナウイルス禍の脅威が完全に去ったわけではありませんが、この数カ月を通じて教訓として得たことがあります。
それは、こういった危機状況に際しても、極端に業績を落とすことなく対処するには、普段からどうあるべきか、ということです。
さて、今回の混乱の中で、私が気づいた「普段からどうあるべきか」ということとはどんなことでしょうか。教訓として得たこととはどんなことでしょうか。
それは、常に未来志向で仕事に向き合っていれば、世の中が、今回のような経済が大きく傾くような状況になっても、やるべきことはいくらでもある、ということです。
普段、目の前のルーチンワークのみに100%のエネルギーをつぎこんで、いっぱいいっぱいの状態でしか動けていなければ、今回のように世の中に不測の事態が起きたときには、その負の振れ幅に比例して事業業績は落ち込むことになります。
しかし、なにかしらの余力を持って未来志向で仕事に当たっていれば、今回のように世間が大きくマイナスの事態に陥ることになったとしても、我が社はその影響をもろにかぶって大きく落ち込むところまで行かないで済むのです。
おわかりでしょうか。
つまり、現時点では目指していた領域に到達できていなかったとしても、未来志向で取り組んでいた分、そこには余力があります。
したがって、多少は世間の影響を受けて業績が下がったとしても、まだプラスの状態で乗り切ることができるわけです。
私の事業も、常に未来志向で動いていたので、もともとやるべきことはいくらでもありました。
そのため、今回のように周りの経済活動が著しく減速する中にあっても、我が社は動き続けられたのです。
というような事情があって、私の事務所は結局、この新型コロナウイルス禍の渦中にあっても、業績はマイナスにはなりませんでした。というより、全体的には仕事を減らすことがなかったので、数字の上では若干のプラスを計上することができたのです。
今回のような、世間の経済環境が停滞或いはマイナスになるような、特殊な社会状況のときは、却って普段できなかったような課題にチャレンジすることができます。
それは、すぐに業績アップにつながらなくても、やがてプラスを呼ぶ要因にもなるのです。
新型コロナウイルス禍をきっかけに、日本の経済システムやビジネスのあり方が大きく変わると思います。その変化にうまく乗れるか否かは、普段、どれだけ未来志向で仕事に向き合っていたかが大きく影響するのではないでしょうか。
世界は今後もどんな大きな変化に見舞われるかわかりません。
どんな事態になっても常に未来志向で業務にあたっていれば、タフに乗り切ることができるのではないでしょうか。
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