生涯を通して愛着のある商品に生まれ変わるための基本戦略
アメリカ大統領選、専門家の予想を超え、新たな流れとなっています。米国史上初の女性副大統領が誕生しました。マス媒体やネットニュースで、何度もなんども取り上げられることで、世間の空気が変わり、やがて社会の空気感が変化するでしょう。演説においても「癒し」という言葉がくりかえされています。こうした「くりかえし」が人間の無意識に刺さり、次のトレンドを引き出す予兆となります。
この一週間だけで、社会は刻々と変化しています。いよいよ米ファイザー製薬によるコロナウィルスのワクチンが話題になっています。実現すれば、自社事業の未来も変化するでしょう。その時その時、自社の考え方、やり方を時代に合わせる必要があります。
一方、日本は高齢化の進んでいる社会です。新しいことへの挑戦力が弱くなり、保守に走りやすいでしょう。ですから、商品やサービスが売れない真因は、商品が悪いのではなく、わたしたち人間に問題がある、と見る眼力が必要です。お客様も高齢化しています。お客様もまた「変化」や「新しいこと」が苦手です。
このような流れのなか、いま「アナログ」が再び注目されています。アナログ(analog)とは、デジタルの反対語。広辞苑では「ある量またはデータを、連続的に変化しうる物理量(電圧・電流)で表現すること」と説明しています。暮らしにおいては「実在しているもの」です。コロナ禍で押印や印刷、貨幣のデジタル化が国レベルで加速していますが、アナログはまるで真逆のトレンドです。書籍、レコード、カセットテープ、手紙、万年筆、インク、手芸、猫等々・・・。
今、商品リニューアルに取り組んでいるA社は、まさに実体のあるアナログ的な商品を製造している会社です。新しい事業に舵をきる経営者仲間に触発されながら、「衰退産業、どうしていこう・・・」と解の出ない日々が続いていました。しかし、着眼次第では今ある商品サービスで勝負できる! そう気づかれて、一歩踏み出されました。
今まで企業間取引だったモデルから、直接お客様と取引したい。「自社のファンをつくりたい」と切望されました。企業間取引からの飛躍です。そして、社長が言うところの「お客様」とはいったいだれなのか? まずはここから考えはじめました。
日頃、わたしたちは「お客様」という言葉をあまりにも無意識に使っています。お客様のことを、「顧客」と言ってみたり、「消費者」とか「カスタマー」と表現することもあります。「ユーザー」とも言います。もちろん、どの表現もまちがいではありません。だからこそ、だからこそ、社長がどういう哲学をお持ちになって「お客様」のことを考えているか、どう思っているのか。もちろんお客様は「神様」ではありません。
お客様は、血の通った人間です。人間ゆえに、心があります。好き嫌いがあります。五感や第六感があります。喜怒哀楽があって、その上に、言葉では表現できない感情があります。不合理、不完全、利己的です。お客様ひとりひとりが生身の人間であり、この地球に暮らす、「生活者」です。手で触れたり、匂いを嗅いだりすることで、感じ、想像することができます。一方、触ることのできないデジタル世界を寂しく感じたりもします。
コロナ禍が進み、2020年のオリンピックがなくなって、気がつけば日本は人口激減時代です。そこに誰もが気づき始めた今、声高に叫ばれているのが「お客様を囲い込みましょう。そして一人のお客様から一生涯に何度も買ってもらいましょう」というマーケティングです。生活者としてこのメッセージを目にした時、どうでしょうか?
担当者だったらまだしも、会社のトップがそう考えているとしたら、その会社の商品サービスは、自社の売上アップのためにある、ということになります。必ずや、お客様に見透かされます。嫌われることはあっても、好かれることはありません。
人間は実体があり、アナログな存在です。デジタル時代だからこそ、生活者はつながりを大事にし、アナログな触れ合いを求めています。アナログだからこそ、実体のあるモノと心理的なつながりが欲しくなります。そうしたつながりを無意識に「期待」しています。そして、それが叶わない現実に葛藤し、不満を持ちます。その不満を解消したい、「満足」させたいと強く望んでいます。
商品リニューアルの起点は、「お客様」についてしっかりと考えることです。自社のお客様とはだれのことでしょうか? 年齢やライフスタイルは? どんな暮らし方をしているのか? 何を愛し、何を大切にして生きているのか? その人たちは暮らしに何を期待しているのか? 何にがっかりしているのか? どんな不満をもっているのか?
「生涯顧客化」といった言葉に飛びつくことよりも、人間同士のアナログなコミュニケーションを自社にしっかりと構築していくことの方が重要です。社内でもお客様とでも、会ったらあいさつをする。お客様に対して間違ったアクションをしてしまったら謝る。敬意を忘れずに、自分を大切にするようにお客様を大切にする。オンラインでもオフラインでも、そんな関係を築いていくことが、自社のファンに出会い育てていくことへの第一歩です。
商品やサービスをつくるのは人間です。どんな時代であろうと、自社の向こう側にいる生活者、すなわち人間を見ていくことが、わたくしども商品リニューアルの真髄となります。伝わらない時代、ものが売れない時代に、お客様に買っていただく。お客様に喜んでいただき、笑顔になっていただくための秘密なのです。商品を見てばかりいては、本質が曇ります。社長の眼力は、人間に向かっていますか?
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