「上意下達型」システム導入の危うさ

このコロナ騒ぎの中で注目を浴びているのが、保健所関係のシステム化が遅々として進まないという報道です。実際にそのシステムを見たことがあるわけではないので、ここではそれを直接論評することは避けますが、「この話はどこでも聞く話だな」というのが私の正直な印象です。これは行政でおきているだけの話ではなく、民間企業でもいくらでも発生しているのです。
今回、保健所が感染状況の報告にFAXを使っているとの報道があり、各メディアからネガティブなコメントを受けています。なんでも「入力項目が多過ぎで、現場の負担が高い。FAXと電話の方がラク。」という話の様です。実証実験段階から本稼働した後で利用率が低迷しているということはどういうことなのでしょうか?入力項目が多いのは当初から解っていたはずです。想像するに、システムの仕様を策定する担当者は、「この情報も、あの情報も必須だから登録できるようにせよ」と指示されたのだと思います。
次元の違う話で恐縮ですが、ECサイトなどでも「入力項目が多すぎると途中で離脱してしまう率が高くなる」ことがありますし、企業の基幹システムでも「必須入力の情報が多すぎると、運用する担当者の負荷が高くなり、次第にシステムを使うことが目的となる残業が発生する」といったことが良く発生します。少しきつい言い方をさせていただくなら「あるべき論が先行しすぎ、上位下達で理想を追いすぎた」のだと思います。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?それは、「システムの機能を企画する人が上位の方針しか見ていない」ということに尽きます。上位方針を達成することだけが求められるので、現場の負担の理解度は高くないのが普通です。当然ですね。現場経験がある人がシステム企画に関与していないからです。
もっと端的に言えば、普通の企業がIT化する際に、「社長が言っているからこれを入れる」式のIT化をすると、大抵の場合は現場の負担は増えるか、少なくとも変わらないといった皮肉な現象が発生しがちです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
システム化企画は社長と現場の共同作業
であるべきなのです。これができない場合、現場が運用ができなかったり、経営的な効果が得られなかったりといった失敗に直結します。
実に多くの企業が全く同じ状態に陥っています。日本のIT化が進まない一つの理由でしょう。IT化は是非「社長と現場の共同作業」で向き合って頂きたいと思います。
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