ヒト・モノ・カネ・情報の新しい解釈で改革を進める
経営資源の3要素「ヒト・モノ・カネ」に「情報」を追加して表現する様になってから久しいですが、この「情報」について、その解釈が人によってばらついていることが気になります。なぜか?… 「情報」を「企業が持つ顧客情報や市場動向などの無形資産」という非常に狭い意味で捉えている方が実に多いからです。広義の意味での「情報」にきちんと取り組んだ企業がこれからのDX時代に成長をつかみ取るコツなのですが、非常にもったい無いことにそれに気がついていない会社が本当に多いのが現実です。
確かに数年前までは、「情報」とは「情報戦で優った方が勝ち」という意味で使われていました。その時代では、だれしも有利な「情報」を得るために努力しましたし、「情報」をいち早く入手するために「アンテナを高くする」という表現も使われていました。例えば「政府の政策動向や、社会経済の動向や消費動向をいち早くキャッチし…」といったことを「情報戦」と呼んでいたことがありますね。
そして、企業にシステム化動きが出始めた時、システムに対する要求もこの「情報戦」を意識したものに偏ってしまうことが発生し、「情報=顧客情報・購買情報」という歪んだ解釈が自然発生的に蔓延。それによって、初代の個人情報保護法など悪法と呼ばれても仕方無い法律が制定され、それを更に極解してしまった人が「個人情報=とても機微な情報で自分達が保有するのは良くない・危ない。個人情報収集はうさんくさい行為だ」という意見も出る始末。
しかし、現代の「情報」という言葉には違う意味があるのです。つまり情報とは、
- 競争を戦う為に必要不可欠な情報(旧来型の情報であり、頑張って収集するもの)
- 量が膨大すぎて集めることが難しかった情報(DX時代の情報であり、今まで捨てられてきたもの)
に大別でき、現代の「情報」とは後者を意味することが多くなってきているのです。わかりにくいので例で示してみましょう。
- 製造業の場合の情報:工作機械の稼働履歴、品質検査の個別結果、作業員別作業日報など
- 卸売業の場合の情報:発注~入荷までの個別リードタイム、個別の荷動き履歴、体積・質量
- 農業の場合の情報:天候・品種・収穫量の個別データ、卸先の品種別・カレンダー日付別・天候別販売実績
など、いわゆる「生データ・とにかく莫大なので今までは捨ててきた・死蔵してきた」ような情報なのです。これらの情報はこのままでは膨大すぎて使いようが無いケースが多いのですが、最新の分析基盤やAI技術をうまく使えば、膨大なデータの中から特定の傾向をつかむことが可能で、それが経営的な価値に繋がるのです。
これは何もそれほど難しいことではなく、中小企業がほとんどの当社のお客様の中にもうまくできた例がいくつもあります。例えば、
- 製品検査の全データと製造装置の設定値を紐付けて分析ソフトでグラフ化したところ、温度と設定値と不良発生率の間に相関関係があることを発見できた。そこで、温度を測定し、それに対応する設定値を基準化して不良率を大きく下げることができた。
- 農産物直売所で、休日の並びと品種の売れ行きの間に相関関係があることが解った。それを販売予測に反映させ、生産者に対する出荷要望を出すようにして売上を伸ばした。
といった例です。どれも、特別すごいAIを使った訳ではなく、数万円で買ってきたデータ分析ソフトウェアで多元的に分析した結果、気がついたことです。機械系であれば、故障予測をサービスメニューに追加する、といった事例も現実に存在します。
「情報戦を制する」とは二昔前ぐらいにさかんに言われていたことですが、現代流に言い換えれば「捨てていたありふれた情報を、価値ある経営施策のネタに応用する」となると思います。是非、「情報」の単語の意味を見直し、イマドキの考え方で情報を上手に成長の道具として使えるようにしましょう。
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