ある旅館の再生からわかったこと
先日のNHK番組で、ある旅館の再生が放送されました。
見られた方もいるかも知れませんが、とても役に立つ内容でしたので、共有しておこうと思います。
内容は、10年間赤字、負債10億の旅館を息子夫婦が継ぎ、その後黒字化、10億の借入も返済し、再生したという話です。
息子さん夫婦が後を継いだときは、こんな状況です。
- 将棋戦が行われるくらいの由緒ある旅館
- 週末は満室続き
- しかし、毎月赤字、10年間赤字
- 赤字なので、借入が10億あり、あと半年後には資金がショートする
- 20室しかないのに、働いている人が多い
- その理由は、一人一人の役割が細切れで、仕事分担しすぎ
- 自分の仕事(役割)以外はしないという状況
- 受付、仲居さん、お掃除さん、料理場、入り口出迎えなど、様々なところに人が配置されている
- 例えば、本館と別館があり、それぞれごとに仲居さん(接待さん)が配置されている
- この本館と別館の間には忙しいからと言って協力する雰囲気はない
- 情報が共有できていないことから、仕事が遅く、クレームもよく起きる
- その結果、生産性が低くなる(一人当たり仕事量が少ない)
- 当時、一泊二食9800円
- 建物は老朽化
そこで、若女将や新社長である息子夫婦はどういう取り組みをしたか。
その取り組みを共有する前に大事なことがあります。
この息子夫婦には、再生に向けての不退転の気持ちがあったということです。
それは、「この負債に自分の息子を絶対に巻き込ませたくない」という強い決意でした。
私たち経営者に一番足らないことかも知れません。
「改善に取り組まないといけない」
「これは必要だ」
といいながら、結局何もしない。
取り組んでも長続きしない。
「本気じゃない」ということです。
- コロナで増えた借入の返済
- 借入を抱えたままの事業承継
- 借りて返しての資金繰り など
いろいろ問題はあるはずなのに、それでもまだ本気で手を付けない。
これでは、いつまで経っても解決できるはずがないです。
旅館を継いだときの若女将の言葉に決意が溢れています。
「長男に絶対に負債を相続させない」
相続では、負債も相続されます。
この息子夫婦が知らないうちに、先代社長(父親)が亡くなったときに負債を相続していたのです。
息子夫婦が取り組んだことは、次のようなことでした。
①本館と別館のうち、別館の閉鎖
②役割の区分をなくす(細かい役割分担から大まかな役割分担に変える)
- 本館担当の接客さん、別館担当の接客さんの区分をなくす
- 組織の役割を壊す(全員で接客をし、全員で掃除をし、など気がついた人がドンドン仕事をする)
③情報を共有する
- 各自・各部署にタブレットやモニターを配置し、宿泊情報などを共有できるようにした。
- 調理場には、55インチ以上もあるモニターを2台設置し、宿泊情報や料理の提供状況、予約状況などが見れるようにした。
- 接待さんも含めて、働く従業員全員がインカムを付け、〝常に何が起きているのか〟〝どのお客様からどういう要望があったのか〟〝いつお客様がチェックインしたのか〟〝今、何の料理を提供したのか〟などの情報がリアルタイムで共有。
- 入り口のカメラで車のナンバーを読み取り、それが音声で関係者に伝わり、出迎えの準備をする(名前を読んでお出迎え)
- チャットワークやLINEのようなSNSを使って、社内SNSを実施。
- 文字で打つのではなく、言葉で話すだけで自動的に文字になって伝えるようにすることでSNSを使ったことがない人も使えるように。
- お客様の情報を見て、従業員自らが自分にできること、サービスを提供。
→これらの取り組みで、大幅に生産性が向上・・・大幅に支出減
④単価アップ
- そのためには、原価を下げて最高のクオリティの料理を作る工夫を料理場に依頼。
- 結果、仕入材料の見直し、調理法の工夫、仕入先の開拓、ロスの削減のための新たな料理。
⑤数値の共有
- 売上、利益、経費など全ての数値を共有。
- どうすればどの数値が変わったかを共有することでモチベーションがアップ。
- 給与に連動させることで更にやる気向上。
⑥リニューアル
- これ以上、お金が借りられないので、(借りたくないので)、原則は、儲かったり利益をリニューアルに投資。
- 貴賓室と呼ばれる最高の部屋はあまり使っていなかったが、ここに露天風呂を付けることで旅館のイメージアップに。
- 以降、少しずつリニューアルを行う。
→これらの取り組みで宿泊単価は当初の4倍以上に。
⑦退職者を減らす
- 離職率30%
- 365日休み無しが当たり前の業種
- 若女将自身も休み無しで働く・・・子どもと話をする時間もない。
- 火曜,水曜定休日に。
- 同業者やお客様からも批判の声はあったが、定休日を継続。
- その後、月曜も休みにする。
- そうして、日曜と木曜の稼動がアップ。
→結果、売上は8%減。
しかし、利益は20%アップ。
変動費である水道光熱費、人件費、食材費(ロス)が大幅減。
水道光熱費は、普通、固定費として考えますが、それは売上を毎日計上することが前提で、毎日計上しないとなると、水道光熱費は変動費となります。
この業種においては、元々、水道光熱費は変動費でした。
この変動費の減少が、売上の減少よりも大きかったために、利益は増加したのです。
なぜ、変動費の減少が売上の減少よりも大きくなったのでしょうか?
私が今までのセミナーやメルマガでお伝えしてきたことになりますので、覚えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、変動費は、売上に比例するのではなく、数量に比例するということを。
売上=単価×数量×頻度
この中の「数量」に変動費が比例するのです。
この若女将が採った定休日策(営業日削減策)は、式で言うところの「数量」、すなわち、旅館の売り上げの基となる営業日数を減らすことになり、それと比例する変動費だけが大幅に減少したのです。
もし、水光費や人件費、食材費が数量、営業日数と比例していなかったら、売上の減少分、利益も減少しています。
是非、あなたの会社の変動費が何かをもう一度よく把握し、利益を最大にするための施策を考えてみてください。
「売上を上げることばかりが利益を増やすことではありません」
→従業員数120人から40人に
→コロナの影響はあっても、それほどその影響は大きくなく、リピーターで売上は確保されている
⑧一時的収益 → 持続可能な収益の構造を作る
以上が、旅館の再生事例でした。
この事例から学ぶことが、とても多くあると思います。
是非、コーヒーでも飲みながら、じっくりと自分の会社に当てはめて考えてみてください。
では、今日も頑張りましょう!
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