社員が、顧客のために、クリエイティヴやホスピタリティを発揮するために必要なこととは?
販促会社S社長は、この一年数か月の間で、二つの大きな変化を感じていました。
一つは、「社員によって、顧客にサービスを提供できていること」、
そして、もう一つは、「社員が、顧客や業務改善のために、アイディアを出していること」です。
これは、創業してから15年間では、考えられない状態です。
S社長は言われました。
「いま、お客様に本当に良いサービスを提供できています。経営理念である、お客様満足と従業員満足を勝ち得ている実感があります。」
顧客に提供するサービスは、必ず2層構造になります。
すべての顧客に同等に提供する『標準一律サービス』があります。
そして、個々の顧客の要望や状況により変える『個別対応サービス』があります。この2層があって初めて、顧客を満足させることができます。
標準一律サービスは、メニュー表、システム、マニュアルなどにより、担保されます。それらにより、約束されたサービスや最低限の質が保たれた対応を、顧客に提供することができます。この「標準一律サービス」が三角形の下層であり、基盤となります。
そして、その「標準一律サービス」の上に、「個別対応サービス」が載ることになります。質の保たれたサービスに、オンする形で、柔軟な対応やクリエイティヴ、ホスピタリティを提供することができます。
大手企業は、この「標準一律サービス」を拡げることに全社をあげて取り組んでいます。物販に近いサービスを提供し、カタログや契約書を整備し、できる限りシステムで受注や発送業務を回します。そして、コールセンターなどの一部で「人間を前」に出します。そのスタッフには、マニュアルやQ&A集を提供します。
これらの取組みにより、「標準一律サービス」を拡げ、一方で「個別対応サービス」の領域を狭めているのです。
中小企業の中には、個別の顧客対応サービスを売りにしている会社は多くあります。それこそが、資源の少ない中小企業にとっては作りやすい特色であり、付加価値が取れる部分でもあります。
サービスで勝負するからこそ、「標準一律サービス」の整備が必要になります。広告制作、システム開発、設備設計、建設、不動産、多くの専門サービス。
これらの事業では「対面でサービスを提供(生産)する」、「個別対応の幅が広い」、「売る前に、そのモノがお客様には見えない」という特徴があります。このような特徴を持つサービス型事業だからこそ、「標準一律サービス」の整備がなお重要になるのです。
サービスをパック化する。
提案書を整備する。
マニュアルをつくり、訓練制度を準備する。
標準一律サービスという基盤があるからこそ、相手の要望に合わせた対応や、クリエイティヴな提案ができるのです。すなわち『個別対応サービス』です。
冒頭のS社は、販促物制作のサービスを提供していました。ホームページからSEO対策、ノベルティの企画、展示会のブース制作と設営と、メニューは多く、その全てが相手合わせです。
それを理由に、S社長は「標準一律サービス」の整備を後回しにしてきたのです。その結果、S社は、次のような状況に陥っていました。
・お客様は、「社長」に対し仕事を依頼している。
・「企画」「提案」「技術」を売りにしているために、手間が多い。また、新規顧客の開拓ができない。多くは、紹介(それも社長指名)。
・社員は基本『内勤』。デザイン案をつくる(正確には下案は社長)、簡単なホームページの更新、事務作業のみ。営業社員を入れても成果が出せず、辞めていく。
「標準一律サービスが整備されていない」とは、言い換えれば「個別対応サービスが広すぎる状態」と言えます。標準一律サービスという基盤の厚さが数ミリでふにゃふにゃの状態で、その上に個別対応サービスの大きな山がどかんと載っているイメージです。「顧客対応サービスが広すぎる」ために社員ではこなせなかったのです。
当然、売上げも増えることはありません。案件が増えれば、S社長自身が忙しくなります。その時には、営業はストップです。案件が薄くなると営業を再開します。ここ数年、年商は増えては減ってを繰り返していたのです。
S社長は、この状態を嘆いていました。
「お客様を満足させられていません。社員も活躍させられていません。それなのに立派な経営理念はあるのです。恥ずかしくて、悔しくて。」
矢田との最初の面談で、その想いを吐露されました。
一年と数か月、S社長はやるべきことに愚直に取り組みました。その結果、状況を大きく変えることができました。
- サービスをパック化し、物販に近づけることができると、顧客が買いやすくなります。同時に、社員も受注がとれるようになりました。
- 提案書や契約書を整備することで、顧客と会社は、サービスでつながるようになります。社員も、自信を持ってサービスを提供できています。
- お客様には、しっかりした組織と取引をしているという安心感を持ってもらえます。社員も、いい意味で坦々と案件をこなせています。
- 社員は、お客様のことに集中しており、アイディアもプラスアルファの提案も出来ています。
「標準一律サービスを整備すること」と、「個別対応サービスができること」は、表裏一体にあるのです。標準一律サービスが整備されると、顧客対応サービスに回せるだけの余力が生まれます。顧客のことを気に掛けることもできるのです。顧客の要望を満たすために、本気で考えることもできるのです。
S社長は言われました。
「お客様を満足させられています。それを、社員と共に実現できています。この状態を私の会社でつくれたことが、嬉しいです。」
あくまでも「標準一律サービス」の上の「個別対応サービス」になります。
型のあるサービスの上での、顧客との良好な関係。
フレームの中でのクリエイティヴ。
やるべきことを十分に理解したうえでのホスピタリティ。
次の状態では、顧客も社員も不幸せになります。
サービスに形が無いので、信頼関係をつくる余力が無い。
フレームが無い、すなわち「何でもやってよい」という中でのクリエイティヴで、社員は戸惑う。複雑化。
実は、社員は、やるべきことが十分に解っていない。結果、ホスピタリティを発揮できない。
そして、社長自身もいつまで経っても、現場に囚われ、経営に専念できないのです。
基盤を整備することで、社員の能力を引き出すことができます。基盤があるからこそ、彼らは全身全霊で顧客のことを考えられるのです。顧客へ提供する標準一律サービスが、社員にも活躍できるステージを提供することになります
感動のサービスやクリエイティヴな成果物とは、その企業が蓄積した仕組みの上に成り立つのです。
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