いま自社に足りないものはどっち?事業を飛躍的に伸ばすための方針か。それとも、事業を回す仕組みか?
このコロナ禍により方針を見失ったクライアントからの面談の申込が絶えません。
K社長も、その一人です。
「矢田先生、売上げが昨年よりも3割も下がっています。これまでの成長プランの見直しが必要でしょうか?」
その2時間後には、意気揚々と帰っていきました。
社長という人種は、方向性が見えたときには、溌剌とするものです。逆に、方向性が見ない時には、悶々とするのです。
それが正しいのです。会社が発展するのも衰退するのも、社長が出す方針次第だからです。
仕組みが回り始めると、社長の出す『方針』さえ当たっていれば、確実に成長発展を続けることができます。社内に課題があっても、それの全てに手が打てている状態です。各部門がそのためにPDCAを回しています。
そのため、社長は『方針』の決定のために、自分の多くの時間を使うことになります。
本を読みます。セミナーや展示会にも参加します。全国、全世界にも視察に行きます。経営の先輩やコンサルタントにも意見を求めます。
それにより、考え方やアイディアを得ます。決定した方針に確信が持てるまで昇華させることができます。組織に命じる時には、腹は決まっています。管理者や社員も、社長の揺らぎの無さに、協力を承諾することになります。
そして、その方針の実現のために組織が動いている間に、次の展開のための方針を考えることに向かいます。
社長の出す方針こそが、会社のこの先を決定付けます。
社長の役割とは、「会社を成長発展させるための方針を示すこと」となります。それに対し、管理者の役目は、「その方針を実現すること」です。実現のために仕組みを作ります。そして、部下に具体的な指示を出し、管理し目標を達成します。その管理者の下には、多くの社員がいます。彼らの役目は、「実行」となります。
いくら管理者や社員が優秀でも、その社長の出した方向性が間違っていれば、全く成果は得られないことになります。
例えて言えば、次のようなものになります。
「ジャングルを切り開き、道をつくるチームがいます。彼らは、一生懸命に知恵と体を使い、どんどん進めていってくれます。しかし、その方向には、何もないのです。金脈もオアシスも大きな都市も、その先に無いのです。」
無方針:方針を出さない場合も、会社は悪くなります。無方針とは、「現状維持」と同じ意味になります。市場に対し何も思い切った策を打つことはありません。確実に顧客に飽きられ、競合に負けることになります。
無方針は、内部にも悪い影響を与えます。各部門がお互いに協力しないようになります。管理者や社員からは、アイディアが出なくなります。時間の経過とともに、組織に閉塞感が現れます。覇気がなく、どこか殺伐とした雰囲気となります。
例えです。
「ジャングルを切り開くチームのメンバーは、自分達がどこに向かっているのか解りません。その疑問からイライラが起き、メンバー間の関係を悪くします。一部のメンバーの離脱が起きます。坦々と続く毎日に元気もなくなってきます。リーダーへの不信感も芽生えてきます。」
方針を出しているようで出していない会社も、多くあります。その会社の経営計画書には、次のような文章が散見されます。
「当社の革新的なサービスで、お客様の課題を解決する」
「価格競争はしない。付加価値の高いビジネスを展開する」
「すべての業務を仕組みで回せるようにする」
これらには、具体性がありません。「革新的」も、「付加価値の高い」も、イメージがわかないのです。これらは、一般論であり、方策になっていません。全く方針になっていないために、管理者や社員は動くことができません。
この状態で「社長自身が方針を出している」と思っていると、更にたちの悪い事になります。それ以上、社長は深く考えようとはしないのです。そして、社員を責めることをします。益々、社員の「社長への信頼」を削ることになります。
K社は、コンサルティング開始から、3年が経過しています。その当時は、年商6億5千万円でした。
前期は年商9億、今期は年商10億を超える予定でした。それを見越しての大きな設備投資もしています。
そこにコロナ禍です。売上3割ダウンの厳しい状況が数か月続いています。K社長には、描いていた成長プランが全く見えなくなりました。
K社長は、悲壮な表情で、言いました。
「矢田先生、大幅なコストカットをするべきでしょうか。」
私は、思うところがありました。
K社の事業構成は、理解しています。そこからすると、売上げの落ち込みはもっと大きいはずです。矢田は、確認をさせて頂きます。
「顧客やサービスの中で、この状況になって売上げを伸ばしているものはありませんか。」
K社長は少し考え、「はい」と答えました。
「顧客A社とB社の売上げが伸びています。この2社は、店舗小売をしており、巣ごもり需要で、業績を伸ばしています。」
分析から、「同業他社を開拓する余地が大きい」、「粗利率も高く、年間を通じて取引量は安定している」ということが解りました。
この面談から、K社長は、下記のような方針を立てました。
- コロナ禍の影響で売上げが落ちている事業も、長期的には回復するだろう。しかし、回復には時間がかかることが予測される。現状維持の営業とする。
- 店舗小売の顧客を重点とする。見込客をリストアップし、早急にアプローチする。既存顧客には、他のアイテムを提案し、1店舗当たりの取引額をアップする。
この方針の変更であれば、大きな設備投資も組織替えも必要ありません。余剰気味の営業担当で、すぐに動くことができます。
「先生、ありがとうございます。さっそく、明日から動くことにします。」
K社長は、意気揚々と帰っていきました。明るく、行動力のあるK社長に戻っています。
世の社長は、次の4つの状態のどれかにあると言えます。
1.進むべき方向が明確であり、それに向かって仕組みが回っている。
これは、非常に幸せな状態と言えます。社長も従業員も充実した日々を送れています。
2.進むべき方向が明確であるが、それに向かって全然進んでいない。
仕組みや組織の整備が、出来ていません。そのためPDCAサイクルが回っていません。社長には、具体的にやりたいことはあるが、「作業(営業・企画)」や「火消」に追われている状況です。
3.進むべき方向が明確で無い。仕組みと組織は整備できている。
社長自身、どう会社を成長発展させていくのか、明確に描けていません。そのため、日々悶々としています。会社は、仕組みで回っています。組織は、社長の方針を待っているため、力が発揮できない状態です。
4.進むべき方向が明確で無い。かつ、仕組みが無い。
社長は、現場から離れられない状態です。その不安からか、良いと聞いたものを、どんどん取り入れます。その状況に社員は呆れています。採用した社員が、2、3年で辞めていきます。出口が見えない毎日に、社長の気力も奪われていきます。
3年前のK社長は、4の状態でした。忙しい毎日に、心も体もボロボロでした。
事業を再構築し、仕組みを整備することで、ここ1年は1の状態でした。方針も明確、仕組みも組織も機能しています。経営者として充実した日々を過ごしていました。
しかし、このコロナ禍で、3になりました。これからどうすればよいのか、方針が見えなくなったのです。
K社長は、面談の翌日には幹部と主要な社員と打ち合わせを行いました。そこで、これからの方針とスケジュールを示しました。
管理者と社員は、「待っていました」とばかりに行動に移ったのです。それは、水を得た魚のようです。
すぐにその成果を得ることができました。既存顧客で数点のアイテムの取り扱いが決まりました。また、2社との新規取引が決まりました。
動き出して2か月で、十分な成果です。K社長は言いました。
「彼らは、明確な方針さえあれば、どんなに困難な状況でも動いてくれます。優秀な彼らを活かすも殺すも私次第なのですね。」
自社がどの状態かを見極める必要があります。
方針が有るのか無いのか。
仕組みが有るのか無いのか。
無いものが明確であれば、それを獲得すべき動くことです。
「会社を成長発展させる、次のステージに向けた具体的な方針が有るのか?」
「業務を仕組みで回すことができている。かつ、その仕組みを直す組織が有るのか?」
どちらも必要です。
後者の仕組みは、一度その作り方を覚えれば、その後は「当然のごとく」その状態をつくり出すことができます。社長は、それを早く手に入れるべきです。その後は、その多くを社員に任せ、「方針」に注力することができます。
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