他社の成功事例は昇華させてから消化する
勉強熱心な経営者はセミナーに参加したり、経営者の勉強会に行ったりして、いろいろなことを学んでおられます。その時、よくあるのが、他社が成功している事例に学ぶというものです。
「A社では毎日朝礼をやって、売上が2倍になった」、「B社はFacebook広告で一気に1,000人のリストを集めた」、「C社ではアルバイト社員を正社員にして、サービス力をアップした」など、聞いていると、「なるほどなるほど、ウチでもやろう!」というものが少なくありません。
けれども、大事なのは、成功した他社が表面的に何をやっているのかではなく、成功した他社事例の本質は何なのかということです。
A社では朝礼でどんなことをやっているのか→なぜ、それを始めたのか→なぜ、それが売上アップにつながるのか→なぜ、それが徹底できたのか→なぜ、D社はやっていないのか→なぜ、ウチではできないのか・・・というように、問題の本質を深掘りすることが必要です。問題の本質を深掘りしないで、表面的な事例をマネしても上滑りするだけで、成功には結びつきません。
ちなみに、前職の社長は、ある投資家から「お金を出す人は会社のトイレがきれいかどうかをチェックする」、「成功している会社はどこもトイレの清掃が行き届いている」と言うのを聞いて時々熱心にトイレ掃除をしていました。けれども、現実のやっかいな問題には蓋をしたままだったので、最終的には事実上の倒産にまで追い込まれてしまったのです。
物事を捉える時には、いったん具体的な事象から抽象的な本質に昇華させるというプロセスが絶対に欠かせません。他社の成功事例には必ず複数の要因が重なり合っています。そして、セミナーに参加したり、本を読んだりしても複数の要因のうちの一部分しか分からないことがあります。
地方でラーメン店を経営されているクライアントさんは多少割高になるけれども、カットされた野菜を使っておられます。これは、アルバイトでも簡単に調理できるという観点から決められました。一方で、一袋150グラムで納入されている麺を1袋100グラムに変えたいという現場からの提案にはNOという結論を出しました。
オペレーションを簡単にするために、多少割高なものを使うという点では、カット野菜も100グラムの麺も同じです。でも、一方はOKで、片方はNO。
社員は戸惑ったようですが、この経営者の決断の背景には価格が高い・低い、オペレーションが簡単・難しい、以外に別の判断基準があります。それは何かお分かりになるでしょうか。
一見すると、矛盾するように見えるラーメン店の発注スタイル。具体的な事象から抽象的な本質に昇華させる事例のケーススタディとして考えてみていただければと思います。
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