超緊縮時代を前にして社長が考えておくべきこと
「ここまで人がいないとなんか居心地が悪いですね…」── 毎月1回会食をしながら打ち合わせをしているT社長が、定例会場である料理屋にお客さんがまったく入ってない様子を見てそう言われました。
「飲食は本当に苦しいなあ」としみじみおっしゃるT社長に私はご助言しました。「他人事ではありません。今のうちに借りられるだけ金を借りておくことです」
「え? そこまでいきますか?」── T社長は腑に落ちない様子で聞き返されました…。
未曽有の大津波に世界中が飲み込まれようとしています。その影響を受けるのは飲食業や観光業にとどまりません。とにかく全員できるだけ高台に逃げる必要があります。
「安全余裕率」という数字があります。これは、現在の売上高がどれだけ損益分岐点を上回っているかを示す数字です。つまりいくら売上が下がったら赤字になるかということです。
この安全余裕率の飲食業界の平均数値はわずか10%程度です。つまり売上が1割下がってしまったら飲食業は赤字になってしまうということです。
これを聞かれると「飲食で黒字でいけるところなんてあるの?」と思われるのではないでしょうか?
これはホテルなどの宿泊業でも同レベルといわれています。ホテルが次々と倒産していった場合どうなるでしょうか? こたえは「銀行の破綻」です。ホテル業と銀行はズブズブの関係です。特に体力のない地銀などはひとたまりもないでしょう。
銀行がつぶれる状況の中で、「飲食や観光業は大変…」どころではないことは明らかです。大不況どころか大恐慌に備えるべき局面に来ているということです。
もちろん、融資を受けて現金残高を積み上げて「高台」に上ったとしても、それだけでは意味はありません。自然災害の津波は数日避難していれば済みますが、経済の大津波の場合は、逃げるだけではなくその後の世界を見越して事業を作り替える必要があります。
ここまでお話すればイメージが湧きやすいと思いますが、これは津波が来た後で「さあどうするか…」というような悠長な話ではない、ということです。
まったく人やモノが動かない、非常に緊縮した世界を想定したビジネスを考える必要があります。
これまでは企業が「バラ色の未来」を語って見込み客を引きつけていました。「うちの商品があると、こんなにいい世界が待っていますよ」という売り文句でセールスやマーケティングをしていた時代です。
しかし、きたる超緊縮時代にそんなふわっとした話は響きません。そんな「いい話」に臨場感を持てなくなります。多くの人や企業がそれどころではなくなります。
ではどうすればいいか? もちろん見込み客の不安を煽れ!という話ではありません。そうではなく、これまで以上に「顧客の困りごとを解決する」ということに意識を向けるのです。
なんだそんなことか…と思われたかもしれませんが、意外と顧客の「困りごと」に気づいていない企業がこれまでも非常に多いのです。そして、これは顧客自身も同様で、自分たちの「困りごと」に気づいていない、というケースが往々にしてあります。
ここにビジネスチャンスがあります。顧客自身もまだ気づいていない潜在的な困りごとに対処する商品やサービスを用意すれば、来る大恐慌の中でも非常に面白いビジネスを展開できる可能性があります。
逆説的に聞こえますが、自社の心配をしている場合ではありません。これから御社の大きな出番がやってきます。視野を広く持ち、視点を上げて、業界や顧客がどうなっていくのかを想像し、先回りして自らの事業コンセプトを磨いておく必要があります。
現に、当社に数年前からお越しになって、顧客の困りごとを解決する「特別ビジネス」を構築されたクライアント企業の中には、このコロナ禍におけるヒトモノカネが動かない状況においてもビジネスを伸ばしているところや、これから大きく事業の拡大を予測されているところが少なからずあります。
世の中が大きく変わる局面においては大きくビジネスを飛躍させるチャンスです。ただし、そのためには事前の備えが必要であることは言うまでもありません。
繰り返しになりますが、まずは預金残高を増やして高台に登ってください。そのうえで、「避難モード」ではなく「攻めモード」で新しい時代に備えた事業コンセプトをつくり込みましょう。
それってどんな事業なのかイメージが湧かない…という方はぜひ当社のセミナーにご参加ください。顧客の潜在的な困りごとにアプローチしている企業の実例を数多くお話ししています。
災害への対処は「一に備え、二に備え」です。助成金と特別融資で引き延ばされているタイムリミットはもうそれほど長くはありません。いまのうちに自ら変わるか、のちに強制的に変わらされるか、どちらかを選ぶタイミングがいま来ています。
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