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ビジネスには「良い筋」「悪い筋」がある

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

先日、不動産エージェントをしている次女が相談してきた。
 「お父さん、私、川崎駅前のマンションを買ってリノベーションをして売ろうと思う の。銀行に相談したら融資できるっていうんだけど、どう思う」
 「それはどういう経緯なの?」
 「持ち主の外国人から売りたいと相談がきたの」
 「それは売り先を探して欲しいということで、かなこに買って欲しいと言ってきたわけじゃないね」
 「そう。私が良い場所だからリノベして売りたいと思ったの」
 「誰か買ってくれる客でもいるの?」
 「いないよ。リノベしてから探そうと思ってる」
 「リノベ費用まで全額銀行から借りて売れたとしていくら儲かるの?」
 「これくらいかな」
 「じゃ、この案件は止めた方がいいね」


 
 ビジネスの案件には「良い筋」と「悪い筋」の二つがある。次女からの今回の話は次女にとっては「悪い筋」になる。次女のビジネスは不動産エージェントと名乗っているが、基本的に不動産仲介が主である。主に売買、賃貸の仲介をしている。不動産関連ビジネスにはそれこそ様々なものがある。

不動産物件を買い取りしリノベーションしたうえで売るというビジネスもそのひとつ。なかにはビル1棟買取全面リノベをし販売する専門会社が多くある。このビジネスには資金が多く必要となる。私の次女の会社は婿と二人だけの会社で、まだまだ収益が多くあるわけではない。

さらに娘婿はスポーツビジネスを主にしており、不動産ビジネスは次女がやっている。宅建士の資格を取り独立し次女ひとりで始めたビジネスだ。当初は家族の知り合い、友人などからの紹介で少しずつ実績を挙げていた。おかげさまで今ではそう多くはないけれど案件が途切れることなくあるようだ。

次女はオーストラリアへ留学していたことがあり外資に勤務していた。その経験と語学力をいかし外国人を顧客とした不動産エージェントを兼ねればと起業した。現在、日本人顧客が主だが外国人顧客が増え始めている。この間、フランス人経営IT会社に小さいがオフィスビル1棟お世話したと聞いている。

私は次女に常々、今の不動産仲介ビジネスで一人で3億円の収益が得られるまでやれと言っている。若い彼女が資本もなくやれるいいビジネスモデルだと思っている。そういう背景から今回の川崎のマンションの話を考える。まず第1に仲介ではないこと。第2に買取りリノベして売るというこれまでしたことがないビジネスモデルだということ。第3に全額金融機関からの融資でやるということ。

第4に投資額に似合う利益が取れるか不確かだということ。第5に話を持ってきた外国人エージェントの素性がよくわからないこと。第6に次女自身が自信がないこと。などの不安、不確定、不信などがこの案件には感じられる。私の経験からすればこの案件は「筋が悪い」ということになる。

反して「筋が良い」案件というのがある。先ほどのような不安、不確定、不信などという澱みのようなものが一切なく、聞いた途端にこれはいけるということがある。この場合も問題は数々出てくるがいずれも自分で解決ができるものばかりだ。「悪い筋」の場合は、自分では如何ともできないことが多くある。

ビジネスには「良い筋」「悪い筋」がある。これを言葉で説明するのはとても難しい。たくさんの経験をしなければわからないことかもしれないが、それ以上にそれを見分けるセンスがあると思う。そういうビジネスセンスを次女に伝えたいと思っている。我が子だけに父親への反発はあるけれど、是非とも伝えておきたい。

 

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