2019通販市場は21年連続の成長。ギフト通販が今後の成長戦略となる理由。
EC・ネット通販という言葉が、コロナ禍による巣ごもり需要もあり、新聞やネットニュースなどのメディアに上らない日がないような時代となりました。
約30年前、私が通販業界に足を踏み入れた頃を思い出しますと、当時はまだインターネットもなく、紙カタログが圧倒的な主流でジャパネットのようなTV通販が走り始めた頃でした。
当時通販は小売業全体に占める率はたった1%しかなかった訳ですが、今では5%を超えてきて、苦戦に陥った百貨店業界よりも上にいっています。
そして今年8月20日、長く通販業界の信頼向上に貢献してきたJADMA(日本通信販売協会)が2019年度の通販市場売上を発表しました。
・1998年より21年連続成長
・通販市場規模 8兆8,500億円
・およそ10年前の2010年より約2倍の売上
通販市場の規模推移は、以下協会図の通りです。
なお、主な小売業態別の2019年市場規模は以下の数字です。(経済産業省統計による)
スーパー 13.0 兆円
コンビニ 12.1 兆円
ドラッグストア 7.6 兆円
百貨店 6.2 兆円
通販市場の8.8兆円というのは、スーパー、コンビニに次ぐ国内第3位の巨大市場であり、たった数年のうちに通販市場は、1位のスーパーを追い抜く可能性も大いにあるでしょう。
2020年の発表は1年後ですが、長いコロナ禍からの巣ごもり需要から通販はさらに大きく数字を伸ばすはずです。その後でも益々の成長をつづけるのは通販市場、EC(電子商取引=エレクトリック・コマース)であることは、私が言わずとも疑いの余地はありません。
前表の売上推移から注目すべき点は、この推移表がコロナ以前からの伸びであることです。
さらに最も注目すべきは成長率の推移です。2014年から2016年の伸び率が5-6%と少し鈍っていたのが、市場規模が大きくなったのにも関わらず、2017年、2018年、2019年とここ3年連続で、8%以上の高い成長率を出し続けているのです。
その伸びを牽引しているのは、ネット通販であることは間違いありません。検索・閲覧・注文デバイスがPCからスマホ・タブレットに移ってきていることも大きな要因の一つです。
2017年、スマホの普及率は初めて全世代の80%を超えました。2019年には85.1%となり、まだ伸びています。世代別で見てもすでに10代〜50代に至るまでが、86%以上。60代でも68.5%と約7割と、シニア世代にも確実に普及してきています。
今や地域差も世代差もなく、スマホを持っていない人が珍しい程です。今から10年前の2010年のスマホ普及率は9.8%、10人にたった1人の割合だった・・・のにです。
デバイスの変化・進化とともに、Amazonや楽天のような大型ネットモールの成長も市場成長に大きく寄与していますし、ネットでモノを買うことに対してセキュリティなどを含めて、信頼できるショッピングデバイスになってきていることも、大きな成長要因です。
前回のコラムにも書きましたが、今は誰しもがスマホを家でも外でも肩身離さず持ち歩き、いつ、どこでも、どんな商品でも見ることができて、注文することが出来る・・・
「実店舗だけで小売をする時代ではない」ということです。
O2O(オンライン・トゥ・オフライン/ネットから実店舗へ 実店舗からネットへ)や、元セブンイレブンの鈴木会長がアメリカから持ち込み提唱し続けたオムニチャネルなど、ネットと店舗を統合するような仕組みが様々に言われて久しいのが小売ECの世界です。
ですが特に中小企業においては、それらのような大手企業がやるような、ビジネス界の流行語のような言葉や概念自体を、懸命に勉強したり、多額の投資をせずとも、
自社の商流をまず自分自身の肌感覚として見て、それだけでなくマーケット(人々の生活・消費)を俯瞰から見た流れも合わせ、常に半歩先を読みながら進めることが何より大事です。
お客様とコミュニケーションを図る、また集客ツールともなるスマホ・タブレット・PCのデバイス。
WEBサイト、SNS、ネットショッピングモール、紙カタログやリーフレットの有効な使い道。
それら全てを繋ぐための「企業(お店)の意思」「戦略」「商品」「サービス」「運営」。
細かいことを言い出したらキリがありませんし、また100年後の世界まではさすがに見通せませんが、今から今後少なくても10年、実店舗をやっていようといまいとECを必然的に小売ビジネスに組み込んでおくことは、至極当然な時代になっているのです。
さて、ここまでで言う通販のイメージは、自分のために買う、自宅用に買うイメージのものです。この通販市場規模8.8兆円の中には、私が専門とするギフト利用も含まれています。
ここ数年来ギフト市場の規模は10兆円で、ほんの少しづつですが右肩上がりです。ではその10兆円のうち、ネット通販でギフトを利用している率はここ5年はずっと約4%強で、割合に変化はありませんが通販市場全体が伸びているため、ネットでのギフト商品購買の売上数字も伸びているということです。
8.8兆円にギフト利用の4%を当てますと、3,500億円が通販市場におけるギフト市場規模です。逆に言いますと残り96%の8.24兆円は自分のために買う、自宅用に買う通販です。
96%もの自分用、自宅用の通販をブルーオーシャンと捉えるのか?
いや、そこは競争過多だと捉えるのか?
私の提言は、後者です。
通販市場での戦略(戦いを略す)ことから、特にリソースやノウハウの限られた中小企業は、まだまだ競争・競合が少ない「ギフト」という強い武器を携えて、ECでの通販の世界に向かうべきだと、常々提言をしてきました。
そうです、まだ4%でしかないギフトの通販利用にこそ、特に中小企業においては勝機があるということです。
先の通販協会の発表と同時に、通販専門メディア日本流通産業新聞で「ギフト業界・百貨店業界の中元通販」という見出しの記事が出ていました。
今夏のコロナで来店集客がままならない中元商戦を、通販の視点からの各業界実績の記事です。要約しますと以下の通りです。
百貨店における通販での中元商戦状況
・百貨店業界は、新型コロナウイルスの影響で通販の利用が拡大
・近鉄百貨店、阪急百貨店、阪神百貨店のEC売り上げはいずれも約4割増に
・店舗顧客が想定以上に通販に流入したことが増収要因
ギフト業界大手 リンベルの状況
・中元企画の通販売り上げは前年80%増で着地する見込み
・コロナ禍の外出自粛で、ギフトを贈りたい人に直接会えなくなったことが背景にあり
・ギフトを贈る際、品物と合わせてメッセージカードを希望する顧客が増えている
デジタルギフト ギフトパッドの状況
・中元向けの商品展開は今年が初めて
・中元向けを含めた今年7月度の通販売り上げは、昨年同月比で約3.2倍
土産物や旅行関連用品の通販 JTB商事の状況
・中元の品を贈る習慣のあった顧客が有名店や老舗ブランドの商品を選ぶケースが目立った(コロナ禍で会うことができない人に対し、これまで以上に心のこもった商品を贈りたいという気持ちの表れと認識)
・中元の受注は自社ECサイトに絞った(はがきや電話で申し込んでいた顧客は今年からウェブに移行、これに伴いウェブ経由の注文数は前年から大きく伸長する形に)
いかがでしょうか。
各社ともにギフトを通販で利用する形がコロナ禍から急速に増えているということです。もっとも百貨店実店舗での中元商戦のマイナスを、通販だけで補えるものでは到底ありません。
一方でこれからのギフトビジネスの在り方として、実店舗だけを利用してきた消費者層が、この夏を期に、ウェブ利用することの利便性を感じられた方も多くいらっしゃることから変わっていくことも事実です。
大事な方に贈るギフトはこれまで、実際に商品を手にとって、また店員さんに相談しながらというのが主流でしたが、時代はますます、EC・ネット通販化が進み、今のコロナ禍から一気にギフトの通販利用も進んでいきます。
そんなギフトを指名買いいただくためには、競合他社や業界常識に囚われない独自商品を磨き上げ、サービスを向上させ、それらを伝えるために常にブランディングやデザインを用い、WEBサイト、SNSも駆使して、集客のみならず顧客とのコミュニケーションを図っていく。
新時代の小売はギフトビジネスの世界にも到来しており、ギフトであればこそ、伸び続けるEC・ネット通販市場の中に、大きなチャンスがたくさん残されているのです。
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