成功する人と成功しない人の決定的な違い
最近当社が関わったクライアントで、成功している会社と成功していない会社、両極端なクライアントにご指導を行いました。どちらも食品関係で家族経営の会社だったのですが、成功している会社は、もう売り上げは十分で仕事にゆとりが欲しいから利益率の改善を行いたいという依頼でした。一方、成功していない会社は、売り上げが損益分岐点に達しないので社長がほとんど給料を取っていない状態。したがって、売り上げを伸ばしたいという依頼です。食品の種類や店舗の立地などは違えど同じ食品会社でもこうも違うのかという事例です。
成功している会社の社長は、高校卒業後食品会社に就職し、10年ほど修業をしたのち独立しました。独立当初は商品が売れず、開業資金の借入金が重くのしかかっていたため赤字経営でしたが、歯を食いしばって頑張ってきました。その当時はテナントへの出店でしたが数年後、取引銀行の勧めもあって独立した自社店舗での営業にかじを切りました。当然、土地・建物、備品等は借金をして備えたものであり、数十年をかけて返済するというもの。決して順風満帆な船出とはいかず苦労も多かったのですが、社長夫婦で頑張って懸命に働き、現在は、予定より早く借入金を全額返済し、無借金経営で売上順調という状態。
「そんなに忙しかったら人を入れたらいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、この社長、人を使う難しさ、人件費を賄うだけの利益を出すむつかしさを十分承知しており、どうしてもの時にパートを雇うことはあっても、正社員を雇用しそれによって事業を拡大しようとは考えていません。一言でいえば職人タイプの経営者です。
一方、成功していない会社の社長は、頭が良く一流の高校・大学を卒業し、大企業のエリートサラリーマンとして順調に昇進するものの、バブル崩壊のあおりを受けて会社は倒産。世の中の荒波に放り出されました。その後自分で会社を立ち上げたものの、プライドが高いのとエリート意識が抜けないためか、なかなか売り上げが伸びません。それで当社には、売り上げを伸ばすコンサルティングの依頼です。
ほぼ同時にコンサルティングの依頼を受け、ご指導に入ったため両極端な事例になってしまいました。成功している社長へのコンサルティングは順調です。家族経営の小規模事業なため、当社本来のショールーム営業のコンテンツとは表面的には少し違いがありますが、ショールーム営業の隠れたテーマの一つであるマーケティングや、管理会計の知識を動員してのコンサルティングを行っています。コンサルティングが順調なのは、社長が職人タイプでありながら、専門家の意見を素直に聞ける力を持っていることだと考えています。
ところが、成功していない社長へのコンサルティングはなかなかうまくいきません。当社のコンサルティングは8つの工程で1つのパッケージになっているのですが、その工程が前に進みません。前に進んだり、後に戻ったり。今どこの工程をコンサルティングしているかよく分からなくなる時があります。工程を強引に進めてしまってもいいのですが、それでは儲かるしくみがクライアントに導入できないことは分かっているので、何とか理解してもらおうと努力しています。
ところで、なぜこういう結果になるのかということです。社会人としてのスタート時点の差はあれど、その後は双方とも苦労しながらも頑張っています。何とかしたいという気持ちがひしひしと伝わってきます。しかし、片や売り上げは十分で、何とかゆとりを持って仕事がしたい。片やこのままの経営では生活もままならない、何とか売り上げをあげたい、という相談。どこに決定的な違いがあるのか。
1つ確実に言えることは、人の話をよく聞いて、それを自分に合うようにアレンジし実行できるか否かということです。他人の話は一般論であったり、その人の考えが入っているため根本的に自分に合わない意見も当然あるわけです。他人の意見をすべて聞いていたら方向性も定まらないし、自分という独自性も失われてしまいます。しかし、他人の意見というものは必ず参考になることが含まれています。それを見つけて自分に取り入れられる人が成功しているのだと思います。もちろんこれだけではなく、いろいろな条件や運もあります。
成功した社長は、社長自身もよく話しますが、当社のコンサルティングに実によく耳を傾けます。また、当社はほとんど専門用語は使わず平易な言葉でコンサルティングしますが、これに対しても実に素直に反応します。言葉自体ではなく言葉の奥にある真理を探ろうとしているのです。一方、成功していない社長は成功している社長と正反対です。提案に対して、できない理由を話します。言葉自体に興味があり、難しい言葉に反応します。
極論すればビジネスにおいて、頭の良さ、学歴の高さは関係ありません。成功したものが偉いなどと申すつもりは毛頭ありませし、ビジネスでの成功が人生の成功者とは限りません。ただ、この成功した社長はビジネスでも成功し、人生でも成功したと当社は考えています。大金持ちではありませんが、家族が健康で、会社も健康で、苦労はしましたが余生を楽しむだけのそこそこの財産があり、まだまだ経営者として仕事を続けられる。こんな素晴らしい経営者に出会えたことに感謝したいです。コンサルタントをやっていて本当に良かったと思える瞬間です。
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