アフターコロナを本気で考える。其々の会社の方針決定を観る。
コロナ禍が更に伸びることで、影響がより大きくなることが決定づけられました。この秋から「計画されていた倒産」に、「心が折れての倒産」が載ることになります。
いよいよ『大恐慌』ともいえる激動の時代が始まります。
そこで、今回のコラムでは、「コロナ後に向けた大方針検討のプロセス」について、まとめております。複数の事例を載せています。
「効率の良いところに、資源をシフトする」
これが、経営の原則であり、社長のすべき意思決定の一つです。
時代の流れとともに、自社を取り巻く環境は変化します。人口の増減や年齢層が変わります。新技術や政府の施策により産業は移り変わります。
その中で、『効率が良いものと悪いもの』がでることになります。
いままで続けてきた宣伝広告の費用対効果が悪くなります。それを、新しい広告に換えます。それにより、費用対効果が良くなります。より良い効率を求め、金を投じる先をシフトしていくのです。
また、事業も入れ替えていきます。既存の事業は、コモディティ化(ありふれた)し、利益を出しにくくなります。それに対し、数年前に立ち上げた事業は、集客の効率も良く、高い粗利も取れています。この事業に重点を移すことを決定します。
効率が良いとは、その施策なり事業なりが、市場に合っていることを意味します。
逆に効率が悪いとは、合っていないことを意味します。
そのためには、「今、何が効率良いのかを観ること」が必要になります。そして、「これから、何が効率良くなるのかを読むこと」が必要になります。そのうえで、社長は、意思決定をします。この社長の意思決定により、会社の未来が、大きく決定付けられることになります。
刻一刻と変化する「コロナ禍」の状況を観る必要があります。正確に表現すると、「政府の施策と大衆の心理」となります。また、「コロナ後」にどのように市場が変化するのかを読むのです。
そのうえで「コロナ禍」の今、社長は『何かしらの方針の決定』をすることになります。その方針の決定は、次の三つのどれかになります。
まずは、長期的な視点で確認します。根本的にその事業が、時代(市場)に合っているのかどうかということになります。
1.事業をどんどん伸ばす
コロナ前にも、そのビジネスは十分成り立っていました。このコロナ禍が追い風になっています。この先も市場は拡大することが予測されます。
2.今の事業のまま、乗り切る
コロナ前には、そのビジネスには特色があり、十分成り立っていました。コロナ禍になり、売上げは下がっています。しかし、平時になれば、ニーズが戻ると確信を持っています。
3.事業を根本的に、つくり変える
実は、コロナ前から、その事業は「いまいち」でした。市場縮小に伴う毎期の売上減の状態でした。その状況に打開策を見いだせずにいたのです。コロナ後には、更に、縮小するはずです。
『根本的に、この事業はどうなのか』を考えることになります。
いままで強かったのか。それとも、弱かったのか。その市場が、コロナ禍により変化するのか、または、その傾向が速まるのかのどちらかです。
その結果、この事業が「よりうけるようになるのか」それとも「よりうけなくなるのか」、それを見極めることになります。
そのうえで、中短期的な市場の変化を確認します。
自社の事業の『市場』がどのように変化するのかを見極めます。その変化とは、「量」、「期間」、「質」となります。
1.どれぐらいの規模の変化があるのか。
・市場は、大きくなるのか。それとも、小さくなるのか。
・短期的には、ゼロか7割か、倍か。
2.どれぐらいの期間、この影響は続くのか。
・冬ぐらいにはもとに戻るのか。それとも、冬から本格的に悪くなり数年間は続くのか。
3.どのような質的な変化が起きるのか。
・そのニーズは、残るのか。それとも、何かに完全に置き換わるのか。
其々の考えをまとめておきます。
「根本的に自社の事業はどうなるのか(長期)」、そして、「この先の市場の変化はどうなるのか(中短期)」から自社の方針を検討します。そこに、実現の可能性や自社の体力を考慮することになります。
下記は、当社のクライアントの意思決定の例です。
ネット食材卸A社
個人からの売上げが大きく伸びています。これを特需だと考えています。
コロナ前に力を入れていたBtoB向けサイトを伸ばすという方針に変わりはありません。短期的に、顧客一件当たりの売上げは下がることが予測されますが、ネットで仕入れる店は増えるはずです。このコロナ禍も変わらず広告を打って、会員数を増やしています。
システム構築B社
学校へのタブレット学習関連のシステムが、大きく伸びています。しかし、これは来期には、ほぼ無くなります。また、本業である大手企業向けシステム構築は、今期中の受注残があるものの、来期以降、数年間の地獄が来ることが予測できています。先日、生き延びるための最大限の借入れをしました。大幅な固定費削減の準備も整えています。
イベント販促C社
コロナ禍に入った時から、ほぼ『事業停止』状態に入りました。中途半端にいろいろやっても、すべてに効率が悪いことは読めています。必要最低限の機能(人、設備)を残し、その多くを整理しました。一方で、ネット関連の事業の立ち上げを粛々とすすめています。借入を起こし、潤沢な現金を持っています。再起動時には、その現金が活きてくるはずです。
住宅リフォームD社
売上げは、昨年対比3割減というところです。春から夏にかけては、広告効率が悪かったため、控えていました。戻りを感じた先月から、大きく広告費を投じ始めました。住宅の補修などの問い合わせは、コロナ前の水準まで戻すことができました。
コロナ禍ゆえの心情でしょうか。多くのお客様からは、「値段でなく、確実性(安心)を求めD社を選んだ」と言ってもらっています。
設備設計F社
コロナ前、大手1社からの売上げが、全体の7割を占めていました。受託開発であり、この事業に限界を感じていました。このコロナ禍で、その客自体の業績が落ち込んでいます。半年後には、完全に手持ちの仕事が無くなります。ここ数年の経営状況も悪く、現金も少ない状態です。
一刻も早い新規事業の立ち上げに取り組んでいます。その事業は、コロナにより伸びる分野であり、初期投資を必要としません。一件あたりは少額ですが、顧客先への提案から施工、回収まで短期間で回せるはずです。社員に、全く異なる事業への『リストラ』に協力依頼するという大仕事が残っています。
コロナ禍により、社会に大きな変化が起きています。また、コロナ禍により、経済全体の縮小は避けられないことになります。長期、中短期の視点から、社長は考えることになります。
そして、より効率の良いところを見定め、事業を、資源をシフトさせるのです。
その「見定め」こそが、全てになります。
この状況を、どう生き延びるか。
コロナ後に、どのように飛躍するのか。
今の社長の示す方針が、5年後、10年後の我社を決めます。
社会が変わる時に、チャンスが生まれるのです。
補足として、コロナ禍によって業績が悪くなっている企業の取れる代表的な方針を下記にまとめております。
1.事業停止に近い状態で生き延びる。
いろいろ手を打っても、効率が悪すぎる事業があります。中途半端に手を打って、体力を落とすことを避けたいところです。大鉈を振り、固定費を限界まで削減し、半冬眠状態に入ります。
市場が戻った時に、一気に攻勢をかけます。または、3、4年後に、新規ビジネスで再起をはかることもできます。
2.市場の回復を観ながら、既存事業の施策を工夫する。
効率のよい広告宣伝のみに絞って行います。ここ数年の好景気で、肥大化した社内の無駄を排除していきます。ネットによる集客や販売に置き換えます。システム化や外注化により、省人化を進めます。
借入れ(金額最大・期間最長・据置)で、現金を確保します。財務状況の悪化により、いまは淘汰されないことが優先事項です。(金利は保険料と考える)
市場が益々悪化するなか、他社が淘汰されていきます。その一方で、色々なものの「安売り」が始まります。その時には、相対的に現金の価値が高まることになります。時期を観て、「優秀人材」の獲得にかかります。M&Aも有りです。
3.根本的な事業の作り直しを行う。
この選択を行う企業には、2種類あります。一つは「もとから既存事業がダメだった」会社です。コロナ前から事業の変革が必要だったのです。
もう一つは「ビジョンを達成する」ためとなります。自社のビジョンを達成するためには、今の事業を続けていては限界だと感じていました。しかし、そのきっかけがなかったのです。
このコロナ禍で、仕事が減り、時間ができました。また、『市場』に大きな変化が生まれています。これを良い機会と考え、自社の作り変えを行います。
この3つのどれかになります。
または、組み合わせになります。一つの事業は「1」を選び、そのうちに「3」を進める。「2」を進めながら、「3」に取り組む。
以上、参考にしていただければ、幸いです。
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