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人事制度の見直しは、問題点だけに限定する

SPECIAL

人事制度コンサルタント

株式会社ENTOENTO

代表取締役 

会社を成長させる人事制度づくりで、700社以上の指導実績を誇る日本屈指のコンサルタント。日本の過去50年間の人事制度のつくり方とは異なり、経営者の評価と賃金の決め方を可視化してつくる画期的な人事制度は経営者から大きな支持を得ている。

「先生、我が社の賃金制度をつくり直してください」

先日、ある経営者が相談に来られました(来られたと言っても、現在はオンラインですが)。

賃金制度の見直しを考えている経営者から、しばしばこのような相談を受けます。

その相談をしてきたすべての経営者に対して、私はまず始めにこう尋ねます。

「賃金制度のどこに問題がありますか?」

その質問に、経営者は口を揃えてこう答えます。

「とにかく問題があるので、そっくり先生の考え通りの賃金制度にしてください!」

これではまた同じように失敗の繰り返しになるでしょう。

「見直し」は、「問題がある部分」に対して行うのです。

逆に問題がなければ見直しを行う必要もありません。

賃金制度の見直しをするならば、まずはどこが問題であるかしっかり確認をしてください。

見直しはそれからです。

ただし、見直しする際に絶対に言ってはならないことがあります。

「問題があるからこれから賃金制度を見直します!」

そのように一方的に社員へ向かって宣言することです。

「賃金制度の見直し」

この言葉に社員が抱くのは、「会社は社員の賃金を下げようとしている」という心配です。

社員は、賃金が下がるのではないかという不安から、反発の感情を持つことになります。

それがどれほど社員のためになる賃金制度の見直しだとしても、です。

経営者が問題だと思ったことは、往々にして社員も問題だと思っています。

ですから伝え方にはコツがあります。

「社員から賃金制度の質問をもらいました。検討したところ、賃金制度に問題があることがわかりました。そのためこれからその問題を解決することにします」

社員は目を丸くして驚くでしょう。

「この会社は、社員が問題だと思ったら制度の見直しをしてくれる。それも賃金制度まで見直してくれる。こんなにいい会社はない」

これは経営者目線ではわからないことでしょう。

たとえば、私が提唱する賃金制度が「松本式賃金制度」だったとして、松本式賃金制度を導入することが御社の賃金制度のあらゆる問題を解決することにはなりません。

私が一方的に賃金制度を押し付けても、経営者はやはりどこかに問題を感じて、またどこかに相談に行くことになります。

実は冒頭の経営者は、今まで過去に4回も賃金制度を変えていました。

「今度を最後にしたいんです」と言った経営者に、私は伝えました。

「私には『いい賃金制度』を差し上げることはできません。でも、社長が今まで何をどのように検討して昇給・賞与を決めてきたかを可視化することができます。私は可視化のプロですから。

そしてこれまでの決め方を可視化すれば、どこに問題があるかわかります。問題がわかれば見直しは難しくありません。そしてこの方法以外に賃金制度見直しの成功はありません」

これまでの昇給・賞与の決め方を可視化する。この方法しかありません。自分の決め方を可視化するから、今後は自分で見直しができるのです。

先ほどの経営者も成長塾でこれまでの決め方を可視化された結果、どこに問題があったのかがはっきりしました。

問題がわかったので、私は解決方法をお伝えしました。

ニュースなどでよく「賃金制度が問題だ!」という話が出てきますが、どこが問題なのか内容がはっきりしないことを、不思議に思われないでしょうか。

つまり「問題だ」と思っていても、どこに問題があるかがピンポイントで分からないのです。

仮に年功序列型賃金が問題であれば、年功序列型賃金を見直せばいいのです。

歩合給のせいで組織風土が良くないのであれば、歩合給を見直せばいいのです。

大切なのは、経営者がどうして社員にその金額を支払っているのか、諸手当1つに至るまでその理由をきちんと説明できるようにすることです。

賃金表を作り変えるのは経営者の仕事です。なぜなら、支給額に問題であるという認識を持つのが経営者だからです。

経営者の考え方を可視化して賃金制度をつくることによって、二度と同じ問題が出ないような賃金制度にすることができるのです。

もっとも、時代は変わります。現状で全く問題のない賃金制度でも、5年、10年と継続して運用していけば、必ずどこかで問題が起きるでしょう。

今、ジョブ型雇用をしようとしている会社があります。

「ジョブ型雇用するときの賃金はどうあったらいいか?」

これは人事部の問題ではありません。これは経営者の問題です。

入社した社員が会社で人生をかけて成長するときに、その成長に合わせ、組織貢献に合わせてどう賃金を決めたらいいか、経営者の考え方をしっかりとビルトインすることによって、生きた、役に立つ賃金制度にすることができるのです。

今までも私たちは、「賃金は社員が成長した後からついていく、それが賃金制度だ」と言ってきたはずです。賃金をニンジンにして振り回すことは、今までしてきませんでした。

もっとも、「そんなことを言っていることが問題だ」という意見があっても構いません。

それを見直すことで社員が成長することができれば、それはそれでいいのです。

コンサルタントや専門家の言うことを鵜呑みにせず、経営者としてどう決めたらいいか、真剣に考える時が来たと言えるでしょう。

抜本的な改革がこれから進んでいきます。それができない限り、それぞれの企業の将来はあり得ない。多くの経営者が口にしている通りです。真剣にそのことと向き合って、きちんと経営者の考え方を可視化した賃金制度をつくって頂くことをおすすめしたいと思います。

「賃金制度に見直しが必要だ」と思ったその時は、まずは見直しをするべきところをしっかりと可視化してください。

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