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売れない時代にヒットを飛ばす理由

SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

商品リニューアルの手法は万華鏡のように、企業の魅力や個性によって、リニューアルのアウトプットが変わります。ある企業ではネーミングやパッケージデザインのリニューアルによって大きく飛躍し、別の会社では経営者の意識が変わり、社員の意識が変わり、お客様への伝え方が変わったことで既存商品のヒットにつながった、ということもあります。売上が上がらない時代、業績を伸ばしている会社に共通していることは、「闇雲開発との決別」、この覚悟にあります。

オリンピックイヤーである2020年、百年に一度の疫病が流行、世界中が巣ごもりの時代となりました。このさなか、大ヒット商品のひとつが「あつ森」こと、任天堂スイッチの「あつまれどうぶつの森」です。

「あつまれ どうぶつの森」は任天堂より2020年3月20日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフトです。どうぶつの森シリーズの第7作目。キャッチコピー「何もないから、なんでもできる」と言っているように、「無人島」 を舞台に、プレイヤーであるわたしたちは、手つかずの島で2匹のどうぶつと共に一から生活をはじめることになります。

ゲームのタッチは柔和でどこかホッとさせる色彩とキャラクター。島での生活こそまさに巣ごもり。プレイヤー自身の日常を投影させながら、バーチャルだからなんでもできる快感があります。直近では「あつ森」と海外のファッションブランドのコラボが話題になるなど、プレイヤーをワクワクさせる企画がゲームのなかで展開しています。

「あゝ、ゲーム業界の話ね。巣ごもりだからね」と、いうのがシロウトの反応です。経営者であれば“自分ごと”として現象をとらえる姿勢が必要不可欠です。多くの人が支持していることに、大衆の目には見えない心理、内面、潜在意識(無意識)が隠されています。

わたくしたち生活者、一人一人の中にある無意識が大きく膨らんだ時にブームとなって、新しいエネルギーが動き出します。「あつ森」であれば、ミレニアムの頃に一大センセーションを巻き起こした「Second Life(セカンドライフ)」が下地にあります。当時は話題になったものの、通信速度が遅いし、3Dもダサい。新しさが話題になりながら、プレイヤーのテンションが上がらないまま下火になりました。

そこから20年あまり、テクノロジーが進化し「あつ森」が大ヒット。その間、わたしたちには変わることなく、「バーチャルな空間でもう一つの人生を無楽しんでみたい」「第二の人生を謳歌したい」「嘘でもいい、だまされてもいい、別の人生を味わいたい」という欲求が下支えになっていることに気づかされます。

たまたまコロナ禍、巣ごもり生活がゲームブームにつながりましたが、そもそもの無意識にそうした「現実逃避」したいという願望が強くあることを再発見することができます。

冒頭に戻ります。今、どの企業も自社商品改変に知恵を絞っています。巣ごもりライフに合わせたパッケージデザインの仕様変更、ネーミングの改変、見せ方や売り方のリニューアル等々、ご相談が尽きません。

売上を出す、利益を出す、ヒットを出す! たいへんな気魄です。もちろん大事なことです。しかし、お客様は御社の「自社都合」の気魄を見抜きます。コロナ禍、家計のひきしめ時で、お客様はいくらでも「買わない理由」をあげはじめます。「今は必要じゃない、欲しくない」と御社商品を無言でクビキリします。

では、欲しくなる商品とはどんな商品なのでしょうか? この一点について、どれだけ深く考えておられますでしょうか? その商品を買ってもらいたい、その商品をつかうことで喜んでくれる、幸せを感じてくれるお客様の顔がありありとイメージできますか? 商品はもとより、自社のお客様の心理、無意識について研究することは基本中の基本です。

当たり前のことを申し上げています。でも、実はこの「当たり前」がほとんどできていない、というのが現実なのです。「直感的に商品を作ってきた」「出したら売れた」「どうして売れているのかないのかわからいけど売れた」「売れない理由は考えたことがない」「モノあまりだから・・・」等々、コロナ禍にご相談におみえになる社長たちが、同じように苦笑され、言葉にされます。

そもそもなぜ商品をつくるのか、なぜそういうコンセプトなのか、なぜその人たちに売りたいと考えているのか。そう問いかけると、「バカバカしい! わたしが欲しいのはすぐに結果が出る戦術ですよ」と放つ社長もいらっしゃいます。

確かに、商品リニューアルには、お客様の「欲しい!」にバシっと刺さる一矢があります。しっかりと的を定めて、お客様の心、お客様のライフと一体化できるよう設計して初めて、叶うことなのです。闇雲商品リニューアルでは、お客様に伝わりません。お客様の「欲しい!」には届かないのです。

遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す。二宮尊徳の言葉です。なぜ自社商品、自社サービスがあるの? 原点回帰することができる「覚悟」が、新時代のリーダーに求められています。

 

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