SDGsは何のために
先日、いかにもこの時代らしい問い合わせを受けました。とある大手メーカーから「SDGsに関連した商品を作りたいのだが、どうしたら国連に認めてもらえるか?」というものです。国連の規定によると、商品を企画する目的は①非商用、②商用、③資金獲得と3つのカテゴリーに分かれており、②と③については審査を受けた後で国連と契約を結ぶ必要がある、とされています。以前はだいぶ緩かった規定が、最近になって見直され、運用面では若干厳しくなったとも聞きました。
問い合わせてきた会社にはその状況を説明すると同時に、「単なる儲け話では国連は動いてくれないだろう。趣旨に賛同し、自らもSDGsを実践している、というレベルでないと審査は通らない可能性が高いと思われる。」と回答したのですが、案の定その後全く何も言ってこなくなりました。
持続性ある社会を実現するために、SDGsは17のゴールを掲げて世界中の人たちが共有できる仕組みになっています。基本的に今のありようを変えて行こうとするものなので、手間もコストもかかる部分が多いのは間違いありません。そのせいか、今は問い合わせてきた会社を含めた多くの方々が「SDGsはコストである」と認識されているようです。
でも、もし会社の事業そのものが社会の持続性向上に資するものだったとしたらどうでしょう?横浜市の大川印刷は、中小企業なのに全社でSDGsを意識した事業を行っており、使用するインクや紙が有害化学物質を含まないものであることなどをセールスポイントにしています。すると新規のお客様から「こちらの会社は環境に良い印刷をしてくれるんだって?」との問い合わせが増え、売上が向上しました。SDGs活用のポイントはここにあり、業種業態によってやや切り口は異なりますが、SDGsを遵守することで売り上げが上がるというシナリオは十分に実現可能なのです。
問い合わせてきたメーカーでも、自社製品を説明する時に「SDGsに取り組んでいる会社の製品」「環境によい部材」「社会によい素材」などの説明的付加価値をつけることができるようになります。それまでJISなど品質面での基準認証や、ISO9000, 14000など制度的な認証を受けることで事業面のアドバンテージを確保してきたメーカー的な視点に立って言えば、SDGsは認証制度でこそないものの、それを訴求することが確実に強いメッセージとなるところまで人口に膾炙しています。すでにそれはソフトローとしての力を持ち始めている、とさえ言えるでしょう。
この流れは、金融界を包む大きな変化とつながっていて、ESG金融やスチュワードシップコード、責任投資原則などの言葉で代表されるような、社会善を重んじる方向へと確実に進んで行くのです。これまで通りにする方が良い、だから社会善へのコミットメントを改めて打ち出す必要はない、ではそれまで通っていたものも通らなくなる、ということです。
これまでのやり方にこだわる中で結果として機会を逃す意思決定は、この変化のおかげで早晩できなくなる可能性が高いのです(もしかすると今年が最後くらいかもしれません)。そう言う会社は間違いなく生き残って行けなくなる時代が、実はもうすぐそこまで来ているのです。
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