事業を確実に発展させる「プロジェクト化」の考え方
「社員を鍛えるってことが、わかっていたようで全然わかっていなかったです」―― 今年から当社のコンサルティングに取り組まれている、サービス業のN社の社長の言葉です。
同社は気の強いN社長のリーダーシップもあって、いい意味で社内にピリッとしたしまった雰囲気があり、従来から社員の中にさぼる人はいません。
N社長も、「自分は社員たちをしっかり鍛えている」と認識されていたのですが、当社のコンサルティングの終盤に「重要案件のプロジェクト化」の仕組みづくりに取り組まれた際に、「このままやっていても社員は育たない」と気づかれたのでした。
この「プロジェクト化」の考え方は、事業を発展させる上で最重要といっていいぐらい大事なことなのですが、過去に当社が直接かかわらせていただいた企業において、これをしっかり理解されて実践されていたところは1社もありませんでした。
おそらく世の中的にも、これができている企業は多くないと思います。それぐらい、どんな業種業態の企業であっても「絶対にやるべき大事なこと」が抜け落ちていたりするものです。
ここではその「プロジェクト化」の具体的は手法の説明は省略しますが、簡単に言うと以下のことができているかどうか、ということになります。
- プロジェクト名
- プロジェクトの目的
- 実行責任者
- プロジェクト達成のためのアクション項目
- 各アクションの実行担当者と実行期限
上記が自社の『すべての』重要案件について明確になっており、それが「プロジェクト管理表」といったものにまとめてあって、かつ一覧できるようになっていてはじめてその会社はプロジェクト実行体制ができているということになります。
これは家づくりにたとえていうならば「設計図」をつくる作業と言えます。多くの会社では、自分たちが最終的にどのような状態になりたいかという、家の完成形もイメージできていなければ、そのイメージを具体的に実現するための設計図も描いていない、というのが実態です。
それぞれの社員が「自分がやるべきこと」と認識していることは、各自の手帳やノート、あるいは頭の中に「なんとなく」リストアップされており、それを全社員分寄せ集めて並べてみたところで、会社は社長が思っている「あるべき姿」にはとても到達できそうにない…ということもよくあるケースです。
つまりは、日々忙しく仕事をしている社員は、自分たちがどんな家をつくろうとしており、自分はそのためにどのパートを担っているのかという意識が希薄なまま、とにかく目の前の材木をせっせと加工している、という非常にもったいないことになっているということです。
N社長は、プロジェクト化ということがまったくできていなかったこともさることながら、社員に「自分たちが本当にやるべきこと」をしっかり自分で考えさせてこなかったことに気づかれ、冒頭の言葉が出たのでした。
自分たちが本当にいまやるべきことは何か ― これを考えさせることが一番の社員教育になります。社員にさせるべきは「お勉強」ではありません。行動の前提となる「思考訓練」なのです。
N社では早速幹部社員たちがプロジェクト実現のためのアクションを考え始めました。一見簡単そうに見えるもののやってみると非常に難しく、「一体何をやるべきか」がいかにわかっていなかったことに当初は愕然としたとのことでした。
数週間後、度重なる議論の末に一枚のプロジェクト管理表が完成しました。まだまだ完ぺきではありませんが、「このアクションを実行すれば事業は確実に伸びる」という確信を各自が持てています。
社員が頭を抱えてうねりながら考えたアクション項目を社長が承認し、その実行を後押しする環境をつくる。この仕組みが回っている会社は強いです。確実に狙った方向に船は進んでいきます。
本当にやるべき大事なことを実行しなければ会社はよくならないということは言うまでもないことですが、そのやるべきこととはいったい何で、それは誰がいつまでにやるのか…そこまでを明確にしてはじめて社員がコミットできるのであり、実際の行動にもつながるのです。
御社では社長の目の前に事業を発展させるための「設計図」が用意されていますか?
急ぎの案件をこなすことに終始して、なんとなく忙しく時を過ごしていませんか?
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