中小企業の社長が「木を見て森を見ず」だけでは ”ダメな理由”。
東京では再びコロナ感染者が増え出し、豪雨被害も重なって、経済にとってはまた厳しい状況になってきましたね。
世間ではニューノーマルな生活様式や、リモートワークなどの新しい働き方が、各メディアでは取り立たされています。
今の状況から、これからどうすべきなのか? どうあるべきなのかか?
否応にもいきなり突きつけられたような現況かと思います。
これまで当たり前であったり、順調であったことが、突然窮地に追い込まれたり。
本日のコラムは、そんな状況下で中小企業の経営者はどういう視点で経営や事業を捉えていけばいいのか?です。
「園さん、このメニューブックを見られてどう思われますか?」
先日、複数の飲食店を営む企業からご相談があり、開口一番こう聞かれました。
そのメニューブックを見た瞬間、問題点・課題点を詳細に伺うまでもなく、一瞬で事業や経営そのものが”混迷” されているなぁと感じました。
提供しているオリジナルメニュー自体にはとても個性があり、独自性も豊かで分かりやすくもあり、とてもいいのです。
が、そのメニューブックの表紙時点で、複数の文字フォントがランダムに踊り、しっかり撮影された美味しそうな料理写真には品名が文字被りして見づらく、各ページは色ベタを引きまくり、本当におすすめする一番メニューの紹介も中途半端で、どれもがオススメのようなメリハリない状態でした。
「木を見て森を見ず」に対して、このケースでは「木を見て森が分かる」という状態です。
今後ギフトの通販を強化したいとのことで相談を寄せられたのですが、それ以前にこれからどういう方向性で経営をしていきたいのか?
その中で、ギフト通販を経営上、どのような位置付けで事業展開していきたいのか?をまずはハッキリさせましょうとなりました。
当社で"ギフト通販"という大きな武器を手に入れて頂きたいのは山々なのですが、企業経営全体から見れば、一から起業する場合を除いて、
”森”が経営そしてその規模であり、ギフト通販はその中の ”木(ひとつの事業)” です。
その木に・・・
枝(商品・サービス)をつけ、
葉(販売)を繁らせ、
花(売上)を咲かせ、
実(利益)を収穫する。
種(投資)を蒔く。
このように当社では考えています。分けて考えますとこうなります。
木が生えなければ森にならない。枝が育たない木や、葉がつなかい枝、花が咲かない葉、花が咲いても実が取れない、実ってもいい種ができないと、企業も事業も成り立ちません。
その木が長く生き、定期的に花を咲かせ、豊で美味しい実がなり、その実から採れた種を蒔いてさらに木を増やす・・・。
どんな森(経営、事業規模)を目指したいか、どんな木(事業)を育てたいのかを決める、イメージすることが重要です。
大企業を目指すなら大きな森でしょうし、中小企業なら森ではなく林くらいかもしれません。零細企業ならたった1本だけの木かもしれません。
もし1本だけの木であるなら唯一のその大事な木を、どんな劣悪な環境にさらされても大丈夫なように、長く強いしっかりした根を張る木でなければならないのです。
大きな森であるならその逆もあり、ダメになった木を伐採することが経営上、必要な場合もあるでしょう。
当社のクライアント企業で中小規模の商社がいらっしゃいます。2015年からコンサルティングを行って、今も引き続き指導させていただいていますが私自身、このクライアント企業の社長の考え方には大きく賛同しています。
この企業のことは自著にも少し紹介していますが、2015年当時年商8億でしたが、2019年には2.5倍の20億円になりました。ですが決して無理をして大きくされたわけではありません。
主力事業の本数自体は4本(家具・雑貨・青果・水産)で、2015年から変わっていないのですが、それぞれの事業を10年ほどの長期で見据えてしっかり強く育ててきた結果です。
この社長は、短期での利益は決して求めません。長期を見据えて進めた結果、たった4年で2.5倍の規模にまで成長させたのです。
中堅商社ご出身のこの社長の考え方は至ってシンプルです。
「右から左へ流す従来の商社商売でなくメーカーポジションを取ることが出来るか」です。
これがどの事業にも息づいているのです。ですので、粗利が大きいのです。
商社であっても決して他からは流れない、また価格競争力もある高品質のオリジナル商品を作るか(粗利もある)をモットーとされていますので、国内のみならず、ベトナムやタイなどの東南アジアに拠点も持ち、原料買い付けのみならず、自社製品の製造やそのための現地指導まで行われています。
ご存知の方には当たり前ですが、輸入となれば当然コンテナ何台分みたいな大きなロットが発生しますし、その商品が売上・利益を生むのは早くて半年先、下手すれば1年先みたいなこともあります。
それでも長期を見据えた経営を進めているので、限られた営業リソースでは、細かい受注の営業は絶対に行わず、取引でなく大きく取組みをしてくれる企業とがっちり行うBtoBスタイルで、結果、強い信用を産み出し、長く大きな取引が続いています。
このように常に長期視点で経営を行っているわけですが、その反面、細やかな現場視点も持っており、現場で気づいた少しの綻びやヒントも見逃さず、そこから長期視点に繋げていったりもされています。
多くの中小企業経営者は、大きな売上利益を上げることに目がいき、森ばかりを見て夢ばかり見る経営者と、その逆でプレーイングマネージャーをやらざる得ない社長の場合では細かな現場のことや、短期での売上利益ばかりが気に掛かり、長期視点がおろそかになる経営者がいます。
「木を見て森を見ず」は経営者としてはもちろんダメですが、特に中小企業経営においては「木を見て森が分かる」視点が同時にあることも重要なのです。
私自身の経験談で恐縮ですが、昔勤めてめていた通販会社が倒産した時、その時の経営者は毎日ゴルフ三昧、取引先からの接待三昧、たまに会社に出てきても目先の売上利益だけを求めるような訓示ばかり。現場視点はまったく欠けていました。
それでも優秀な経営者であれば、そのゴルフや接待を有意義に使い、会社の発展に繋げるのでしょうが、そんなことは残念ながら最後までありませんでした。
森が見えてなければ、木は見れません。森が見えていても木が見えていなければ、長く繁栄する "いい森" は作れません。
社長、あなたの会社の森と木のバランス、よく見れていますか?
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