新しいお金のいただき方
先日、あるクラウドファンディングのプロジェクトに少しばかりの寄付をしました。プロジェクトの目的は、コミュニティ通貨を流通させるためのスマホアプリを作るというもの。このコミュニティ通貨には使用期限が決まっていて、期限を過ぎると目減りするという仕組み。目減りした分は、社会課題の解決に使う資金になるといいます。
期限内に使えば、金額相当の買い物ができ、期限が切れても誰かのためにお金が使えるというわけですから、心ある人にはどちらに転んでも痛くありません。ちょっといいことした気分になります。
この「ちょっといいことした気分」にお金を払うという行動はこれからも増えて行くのではと思います。
コロナ時代に入って目立ち始めた「応援消費」もその一つ。売上が落ちた飲食店が、コロナが収束したら来てねといって販売する「未来チケット」。かたちだけ見れば、従来の前売りチケットや商品券と変わりませんが、購入するときの気分が少し違います。
昔よくあった喫茶店の10枚綴りのコーヒーチケットやバスの回数券は、10回分の金額で11回というお得感が売りです。売り手にしてみれば、1割引で売り上げの早期回収ができ、しかもリピート確保というメリットがあります。
お客さんにしてみれば10回分のお金で11回利用できるわけで、「ちょっと得した気分」になります。
この「ちょっと得した気分」は「ちょっといいことした気分」と少しだけ違います。両方とも「いい気分」であることは間違いないのですが、利己的か利他的かの違いが出てきています。
応援消費の場合の「ちょっといいことした気分」は、売上が落ち込んだ飲食店を助ける利他的な、言い換えれば、ヒーロー的ないい気分です。ヒーローといってもそんな大げさなものではなく、3000円や5000円分のプチヒーローです。そのうえいずれはそのお金で食事ができるわけですから、時間差はあってもお財布は痛みません。
世の中を見回すと、ちょっといいことした気分になるお金の支払い方は他にもあります。
たとえばオーストラリアのあるレストランではメニューに価格が掲載されていなくて、客は自分が好きな金額を支払っていいというルールになっています。このレストラン、「収入や身分に関係なく誰もが健康的な食事を平等にできるように」という趣旨でNPOが運営しています。そして多くの客は自分が食事した量よりも多めに支払っていくといいます。
大阪のあるカレー屋では、客が自分の支払い+200円を払うと、200円分のカレーチケットが発行されて、それを使って近所の子供達がカレーを食べられるそうです。チケットはホワイトボードに貼りだされているので、客は次に店に行った時に、自分のチケットがなくなっているのがわかる。それが嬉しい、というわけです。
クラウドファンディングも「ちょっといいことした気分」になる寄付に近い行為のひとつです。リターンはありますが、主宰者のゴールの達成を応援するという意味では、利他的なお金の使い方です。
さて幸福の研究では、人は他人から感謝されたり、他人とのつながりを感じたりすると、幸福感がぐんと上がると言われます。応援消費などの「ちょっといいことした気分」をもたらす消費行動は、お金を介して人の幸福感を上げることに貢献するとも言えそうです。
「ちょっと得した気分」と「ちょっといいことした気分」。どちらにお金を払うかはその人次第です。同じお金を払うなら、売り手以外の誰かを喜ばせるようなお金の使い方を選んでみたい。そんなお客さんの気持ちに応えるビジネスモデルを検討してみると、貴社の事業にも新しい趣が生まれるかもしれません。ぜひ一緒に考えましょう。
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