オンライン雇用の時代が来る
コロナショックを通じてあっという間に広がった新しい習慣の中で、オンライン会議システムほど便益をもたらしてくれているものはないと感じています。なにせ交通費と時間をかけずに遠方からの参加者と会議や仕事の打ち合わせが簡単にできる。どうかすると飲み会までやれてしまうという点は、これまでの仕事の仕方を根本から変えるものだと思っています。
打ち合わせやコンサルティングについても、確かにリアルで実施した場合に比べると若干の不便さはあるのですが(たとえば予定していなかった話題が出たときに社内なら担当者を呼んで来られるのにオンラインでの招集は簡単ではない、など)、かなりの事はオンラインでこなすことが可能です。
この先には、仕事そのもの、あるいは雇用そのものをオンラインで実施するというモデルが出てくるのではないかと見ています。オンラインで求人し、オンラインで選抜し、オンラインで契約してオンラインで勤務する。リアルで対面することをほとんど、あるいは一切省いても、成り立つ話だということです。
この話と表裏で求められるのが「ジョブ型雇用」と呼ばれる新しい雇用形態への対応です。つまり業務仕様書(ジョブ・ディスクリプションと言われます)で「どんな仕事が求められるのか」「成果品は何か」「どうやって評価されるのか」がしっかりと決められていて、とにかく員数を揃えれば良いというような考え方が可能な限り希釈されていることが条件になります。なぜなら、この員数確保と言う考え方こそ集団作業を前提としたリアル雇用を下支えするもので、これがある限り集まって仕事をする、という方式から完全に脱却することが難しくなるからです。
私は独立する前の16年間ほど、国際機関で「ジョブ型雇用」による勤務を経験しました。勤務先でも日本でよくある「島型」の着座方式ではなく、個室または机と机の間に衝立のある執務室での勤務だったのですが、「島型」に比べるとそれがそのままオンライン化されることに違和感を覚えないという利点は確かに存在すると思います。
島型の着座方式による勤務をオンラインで実現しようとすると、オンライン会議システムをずっとつないでおく必要が生じます。その気になればやれなくはないのでしょうが、そうなると仕事のパソコン画面の他にオンラインで仲間の顔を映しておくためだけにもう一台のパソコンあるいはそれに準じるデバイスが必要になり、インターネット回線の負荷もそれだけ大きくなります。
また、日本の住宅事情も100%オンライン雇用を歓迎するだけのスペースが確保しづらい点が制約条件になるでしょう。家の近くにサテライトオフィスなどを確保できれば話はだいぶ違いますが、現状そのようなユーティリティが整備されているというわけではまだ全くありません。
だとすると、まずはジョブ型雇用制度を導入し、オンライン会議を定期的に設定する方式がより現実的な対応だと言えます。員数確保による集団作業が必ずしも求められない、たとえばIT分野の企業などではそろそろ実例が出てくるのではないでしょうか。その点で、2020年は日本の雇用システムにとって革命的な変化が始まった年として記憶されるのかもしれません。
強いものが勝つのではなく、変化に対応したものが生き残るのだ、というダーウィンの言葉はよく耳にしますが、この変化を機会と見て先取りするのか、それとも後から追随するのか、あなたの選択肢はどちらですか?
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。