間違ったキャッシュフロー経営の功罪
社長に就任して1年目。毎日毎日、夜遅くまで必死に働いているのに、なかなか経営が良くならない…。真の課題解決のための第一歩を踏み出すべく、苦しい胸の内を告白してくださった、とある2代目社長さんのお言葉です。
今は、いわゆる「コロナ融資」が活況ということもあって、金融機関も、それから企業側も、「まずは、取り急ぎコロナ融資で資金を注入して…」という会話が日常の光景になりつつあります。
そのため、表面的には、どの会社もキャッシュが回っているように見えます。それに、財務を知らない社長ほど、「ウチの会社はいつでも銀行がお金を貸してくれる…」「ウチの会社はお金のことで困ることはない…」と、誤解しつつあります。
金融機関側としては、いわゆるコロナ融資は、政府主導の政策ということもあって、ほぼほぼノーリスクで融資が可能になります。それに、とりあえず「今は」融資先を倒産させないように…との動きがあるため、積極融資になります。
しかし、コロナ融資はあくまでも緊急措置です。条件を見て見ればわかることですが、すべからく「会社の真の姿や実力」を審査して、融資が下りているわけではないのです。
とはいえ、企業側としては、キャッシュが尽きてしまえば、会社は潰れてしまいます。ですから、使える手段は使い倒してキャッシュを確保するのは、当然のことです。
ここで忘れてはいけないのは、「借りたお金は、いずれ返さなければならない」という歴然たる事実です。今は良くても、いずれは「借金返済」がやってきます。
正しい借金であれば、借金を活用することによって時間を買うことができますし、そこから得た利益から借金返済ができます。ところが赤字の穴埋めの借金返済は、一体どこから支払うのでしょうか…?ということです。
大切なことなのであえて申し上げますが、本質的な財務を理解することなく、なんにも考えないで、ただ単純に手元にキャッシュさえ確保すれば万事解決…というわけではないということです。
厳しい言い方になってしまいますが、それでは、ティッシュ不足やマスク不足を懸念して買いだめしているのと、本質的には何ら変わりないからです。
「みんなが大変だって言ってるし…」「持っておけば、取りあえず安心…」というレベルでしかないからです。もちろん、不測の事態に備えて、キャッシュを厚くすること自体は否定しません。
ここで大切なのは、どんなことがあっても資金が枯渇しない「社長と会社にお金が残る仕組み」が自社の中にしっかりと根付いて、存在しているかどうかなのです。
誤解を恐れずに申し上げれば、もし、仮に、目先の資金繰りの不安が払しょくされたとしても、自社のビジネスが根本的に、お金が残らない、利益がでないものであれば、5年経っても、10年経っても、経営は苦しいままです。
仮に、目先の資金繰りが回っていたとしても、本当の意味での自社の経営課題が解決されていなければ、経営の質が上がることはありません。その結果、いずれ資金は尽き、銀行にも見限られてしまいます。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは、社長として、どんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。