高い山は低い山に惹かれない
人財戦略のコンサルティングをしていて時折感じることなのですが、自らの伸びしろをどう捉えるか、によって人財確保の可能性が大きく変わることをしっかりと意識できている経営者は、実は意外にも少数だったりします。会社がある程度の規模になると、人事や採用はスタッフに任せるようになることも関係しているのかもしれません。いずれにしろ多くの経営者が将来の事業損益や事業環境を見通すことに大変熱心なのに比べ、そうなったときにどういう人財が必要なのか、を考えている人が決して多くないのです。
会社が成長するにつれ、求められる人財は確実に変化・多様化します。会社の成長に合わせて人財を活用するためにはどんな工夫が求められるのでしょうか?
象徴的にお伝えできるのは、「人間は、自分より低い理想に魅力を感じない生き物である」という考え方で、欲求五段階説で知られるアブラハム・マズローの主張に近いものがあります。例えが適切ではないかもしれませんが、現役時代のウサイン・ボルト選手にとって、「100mを12秒台で走らなければならない」という水準の競争は、おそらく苦痛であったことと思います。逆に、そういう水準の競争に臨む経営者にとってみれば、人財としてのボルト選手は宝の持ち腐れに終わることが懸念されるわけです。でも、もし同じ会社の目指すところが東証一部上場であり、さらに世界トップシェアであったとしたら、事情はいささか違うものになってきます。
社員が自らの成長をどこまで見通せるかと考えたとき、会社の目指すものがそれより低ければ、やがて社員は会社の枠を飛び出し、自分の挑戦へと歩みを進めるに違いありません。むろん、社会にはさまざまな制約条件も存在するので、全員が全員そうするというわけではないかもしれませんが、基本的な考え方はどんな時代のどんな分野でも同じだろうと思います。
経営者の皆さん、将来の理想は高く持ちましょう。自らが高い山であろうとする努力なくして、優秀な人財の獲得は望めません。そうでなくても社員は日々の研鑽を積んで、自らの視点を少しずつですが確実に高みへと上げているのです。
経営者もまた、社員以上のスピードで成長し、高い理想を掲げること。そうすることでしか優秀な人財に対する求心力は働かないのです。そして、そうすることでしか優秀な人財が明日の成長を実現する絵姿は現実化できないことを、真剣にそして冷徹に受け入れる経営者にしか勝利は訪れないのです。
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