会議がダメな会社は、間違いなく人を育てるのが下手な会社。その理由とは?
H社長が、ご相談に来られたのは、一年前の梅雨に入ろうというこの時期です。
一通り状況を説明し終え、H社長は、一つ付け加えました。
「先生の専門ではないかもしれませんが、会議も何とかする必要があります。」
私は、軽く会議の状況を確認させていただき、お答えします。
「一年後には、解決しているはずです。」
そして、一つだけお願いしました。
「取り敢えず、明日からペーパーレスはやめてください。」
「人の育成に力を入れている」という言葉を出す社長がいます。
私は、この言葉を聞くと首をかしげることになります。何をするのかが、全く想像ができないのです。
人が育つためには、次の2つを満たしている必要があります。
「その本人が考えること」そして、「その本人が行動すること」。
それによって、その人は、ある分野のプロとしても、人間的にも育っていきます。
人が育つ会社では、「その本人が考え、その本人が行動する」ように仕向けています。正確に表現すれば、会社全体がそのようにできています。
管理者から主任、若手まで、すべての人が、何かしらの「考える」テーマを持っています。「在庫管理のシステムの入れ替えをすること」、「営業資料の作り変えを行うこと」、「新たな外注先を確保すること」。
そして、それについての行動を求められます。
「システム選定の方針書を作成する」、「参考になる資料を入手するために展示会に行く」、「外注先候補をリストアップし連絡をする」。
その結果、会社の仕組みは良くなります。誰かが、考え、行動することで、会社が成長するのです。そして、その時には、考え行動した人も育つことになります。
『考える』ということは、「新しいことに取り組む」ことを意味します。それが、新しいことであり、自分が経験したことがないことだからこそ、考える必要が発生するのです。
そして、『行動する』ということは、「日常の業務にないことに取り組む」ことを意味します。いまの自分の習慣に無い、ルーチンに無いからこそ、行動することが必要になります。それが、すでに日々やっていることであれば、「行動する」とは表現しないのです。
人を育てることが上手い会社では、この「考える」と「行動する」ということが、社員と共にあります。各社員は、受け持ちのルーチン業務をこなしながら、その隙間を見つけて取り組みます。そして、その一つをクリアすると、次が降ってきます。社員の仕事イコール「考えること」「行動すること」という正しい状態ができているのです。
次の状態であれば、当然、人が育つことはありません。
「他人が考える」、「他人が行動する」。
人が育たない会社では、多くの社員がこの状態にあります。自分は考える必要がありません。自分は行動する必要がありません。
「考える必要がない」とは、「新しいことに取り組んでいない」ことを意味します。また、「行動しない」とは、「習慣でその日を過ごすことができる」ことを意味します。昨日までやってきたことを、今日も、明日も、同じようにこなします。それで、許されるのです。
管理者も「新しい何かについて」考えていません。若手も、「習慣」で動いています。上から下まで、考えてもいなければ行動もしていないのです。それが、考えることも行動することも、全くなくても済んでしまう状態にあるのです。社員イコール「作業をする」という状態となっています。
自分に問いてみることが必要です。
「我社の社員は、何か新しいことのために考えているのだろうか。我社の社員は、日常を超える行動をしているのだろうか」。
この問いの答えが、NOであれば、社員が育つことはあり得ないのです。
自社は「人を育てるのが下手な会社」となります。
人を育てるためには、会社としての当たり前のサイクルが必要となります。それは、PDCAサイクルと呼ばれることもあります。
本業を成長発展させる取組みに、参画させることでしか人を育てることはできません。人が育つ会社では、「会社全体」を、人を育てるシステムだと考えています。
本業を維持する取組みに、参加させても人は育ちません。人が育たない会社では、「教育体系」が人を育てるシステムだと考えています。当然、そんなもので人が育つはずはありません。本業でないために、本気ではないのです。
本業を成長発展させるシステムの一部に、『会議』があります。会議が機能するからこそ、PDCAが回せるのです。そして、そこで人も育っていきます。
会議をみれば、その会社の『組織レベル』が解るものです。組織とは、「時間」を担うものです。その時間を管理するために、会議はあります。
その会議が上手く運営できている会社では、人が育っていきます。そこでは、参加者は「考える」、「行動する」ようにできているのです。
逆にダメな会議では、参加者が「考えない」、「行動しない」ようにできているのです。
冒頭のH社は、まさにその典型でした。
会議はペーパーレスです。資料は、プロジェクターで映し出しています。
人は、目で見て、考える生き物です。例えば、セミナーに参加すると講師の話を聞きながら、資料を見ます。そして、思いついたことをメモします。先回りや後戻りでペラペラと資料を見ます。参加したセミナーに資料が無ければ、これらができないために、大きなストレスになります。
ペーパーレスの会議とは、「資料の無いセミナー」と同じなのです。人が話しているものを、耳だけで理解することになります。アイディアや確認することを、自分のノートにメモすることになります。資料を先回りして読み込むことも、見返すこともできません。
当然、理解も低いものになります。それが、未熟な社員であれば、なおさらです。理解できているのは、社長だけかもしれません。当然、参加者は質問もできなくなります。
その結果、社員は会議の間、考えていない状態に置かれます。ペーパーレスにすれば、集中力は無くなり、脳の活性度は下がります。そして、意見やアイディアを言うという行動を抑え込みます。結果、成長する機会を奪っているのです。
次の状態も、人が育つ機会を奪う典型の会議です。
・司会をベテランがやっている
司会者には、能力が必要になります。専門用語はもちろんのこと、会社の方針や経緯をある程度解っておく必要があります。また、場を取り仕切る能力や、期限や次の行動を明確にするというマネジメントの基本も必要になります。
司会者とは、まさに人を育てるポジションであり、次の管理者を育てる登竜門なのです。その会議の司会者を、社長やナンバー2がやっています。
・各部門から資料がない、発表もしない。
会議では、部門間で連携するために情報共有がされます。そのため、各部は、資料を配り説明をします。営業部からは「来月の展示会とその後の営業計画」について説明があります。制作部からは、「システム入れ替えとそれに伴う業務スケジュール調整」の協力依頼があります。
これらが無いということは、各部門が仕組みづくり、すなわち、事業を成長発展させる取組みをしていないことを意味します。考えても行動もしていないのです。会議に参加している管理者がその状態です。その部門では、社員が作業員化していることが予測できます。
・期限や次の行動を明確にしない。
期限を明確にすると、人の脳は、初めて動くようになります。
「来月の10日までに展示会の振り返りの報告書をください。」と依頼されると、「分量は1、2枚でいいですか。」、「提出はメールでいいですか。」となります。明確な依頼が、人の「考える」「行動する」という行動を引き出します。
これが唯の「展示会の振り返りの報告書をください。」では、「はい」と答えて終わりになります。社員は、会議室を出るとすぐに、自分の作業に戻ることになります。そして、提出されずに忘れ去られることになります。
組織の当たり前の機能がない会社では、会議がまともに運営できていません。
H社は、まさにその典型でした。そして、「人が育たない会社」でした。
会議だけをどうにかしてもダメなのです。組織の当たり前の機能を整備する必要があります。逆を言えば、組織ができてくれば会議は整ってくるものなのです。
あれから一年が経ちます。予測どおりH社の会議が正しく運営されるようになりました。H社長は、嬉しそうに言われます。
「社員が活発に意見を出してくれるようになりました。私ばかりが話していた会議が嘘のようです。」
人を育てるために何か特別なことをする、と考えるのは、全くの間違いです。
何もいりません、何もしてはいけません。
仕組みが成長する時に、人が成長します。
人が成長する時に、仕組みが成長します。
仕組みと人は、両輪なのです。どちらかだけの成長はあり得ないのです。
年商数億までは、社長が成長し、社長が成果を出せば、回せました。
年商10億に進むためには、社員が成長し、社員が成果を出す必要があります。
社長としての、成功の定義が変わります。
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