社長がアフターコロナにやるべき2つの大きな課題―何をなすべきか明確になってきた―
今回の新型コロナウイルス禍の渦中において、極めてハッキリしてきたことがあります。
それはアフターコロナにおいて何をなすべきか、ということです。
なすべきことは、大きく分けて2つの課題に集約されます。
まず1つ目は、既存の仕事の合理化です。
生産性の向上と言ってもいいかも知れません。これまでやたら人手をかけたり、紙ベースで処理したり、何回も転記やチェックを繰り返したりしていた作業的な業務を効率化する必要があります。こういった形式的な仕事や処理業務は、現代的なテクノロジーでかなりの部分が合理化できるはずです。実際、日本の場合、慢性的な人手不足が大きな社会問題になっていますが、このことはアフターコロナにおいても変わることはありません。ここに関して早めに手を打っておかなければ、次のスタートダッシュができないことになります。
既存の仕事の合理化や生産性の向上という試みは、コストの削減につながります。
それは消費作業時間の短縮と投下エネルギーの圧縮という形で実現するのです。今まで何日もかかってアナログ的作業で処理していたものを、新しいテクノロジーを駆使して数時間で済ますことができれば、大きなコスト削減になります。
ただここで大事な考え方は、この試みを「人件費の削減」に結び付けないことです。
先述しましたように、日本は慢性的な人手不足に陥っていますが、それは世界的に見たときの人件費の安さにも原因があるからです。
優れた人材を高い報酬で登用して、既存業務の効率化、省力化を図るというのが、アフターコロナにおいて挑戦すべき大きな課題なのです。
ここでは、これまでのような「労働分配率」の高さを悪とする価値観をチェンジする必要があります。
2つ目の課題は、いかに付加価値の高い新しい仕事を生み出すか、ということです。
前述したように、既存の業務の効率化が実現できた場合、そこには、時間や労働力に余力が生まれるはずです。その余力は、新しい付加価値業務の開発に振り向けねばなりません。これまで大小合わせて、日本の多くの企業は新しい付加価値の開発にエネルギーを振り向けてきませんでした。かつて、ソニーやホンダという戦後の新興企業やその創立者が、世界の注目と尊敬を集めたような現象は今の日本では起こっていません。それは現在の日本企業が、目を見張るような新しい付加価値を生み出せていないからにほかなりません。
1つ目の課題が合理化省力化によるコストの削減だったのに対して、付加価値の創出という課題は「売上単価の増大」ということになります。
日本は長い間デフレ経済の中にどっぷりと浸かっていたために、安いことが善であり、高価格を排除するという傾向がありました。このパラダイムをチェンジしなければ、次の時代の成功は手にすることができないといえましょう。
かつての「価格破壊」という言葉を、今度は逆手にとって「逆価格破壊」を実現しなければならないのです。
希少かつ高品質、高付加価値、高単価を目指すべきです。高付加価値の商材やサービスを開発し、それを高単価の売上に結び付けていく、というビジネスモデルが実現できたときに、日本にも新しい経済社会が出現するのではないでしょうか。
既存の仕事の合理化、生産性の向上と、新しい付加価値の高い商材やサービスの開発という上記の2つの課題は、大企業中小企業を問わず、日本のビジネス社会が取り組むべき大きなテーマなのです。
何故そんなことが、目指すべき課題になったのでしょうか。それは長い間、かつての成功体験の上にあぐらをかいてきたからにほかなりません。バブル崩壊前、その経済力が世界を席巻できた頃の大きな資産を食いつぶしながら、日本はここまで来ました。とはいえ、そんな状況にもほころびが目立ち始めてもうだいぶ経ちます。それでもここまで日本企業はなかなか変わることができませんでした。
しかし、今回の新型コロナウイルス禍の経済環境下においては、もうそうしてもいられないことがハッキリするのではないかと思います。日本のビジネス社会は、ここでなんとしても体質改善を図らなければ、今後世界と伍して生き残っていくことはできそうもありません。
いずれにしても、アフターコロナにおいて、今までと同じようなことを繰り返していたのでは立ちいかなくなることは明白です。今回提言させていただいた2つのテーマは、今後のビジネス社会において間違いなく必要になるものです。多くの経営者の皆さんが、勇気と割切りと覚悟を持ってチャレンジされることを望みます。
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