次世代経営者こそ決算書を経営に活かすべき理由
「決算書なんて、たいしたことないですよ。私は決算書をきちんと理解出来ていますから、ウチの会社は大丈夫です。」と自慢気におっしゃる経営者の方に、時折お目にかかることがあります。もしそれが真実なら、とても素晴らしいことです。
ですが、あえてわざわざそのようなことをおっしゃる社長さんに限って、実は、決算書を「読む」ということと、「読みこなす」という意味の違いを、認識していないケースが多いものです。
例えば、「車を作る能力」と「車を運転する能力」、これは明らかに求められてくる能力が違うということが、大人であれば瞬間的にわかるはずです。つまり、わかりやすく例えるならば、車を作る能力と車を運転する能力が異なるのと同じように、「決算書を作る能力」と「決算書を読む能力」も、全くの別モノです。
そして、さらにいえば、「決算書を読む能力」も、ただ単に決算書の数字を上から順番に読んでいけば良いというわけではなく、そこから得られる情報をもって、具体的な経営戦略に活かしていくことが重要なのです。
つまり、経営者にとって、決算書は、過去の数字の羅列として捉えるのではなく、その決算書から「将来」に向けてどうゆう施策を打っていくべきか、その具体的なアクションについての「叫び声」だったり、「メッセージ」が聞こえるようになってきて、初めて「決算書が読める」という状態になるのです。
登山家は、地図を見て、天候や体調などを考慮しながら山頂までの登山ルートを決めます。船長も、海図を見て、海の状態や燃料の状況を勘案しつつ、目的地までの海路を判断します。そして、医者も、レントゲンを見て患部の状況を判断し、患者にあった治療法を考えます。
経営者も、自社の決算書を見て、もっというと、自社の決算書上から発せられるありのままの姿からの、「叫び声」だったり、「メッセージ」を感じ取った上で、自社が将来目指すべき方向に進むための、いわば、経営の舵取りをするにあたってのコンパスとして決算書を活用すべきなのです。
では、決算書からは、具体的にどのような声が聞こえてくるものなのでしょうか?
例えば、決算書上にやたらと現金が多く計上されている場合には、通常であればこのようなメッセージが発せられてくるはずです。「なぜ現金がこんなに多く計上されているのか?」「この現金残高は適正なのか?」「帳簿上の残高と実際の残高は一致しているのか?」「社長の個人的なものが混同されているのではないか?」「そもそも管理方法は適正なのか?」「現金の存在自体、管理の手間が増えるが、現金は本当に必要なのか?立替方式に変えてしまっても良いのではないか?」さらには、「そんなにたくさんあるのであれば、定期預金などで少しでも利息を稼がせたほうがいいのではないか?」あるいは、「新たな投資に回したほうがいいのではないか?」などのメッセージが聞こえてくるものです。
優れた経営者は、これらの一つ一つのメッセージや叫び声に対して、しっかりと応えていきます。経営の質向上にあたっては、その頻度こそが重要なのです。よく、目標設定などの場面においては、「全ての項目を数値化せよ」などと言われます。逆にいうと、数値化されない目標というものは、最終的なありたい姿に向けてのマイルストーンとしては非常に使いづらいものであり、逆を返すと達成しづらいのです。数値化して、測定して、PDCAサイクルを回すことが、目標達成の近道である・・・というのは、歴然たる事実です。
ですから、決算書というのは、年に1回税務署に提出するため、あるいは、金融機関に近況報告するためだけに作成するというのは、本当にもったいないことなのです。一番身近で、自社の経営の質を向上させるためのメッセージがふんだんに織り込まれている、いわばオリジナルの自社が向かうべき道筋の基礎となるものを、徹底的に使いこなしていない会社は、まさに宝の持ちぐされといった状況なのです。
あなたの会社は、真に決算書を活用できていますか?
会社経営の質向上のために、具体的な行動を起せていますか?
ダイヤモンド財務コンサルタント
舘野 愛
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。