社長、圧倒的な世界観を持っていますか―他の追随を許さない視点や想像力が必要なわけ―
経営者(はぼ社長ということになりますが・・)に必要な資質は何だと思いますか。知識?専門性?経験?リーダーシップ?人心掌握力?・・・いろいろな言い方はできると思います。そしてどれも必要な資質です。
私はここで、もうひとつの重要な切り口として「世界観」を提案したいのです。
「世界観」?・・リーダーとして何故そんなものが必要なんだ?と、お思いのことでしょう。先述の「知識」や「専門性」が必要なのは、社長であれば当たり前のことです。
ではそれが、会社の誰よりも突出していなければならないのでしょうか。もちろん、そうであることに越したことはないのですが、これだけ複雑化した現代社会において、自分の事業が取り扱っているすべての分野において、リーダーである自分の知識や専門性が突出している、ということは難しいのではないでしょうか。企画は企画、製造は製造、販売は販売、会計は会計の専門家がいて初めて総合的な企業は成り立ちます。そのすべてにおいて、経営トップが細部まで精通している、というのは事実上不可能です。
ただ、中小企業の場合、規模がそこまで大きくないので、せめて自社に関する知識や専門性くらいは・・と考えるのは妥当なことです。
むしろ、中小企業で心配なのは、それ(知識や専門性)さえあればいいだろう、という姿勢です。
残念ながらリーダー(社長)になれば「それだけ」というわけにはいきません。特に、職人的な零細企業はともかくとして、多少組織的な形ができてきつつある中小から中堅企業においては、それ(知識や専門性)だけでは確実に足りないことになります。
逆に考えれば、知識や専門性は経営者だけでなく、社員も含めてすべての関係者が常に磨き続けねばなりません。そうすると、先述のようにパーツパーツにおいては、経営者を凌駕する知識や専門性を有する社員も出てくることになりますし、それが当然の姿とも言えます。
つまり、いつまでもそこ(知識や専門性)で勝負していては、逆に組織はリードしにくくなるのです。
それでは、リーダーはいかなる資質を持って、社員を凌駕しなくてはならないのでしょうか。それが、私が冒頭に述べた「世界観」なのです。もちろんこれには「ビジネス上の」という条件が付きます。プライベートや趣味の範囲の世界観ではありません。それはそれで個人的に持っていればいいことです。
それでは私のいう「世界観」というのはいかなるものなのでしょうか。
それは、現在の事業の「その先にあるもの」ということになります。
経営者が自分や自分の事業の目指すべき姿、あるべき未来に関して、どれほどの想像力を駆使して考察しているのか、ということが重要なのです。
経営者が、これができていれば、通常社員の追随を許すことはありません。
また、経営者はそれだけの「世界観」を持っているべきなのです。それは、ここを考えるというポジションにおいて、社員とは圧倒的に違う立ち位置にいるからです。
これは普段私が申し上げている「物事を俯瞰的に見る」ということに通じています。
経営者が、常に「物事を俯瞰的に見る」ということに気をつけていれば、あるべき未来といった「世界観」は身についているはずです。
かなり明確に、か、まだまだ曖昧かは別として、リーダーが持っているべき「世界観」というのはなくてはならないものです。そしてそれは、繰り返しなりますが、社員のそれとは圧倒的にクオリティーの違うものでなければなりません。
社員の想像の追随を許さないくらいの異次元レベルが必要なのです。
おそらくこのことを明確に意識している経営者は少数派です。というのは、先述の「知識や専門性レベルで勝っていなければ・・」という段階でとどまっている経営者がまだ多いからです。
例えば私は、ほぼ3,000文字以上あるこのコラムを毎週書きあげたらすぐに、会社の一番若い社員二人に、私が読み上げる形で聞いてもらっています。これは、まさに私の「世界観」を知ってもらいたいのと、よくわからないところがあったら指摘してもらいたいからです。彼女たち(ちなみに二人とも女性)には、いささか迷惑な話かもしれませんが、無理を承知でお願いしているのです。
このコラムを書き上げる際に、私はほとんど参考文献というものを用いません。自分の頭の中だけで組み立てた「世界観」を表現しているだけです。これは、普段、圧倒的な想像力を働かして自らの事業に向き合っていなければできないことでもあります。しかも、かなり俯瞰的に事業の概要や行くべき先について観るクセをつけておかなければできることではありません。
経営者はすべからく、圧倒的な想像力を働かせ俯瞰的に物事を観ることで、しかるべき「世界観」を持つべきだと私は思います。
ただ、これには一つ条件があります。
それはその「世界観」が、みんなの共感を得られるものであるべきということです。
ここで、少し不思議に思われるのではないでしょうか。圧倒的な想像力を働かせ、社員の追随を許さないような異次元レベルの「世界観」に対して、同じ組織の構成員たる社員のみんなが「共感」してくれるだろうか、ということです。
ここに関しては、私に一つの仮説があります。
それは、「事業の行く末を真剣に俯瞰的に考察し、前向きにそのあるべき姿を想像して到達した「世界観」には、細かいところまではよくわからなかったとしても、「共感」を覚えない、ということはないだろう。」ということです。
それが極めて利己的或いは悲観的なものでなく、前向きで希望のある未来を描いている限りは、その「世界観」に特に異を唱える理由が見つからないからです。少し楽観的に過ぎるかも知れませんが、リーダーが自らの組織や業界、或いは地域とか国家というものの未来に希望を抱いていなければ、そこで働く構成員としての社員も前向きにはがんばれないと思います。
そして、これまた少し矛盾しているようですが、こういった「世界観」を手にするために、最も効率がいいのは「情報発信(アウトプット)」することだということです。
これに対して「いやいや、そんな圧倒的な「世界観」を手に入れるためにはインプットこそ大事なんじゃないの?常にインプットして想像力を磨くという作業を繰り返さなければ得られないでしょう。」という意見が聞こえてきそうです。もちろんインプットはかなり大事ですが、「世界観」を手にするためにはそれだけでは足りません。
インプットした情報や知識を常に自分の中で咀嚼し、構成し直し、新たに新しい「世界観」を創造する必要があるのです。
お分かりになるでしょうか。インプットを繰り返し、それらの情報や知識をもとに想像力を働かせ、自らのオリジナルな「世界観」を構築するまでの創造的な作業が必要なのです。ここの世界は、普段ルーチンで忙しい社員の立場ではなかなかできることではありません。もし、社員の中にこのスケールで物事を考える人材がいたらその人間はやがてリーダーに育っていく素材かも知れません。
会社に後継者がいるのであれば、リーダーとしてのスケールを有した「世界観」が持てるように指導していくのが、現役リーダーの役割ともいえるのです。
しかし残念ながら、先述のようにこういう発想で自らのポジションや後継者の育成に向き合っている経営者は少数派です。
リーダーにとって「世界観」の構築が極めて重要なこと、そのためには「情報発信(アウトプット)」が相当に有効であること、といった2つのポイントについて説明してきましたが、納得いただけたでしょうか。
たぶん、この切り口でリーダーとしての資質について解説するのは私だけではないかと思います。それは何といっても時代が、要請しているはずの「情報発信(アウトプット)」の重要性が、まだ十分に理解されていないからにほかなりません。
今回お伝えした「世界観」の構築においてだけでなく、様々な場面において「情報発信(アウトプット)」は必要であり、その効果の大きさには計り知れないものがあります。
経営者の皆さんが「情報発信(アウトプット)」を戦略的に自らの事業に取り入れていただくことを願う次第です。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。