昭和を脱ぎ捨てるエンプロイーサクセス
令和も2年となり、昭和も遠くなりにけりと思われている方、多いと思います。昭和から平成に切り替わったのが1989年で、今年が2020年ですから30年以上の時間がたっています。それでもまだ昭和の香りがそこはかとなく残っているという職場、あるのではないかと思います。
昭和の職場で象徴的に思い出すのは、あるワンマン社長が率いる中小企業の受付の場面。当時まだいた受付担当の若い女性社員に対するボディタッチを日課としていた偉い方が、これは親密さを表すコミュニケーションの一環だと仰っていたことです。触られた女性はさほど嫌な顔をせず、したがって敢えて声を上げることもせず、たとえ声を上げたところで何か状況が変わるとも思えませんでした。当時はセクハラという言葉こそありましたが、冗談の中に混ぜられてさほど大仰には扱われませんでした。
ハラスメントという言葉が登場して久しく、防御策もあちこちで目にすることができるようになりました。
多くの場合、ハラスメントはそれをしている側がそうであると気づいていないケースが多く、先の偉い方のように親密さの表現だとか、部下指導の一環だとかいう説明のなかで何となくうやむやになっていることが多かったのです。
なぜ昭和の時代はそれが許されていたのでしょうか。理由として、職場にいる人たちが比較的同質化していたから、と言われています。24時間闘い続けるモーレツサラリーマンか、腰掛けで働く女性か。働くことに対する価値観や働き方そのものもパターンがだいたい定まっていて、互いによく知る大家族的な考えがメジャーであれば、ほぼその考え方に順応するという人員構成でした。
ビジネスのスピードが格段に速くなり、仕事や会社に対する考え方も多様な人たちが同じ職場に同居する令和の時代には、昭和的な人材の遇し方、人間関係のつくり方ではざっくりしすぎの感があります。
たとえば「働く女性が増えた」という言葉の背後には、「結婚しないで働く女性」もいるし「子供の面倒を見てくれる親が近隣にいないので毎日保育園の送り迎えをしながら働く女性」もいる。逆に「ご主人が育児に協力的で、いち早く育休から復帰してバリバリ働く女性」という人たちもいて、良くも悪くも一層の細分化が進んでいます。一律の管理で良しとする昭和的な問題解決の方法では、追いつかなくなっているのです。
問題は、こういう風に状況が変わっているにもかかわらず、その主体者である会社や社員の意識がいまだ昭和的余韻を残しつつあるときに発生します。
それは社内管理だけではなく、顧客に対する接し方でも同じことが言えます。インターネットで検索すればほとんどの情報は見つけることができて、SNSで誰もが情報発信者になれる現在。顧客満足や顧客ロイヤリティという言葉を超えて、カスタマーサクセス(顧客の成功)といった概念が登場しているのもその表れと感じられます。
であればエンプロイーサクセスという言葉が出てきてもおかしくはありません。会社は働く人の人生の成功をサポートするからこそ、社員は会社に対してロイヤリティを持ち、会社の目的に向けて全力を尽くすことができるという考え方です。
昭和から現在にいたるまで多くの会社で経営資源の一つとして位置付けられてきた人材。その成功が会社の目的の一つとなるとしたら、それは昭和的な発想を超えた新しい会社のあり方となります。そうした会社を守るために社員が一丸となるとしたら、新しい家族経営のあり方を示唆する可能性もあるはずです。
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