会社を上昇させるために必要な「あるもの」
「これはやりたいんですよ。難しくても今できるようにしておけば、よそはできませんから……」―― 技術的に難しい案件に取り組んでおられる、ある製造業の社長の言葉です。
技術的に難しく、今までだったら断っていた案件であるが、これからはこういったものを積極的に取り込んで、自社の技術力を一段底上げしたいとのこと。
それを聞いて私は、「よし、この会社も「あるべきもの」があるな」と胸をなでおろしました……。
「法人」とはよく言ったもので、会社も「人」と同じような性質があります。たとえば人であれば、大きく見て人生が「上がり調子な人」と「下がり調子な人」に大別できると思います。これは会社も同じで、今後良い意味でいろんな展開がありそうな会社と、現状のままではじり貧になっていくであろう会社のパターンに分かれます。
会社が上記の2パターンのどちらに当てはまるかは、その会社の社長の話を聞くと大体わかります。食事をしているときとか、車で送っていただいているときなどの何気ない会話の中で社長の口から出てくる発言が、上記2パターンで違ってくるのです。
前者の「上がり調子の会社」であれば、社長の発言は自然と「未来」のことが含まれています。〇〇をできるようになりたいとか、〇〇の分野に進出したい、〇〇の技術を獲得したい……というように、いまはできていないが、近い将来はできるようになりたいということが心にあり、自然とその思いが会話で出てくるのです。
しかもそれは、「いつかできたらいいなあ~~」というようなふわっとしたものではなく、「できるだけ早くやりたい。やらないとまずい!」というような、いい意味で切迫感をもった思いです。他の役員や社員からすると「社長はせっかちだなー」といった感想になるのですが、社長からすると「早くやったもん勝ちだ!」と、勝負のポイントを感じているということです。
少し話はずれますが、この「せっかち」というのは成功する社長に共通してみられる傾向です。結果を出す経営者というのは事業の展開が先々まで見えていますから、早くそこに行きたくなるのです。我々のようなコンサルタントを起用する社長もある意味このタイプが多く、「外部の力を使って早くそれを実現させたい!」と、時間を買う感覚で外部の力をうまく利用されるということです。
一方、後者の「下がり調子の会社」の社長から出てくる言葉は未来ではなく「現在」の話が中心になります。あれができていない、これができていないと、現状の問題点ばかりが気になるという状態です。
これは、下がり調子の会社だから現状の問題が多いと思われるかもしれませんが、多くの場合これは逆で、現状の問題にフォーカスするから下がり調子になるというのが実態です。
この点は何度か過去のコラムでもお伝えしていることではありますが、目の前の問題を解決していけば強い会社になるわけでは全くありません。いろんなルールや仕組みを整備したり、報連相を徹底してコミュニケーションを改善したり、研修講師を呼んで社員に聞かせたりしたところで、会社の強みづくりには全くつながらない、というケースがほとんどと言えます。
もちろん現状の問題を放っておいていいのかというと、そうではありませんが、肝心なことは、現状の問題の解決に手をつける前に、会社が目指すべき「未来」の姿が見えているかどうかです。ここが見えているかどうかで「現状の問題」についての認識も大きく変わってくるということになります。
つまり、『目指すべき「未来」にたどり着くためにやらなければいけないこと』―― これが「いま取り組むべき課題」であり、それ以外のことはたとえ問題に見えたとしても放っておけばいいのです。
そして、目指すべき未来の実現のために課題に取り組んでいる会社は、必ずといっていいほど「難しい課題」にぶつかります。これは技術的な能力であったり、オペレーションの効率性や正確性であったりと、内容は様々ですが、とにかく「難しいこと」が目の前に立ちはだかります。
この「難しいことに挑戦する風土」こそが、冒頭でお伝えした「あるべきもの」です。経営が上向いている会社には必ずこの風土があります。「未来」が見えているために、目の前に立ちはだかる困難にもある種の快楽を伴いながらチャレンジしていきます。
これが逆に、「未来」に考えがおよばない「現状思考」の会社では、自社に立ちはだかる「難しいこと」は単なる痛みにして見えませんから、それを避ける方向で意思決定がなされます。困難をうまく避けられたことに快楽を見出すのです。
経営にとってこの差は甚大です。困難に挑戦する風土のある会社は、現場での苦労は大きくなりますが、結果として大きな果実を掴み、社員は報われます。一方で、目の前の困難を避ける風土の会社は、一見現場は楽に感じますが、会社がいつまでたっても次のステージに行けませんから、長い目で見たら結果として大きな困難に見舞われることになるのです。
そして何より問題なのは、この「難しいことにチャレンジする風土」というのは、風土と言うぐらいですから、急にやろうと思ってもできるものではないということです。「うちもやるときはやる」と言ったところで、困難を避ける思考が社員に染みついたのでは、社長がいくら発破をかけても社員は動きません。
人の気力や体力が普段から鍛えていないと衰えるのと同じで、組織の気力や体力も急に出そうとしても無理なのです。常に上を目指して自分に負荷をかけていかないと、いざというときにまったく力が出ないと言うことになります。
事実、当社のクライアントでも経営が長期的にうまくいっているところは、社長が「うちは顧客からの要望は断らずに何でもやってきた」と言われるところが非常に多いです。普通はやらないようなことも、お客様のために背伸びをしてチャレンジする―― この姿勢が会社の成長につながっているのです。
御社には「難しいこと」に挑戦する風土は根付いていますか?
「いまできること」に終始して、会社の体力をそいでいませんか?
御社の挑戦を待っているお客様の期待に応えていきましょう。
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