H社、BtoB事業を伸ばすために、優秀な営業担当のノウハウをマニュアル化する・・・は、間違いの理由とは?その前にやるべきことがある。
H社は、3つの事業を持っています。
1つは、ネットショップ事業です。この1年で倍にできました。もう1つは、メーカー事業です。展示会から取引先を順調に開拓できています。
3つ目が、BtoB事業です。自社の商品を、直接企業に販売しています。このBtoB事業だけが、低迷を続けています。
H社長は言いました。「営業担当のなかで、一人成果を出している社員がいます。彼のやり方をマニュアル化し、それを共有することで・・・」
矢田の表情を観て、H社長は言いました。「やっぱり間違っていますか。」
年商 = 得意単価 × 件数
になります。
誰かの課題や欲求を満たすために、自社の独自のサービスが形になったものが『商品』です。その出来上がった商品を、売りまくるのが『事業』となります。
そして、その商品には、価格が付けられます。その価格のことを『得意単価』と言います。
- システム会社では、ある業界向けのパッケージソフトを展開しています。機器と現場設置を合わせると、500万円ほどになります。
- 建築塗装会社では、大型マンションやビルの塗り替えを得意としています。工事の多くが4千万円から7千万円の金額です。
- スポーツジム会社では、一つのパッケージの店舗を増やしています。一店舗当たりの年間売上は8千万円です。
この得意単価を一年で何件こなすかで、年商が決まります。来期の計画を立てる際には、「何件やるか」を決めることになります。そこに単価を掛ければ、来期の目標売上が決まります。
事業計画には、必ず『件数』が入ることになります。販売件数、工事件数、店舗件数。来々期の目標も件数になります。
その件数から、その量をこなすために何が必要かを考えることができます。
「サーバーの容量が、足りない」、「施工班を3つ増やそう」、「トレーナーを採用し短期で戦力化する仕組みが必要」。具体的な件数が、具体的な課題と目標を連想させます。
社長自身も社員も、「売上げ前年対比20%アップ」からは、連想が起きません。
それを「今期100件の実績、来期は120件に増やそう」とします。すると、連想が起きます。社員の「無理です」という反応は、具体的なイメージを持てているからこそのものです。
得意単価を決める。そして、目標とする件数を決める。
これが、正しい『年商』の決め方になります。
得意単価を明確に持たないと、単価にバラツキを生むことになります。そして、そのバラツキが、多くの問題を引き起こすことになります。
- 3千万円を越える大物のシステム開発の仕事がきました。その一方で、月数万円の社内RANの保守が残っています。
- 7千万円のゼネコンからの仕事をやりながら、個人の家屋の塗り替えもします。その案件は、1週間の工事で120万円ほどです。
- 店舗の仕様がバラバラです。駅前にもあれば、郊外にもあります。その大きさは、60坪もあれば、200坪を超える店もあります。各店舗の年商もバラバラです。
単価にバラツキがあると言うことは、商品が絞れていないことを意味します。
お客様の種類も沢山あり、その課題や欲求はバラバラです。お客様の属性や規模も色々です。それらにすべて応えることで、サービスも沢山になっています。
そして、次の状態に陥っています。
・社長と一部の優秀な社員が売上げの多くを上げています。
・人に仕事が付いています。一人休むとその業務は止まることになります。
・仕組化が進みません。マニュアルづくりも進みません。
・新入社員にやらせられる仕事がありません。戦力化に時間がかかります。
沢山の種類の顧客、沢山のサービスが、社内の混乱を引き起こしています。そして、忙しいだけで、儲かっていないのです。
「一人の顧客、一つのサービス」を決めることです。
それを、『お客様に見える形』にするのです。そして、それに価格をつけます。
それが、『商品』であり、『得意単価』です。
そして、その唯一つの自信のある商品を売りまくります。
その売りまくるための仕組みを作ります。その仕組みのことを、『マーケティング』と言います。見込客を集め、販売し、提供する。その結果、顧客を満足させ、売上げを得ます。
その出来上がった『マーケティング』の仕組みを、馬鹿みたいに繰り返します。すると『件数』が伸びてきます。
『商品』とは、『得意単価』です。
『件数』とは、『マーケティング』です。
その積が、『年商』です。
更に、その『商品』を良くしていきます。更に『マーケティング』を改善していきます。その繰り返しにより、事業は更に強くなります。そして、儲ける効率が更に良くなります。
会社としての、ノウハウ、強さが積み上がっていきます。
自社に、『商品』も『マーケティング』もなければ、何も積み上がらなくなります。そして、社員も活躍できなくなります。そのスタートが、『得意単価』を決めることなのです。
得意単価を持たない会社では、何も積み上がらないことになります。
冒頭のH社の改革は、順調に進んでいます。
ネットショップ事業を変え、メーカー事業を変え、業績も順調に伸びています。
残すは、BtoB事業です。
H社長、「成果を出している営業担当のノウハウを、他の営業担当にも移せれば・・・」と考えていました。
私は、お答えします。「考え方は合っています。しかし、順番が違います。」
H社のBtoB事業には、『得意単価』すなわち『商品』がありません。
いままでの営業スタイルは、「お客様からヒアリングして、提案する」というものでした。お客様から「こんなことは、できますか?」と訊かれれば、「イエス、オフコース」と答え、必死で調達先を探します。提案書もその都度つくります。
この事業の売りは、『対応力』、『提案力』、『企画力』だったのです。これは、クリエイティヴを意味します。クリエイティヴがあるため、並みの社員では出来ないようになっているのです。
H社長は、早速、『商品づくり』に手を付けました。その優秀な営業担当と一緒に、過去の案件から商品化できそうなものを探ります。候補の一つひとつを、『年商10億の条件』から検討します。
4か月後には、自信を持って顧客に提供できる商品が出来上がりました。
それに価格をつけます。「いち案件、400万円」
そして、マーケティングの仕組みづくりに手を付けます。
新規の集客は、展示会としました。その展示会から商談に移るための施策を準備します。そして、「1回目の商談では何をするのか」、「2回目ではどのような資料を使うのか」を設計しました。
設計が終わると、マニュアルづくりです。「アポイントの取り方」、「クロージングの仕方」など、優秀な営業担当のノウハウが満載です。そして、勉強会を続けました。
商品をつくり、マーケティングの仕組みをつくり、それから、マニュアルをつくり、訓練です。この順番なのです。商品がないうちに、マニュアルをつくっても、訓練をしても、成果はでないのです。
そして、数か月後に展示会に参加しました。この事業での、展示会は初です。
成果として15件の商談を得ることができました。そして、その内の8件が契約まで至りました。その総額は2500万円です。
H社長は言われます。「1件当たりの単価は、想定より低く300万円になりました。まずは、これを得意単価とします。そして、この一年間は、数を増やし規模を大きくすることに注力します。」
私は、少しだけ進言させていただきました。
「営業担当は、いままでの癖で、すぐに拡げようとします。サービスを増やし、得意単価を崩さないようにお願いしますね。」
H社長は、笑います。「それ、本当に注意が必要ですね。」
そして、一年後の展示会では、成約20件、総額6000万円の受注を獲得することになりました。
我々は、営業担当を育てたいわけではありません。
営業担当の『数』を増やしたいのです。成果の出せる営業担当の数を増やしたいのです。
我々は、商品を増やしたいわけではありません。
販売する商品の『数』をどんどん増やしたいのです。得意単価の量産です。
事業とは、『数』です。『数』の量産であり、展開なのです。
素晴らしい商品を、どんどん顧客に届け、社会を良くしていく。
それが事業です。
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