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令和時代に最も優先される指標とは

SPECIAL

人事制度コンサルタント

株式会社ENTOENTO

代表取締役 

会社を成長させる人事制度づくりで、700社以上の指導実績を誇る日本屈指のコンサルタント。日本の過去50年間の人事制度のつくり方とは異なり、経営者の評価と賃金の決め方を可視化してつくる画期的な人事制度は経営者から大きな支持を得ている。

「松本先生、最低賃金は上がりつづけ、働き方改革を迫られ、同一労働同一賃金と言われ……まず何から取り組めばいいでしょうか」

先日、実際にあったご相談です。口に出さなくても、一抹の不安を覚えている中小企業の経営者は多いことでしょう。

この40年間、経営者の関心事は大きく変わってきました。私が社会に出た40数年前の日本では、何よりも売上重視でした。「売上高を上げろ!」と言って、誰もが売上を向上させることに邁進していました。売上が上がれば間違いなく利益がついてくる。そんな時代でした。安定経済成長時代です。

ところがその後、売上高が上がっても必ずしも利益が残らない時代になり、売上高よりも利益を大事にする傾向が強くなりました。

そして今、また大きな変革が訪れています。利益よりも、ある指標が大事にされる時代になったのです。その指標が生産性です。

この変革に最も影響を与えたのは、日本の少子高齢化に伴う、労働人口の減少です。労働人口が減ることによって、人材不足倒産が話題になるようになりました。これからの日本はますます労働力不足になります。その中で、少ない労働力、少ない労働時間でたくさんの利益を残す会社しか存続することはできなくなりました。

つまり、まず取り組むべきは、「生産性向上」です。

利益がどんなに多くても、その利益を生み出すのに多くの時間を掛けている会社は、この令和の時代を生き残ることができません。生産性を最も高い評価とする考え方に変革できるかどうか、大きなターニングポイントを迎えています。

今、経営者や経営幹部をやっている50代以上の方は、売上を最大に、そして利益を最大に、という考え方で仕事をしてきたために、新時代の経営指標である生産性を最も重視する考え方になかなか切り替えられません。ガムシャラに頑張ることが当たり前だったのですから、急に「変われ」と言われても難しいと思われるでしょう。しかし悠長に構えている余裕はありません。最低賃金は上がりつづけ、働き方改革への取り組みは待ったなしです。

そんな経営者を悩ませている先ほどの全ての問題を解決することが、ある1つの取り組みで可能です。それが「生産性向上」です。ならば今すぐに取り組まなければなりません。

これからは長時間、体力の限界まで働かない時代、ガムシャラに働くことを必ずしもよしとされない時代です。よく考え、その知恵をみんなで共有し、短い時間でいかに高い成果を上げるかを考えることが重要になるでしょう。

生産性の高い会社は、例外なく利益が多いのです。実は、これは昔から変わらない事実です。生産性が高く利益が多い会社は、特に、社員1人当たり、もう少し具体的に説明すると、社員1人が労働時間1時間当たりに稼ぐ利益が最大化しているのです。この状態になっていなければ、今後社員に残業代を払うことはどんどん難しくなっていくでしょう。

ましてや今後は60時間を超える残業時間に対して、2023年より中小企業も1.25倍ではなく1.5倍、つまり50%アップの残業代を払う時代がやってきます。もうすぐです。このことに対応できない会社は、残業規制どころか、社員に残業代を支払ったら会社が成り立たなくなります。そんな時代がもうすでに目の前に来ているのです。

では、どう生産性を高めたらいいのでしょうか。一番の答えは社内にあります。社内には生産性の高い社員と生産性の低い社員がいます。その生産性を算出すると、多くの経営者があまりの違いに驚かれます。計算してみるまで、この事実に気が付かないからです。ただし、

「なぜこのような違いがあるのか!」

と憤ったり悲しんだりする必要はありません。生産性の低い社員がいる一方で、生産性の高い社員がいるからです。つまり、生産性を高めるやり方はすでに社内に存在しているのです。

このやり方を全社員がお互いに教えあう組織になったらどうでしょうか? 聞くまでもないでしょう。

どんな時代でも組織には、組織原則2:6:2があります。一番強い組織は、上の2割が真ん中の6割に、そして真ん中の6割が下の2割に教えるという行動をとっています。それも毎日です。そうやって私の前勤務先は店頭公開をする前に、一部上場企業の中で日本一の生産性(5600円/人時)を実現したのです。

簡単な、たったこれだけのこと。これができるかどうかです。

そしてこの生産性向上の取り組みを支えるために、生産性を高めるやり方をほかの社員に教えることを最も高く評価すると約束する、そんな人事制度が必要です。

経営は実践です。本を読んでも、この答えは載っていないでしょう。我が社にあることを見過ごす「もったいない経営」から、それをしっかり活かす「日本的マネジメントの経営」に移行することが求められる時代になりました。

大変かもしれません。けれどエキサイティングです。面白い時代であると言えるでしょう。

 

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