ビジョンの効能と伝え方
今回は、ビジョンはどうして大切か、というお話しです。これから創業する方にも、社員として働いている方にも、そしてもちろん経営者の方にも、何かあると「ビジョンは大切」というお話をしているのですが、過去にお二人だけ「ビジョン?あまり必要ないかな…」と言われる方に会ったことがあります。
お一人は小売店の店長、もうお一人は製造業の社長です。お二人とも毎お忙しく現場を回しながら、社会貢献的な活動にも関わっている方で、とにかく忙しい。やりたいことがいっぱいあって、引き合いも多くて、常に頭の中でいろいろな思考がくるくる回っているタイプの方たちです。
でもよくよく話を聞いてみると、将来こうありたい、というイメージは持ってらっしゃる。たとえば小売店の店長は、ここで働く人が幸せになってくれると嬉しいと仰っているし、製造業の社長からは自分の技術と知恵で世の中にインパクトを与えたいという夢のイメージが伝わってきます。
ビジョンというと大企業のホームページに仰々しく乗っている麗しい文言のようなとらえ方をされることがあるのですが、実は多くの経営者は、文言としてまとまっていなくても十分にビジョンと言えるものを持っています。それが言葉になっているかどうかという違いです。そして、ビジョンというくらいですから、もともとはビジュアルのイメージのようなもので、それを他人に伝えやすくするために言葉に落とし込んでいるといった方がよいと思います。
会社にとってビジョンが大切なのは、自社や自分の指針としてのビジョンの側面に加え、周囲の共感を得たり、同じような志を抱く人を仲間にしたり、あるいは会社であれば社員の志の方向性を合わせたりするための拠り所としての側面があるためです。
ところが人の考えやイメージを言葉に落とし込む段階で、多くの情報が削ぎ落されます。二次元、あるいは三次元以上のイメージを、理屈が通る一次元の言葉で表現するわけですから、いたしかたないことです。だからこそ、ビジョンを文言としてまとめたら、その意図するところができるだけ多くの割合で相手に伝わるように、比喩や事例や経験談などあらゆる手段を使って肉付けし、補完していく必要があります。
人は自分の見たいものしか見ず、聞きたいものしか聞かないといいます。同じテレビ番組を見ていてもうちの旦那さんと私では、記憶に残っているところが微妙にずれているし、パーティ会場で自分の気になる人の声だけ耳に入るというカクテルパーティ効果というものも、人が選択的に情報を取得している証拠です。
では社長が描いたビジョンが社員にきちんと伝わるためにはどうすればよいのでしょうか。考えられるのは次のようなことです。まずこちらの意図をポジティブにとらえてもらえるために良好な関係性を持つこと、そして同じメッセージを繰り返しいろいろな手段で伝えること、またビジョンに沿った行動や経験を毎日の業務の中で特定し、好意的な評価をすることも効果的です。
これはビジョンに限ったことではなく、理念やクレドといった会社の中核にある抽象的な概念のほとんどに当てはまることです。ビジョンの策定や浸透策にお困りでしたら、ぜひお声がけください。
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