「業務改革の一歩に踏み出した時の社長の行動がその後を決定づける! さらに飛躍するのか、また元の状態に戻ってしまうのか?」
プロジェクト会議の終了間際、「先生、依然として残業が多く、このままですと労基署の指摘を受けるかもしれません」と運営部長からの意見が出されました。
―――残業上位10%の方が所属する部門の業務内容を調査し、次回のプロジェクトで報告してくださいと指示を出して、プロジェクトは閉会しました。
後日、運営部長M氏の率いる業革チームから、時間外労働が集中してる生鮮部門についての経過報告がありました。
- 指示が曖昧なため「言った」「言わない」の行き違いが絶えない。
- 自分で作った、作業計画なのに、その時間内に仕事が終わらない。
- 朝になって、製造数が知らされ、個々に手待ちが発生し、商品づくりが間に合わない。他
といった十数項目が出てきました。
マネジャーはこういった作業に追われ、報告書、発注などの事務作業を時間外にやらざるを得ない状況になっていたのです。
このマネジャーさんの名誉の為に言っておきますと、彼女は10年のベテランで、真面目に、頑張っている方ですが、売り出し企画の増加と複雑化が要因の一つになっていたのです。
この状況に対して、改革チームから再び来たメール質問は以下の内容でした。
「質問があります。今回の調査でたくさんの問題がでてきましたが、チームとして限られたメンバーで時間内に結果を出していく為に、どの方法をとったらいいかアドバイスいただければ幸いです。
①出来る店のやり方を真似てそれを標準化してやってみる
②人事異動で人時管理ができそうな人材と入れ替えをする
③一から業務の流れについて、組み直しをする
以上よろしくお願いします。 店舗運営部長M」
結論はさておき、ここで重要なのは、「やる、やらない」といった後戻りするような審議をしない。ということです。
基本的に、どうやって結果を出すのか? 制限時間内で考え抜く。ということです。
これを社内だけで、やろうとすると、商品部や人事部といった主管部門との調整が必要となります。その結果、動き始めるのは早くても一カ月後、遅ければ、結論がでるのに半年かかることもあります。
そこで、プロジェクトではこの枠を取りはずし、特別枠として、前提条件を設定していきます。
こういった順番を間違えないように進める事で、業務改革チームは自由に動けるようになり、思考の幅が拡がります。また、各部の協力体制が得られ、短期間で仮説と検証をして結果を導き出すことができるのです。
もちろんこの企業も最初から、全てが上手くいったわけではありません。最初は 半信半疑、誰も協力はしてくれませんから、それをやり抜く地道な努力は欠かせません。
大事なことは、こうした プロジェクトにおける小さな活動と報告を行うにあたり、社長が無条件で全面的バックアップを行う。ということです。
理由は簡単で、人は変わることを好まないもの、この原理にもとづけば全ての従業員は 抵抗勢力となる因子をもっていると想定しておかなくてはならならず、このバックアップこそが、業務改革チームが、いばらの道を切り開く鍵となるからです。
そういう意味では、業務改革チームには、人事や店舗オペレーションの組み立て手順について、変えていく権限が付与されているということになります。
業務改革と聞くと、担当役員つけて 名ばかり改善で終わらせようとする企業が多い中、実践的に動くチーム構築が重要になるということです。
ここまでくると、極端な話、このまま、他企業に持って行っても、十分通用するレベルといえます。
話は戻りますが、先のM部長からの質問についての答は、③の「一から業務の流れについて、組み直しをする」となります。
この店に必要なのは「この店にあったやり方で、生産性の高い流れで業務を行う」ことです。時間的に全ての業務は調べ上げることができないので、今回は、その中で、一つ二つの作業内容にについて調べてみて、その結果ついて報告してください。と付け加え解答しました。
理由は、月80時間以上残業しているマネジャーに、自分自身が納得しない状態のまま長時間労働を続けさせれば、健康を害する可能性があり、本人にとっても会社にとっても 望ましい結果が得られないと判断したからです。
大事なことは、こうした前進するための、代替え案を必ず出すことであり、それにより、ビジネスの成功確率は格段に上がるということです。
彼ら自身が行動することで、企業利益が変わるという使命感から、遂行するための3案をだしてきた訳ですが、他の2案については、つぎのように解答をさせていただきました。
①「出来る店のやり方を真似てそれを標準化してやってみる」
上手くやってる店の手順を写してきて、やらせれば一時的にはよくなります。ところが、店は面積、什器備品の配置や数もすべて異なります。結局は各自がやりやすい元のやり方に戻るのは時間の問題だからです。
②「人事異動で人時管理ができそうな人材と入れ替えをする」これも 結果を変える手立てとしては有効です。人時生産性の原理原則である「人に仕事を付ける」やり方から「仕事に人をつける」原則に反するするため、これは、ダメということになります。
以上の点から今回は③の視点で取り組んでください。とお伝えしました。
その後、業務改革チームは、マネジャーの指示が曖昧なため「言った」「言わない」の行き違いがたえない。ことへの対策として「作業依頼メモ」といったツールを考案し、該当売場でテスト運用を開始したのです。
その後の調査で、「言った、言わない問題」は無くなり、厨房内は笑顔が出るようになりました。製造数は前日までに数量を明らかにすることで、マネジャーが部下に仕事を依頼しやすくなる環境が整い、残業が減ったのはいうまでもありません。
話はそれで終わりませんでした。その生鮮売場は製造量が増えたことから、売上は浮上しはじめ、残業も同時に減り、人時売上が2割以上も変わり始めたのです。
たった一枚のメモサイズの紙きれが、月100時間以上の時間外を一気に改善した話ですが、こういった改善事例は、この企業に限らず一年以上取り組まれている企業では必ず生まれてきます。
大事なことなので繰り返しますが、業務改革と大きく名売って、改革の「か」の字も解らない担当役員をつけて、なんとなくやってるだけでは、人時生産性は絶対にあがることはありません。
現場の小さなことから物事の核心を見抜ける環境をつくり、人材育成していくことこそが、業務改革で企業成長を成功させる醍醐味といえます。
さあ、貴社では、まだ、効果の出ない名ばかりカイゼンを続けますか?それとも、時間内に結果を出す本気の業革に着手しますか?
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