「客に寄り添う」ためのモチベーション戦略
先日、バレンタインのスイーツを買いに地元で有名な和菓子店に行きました。なぜ和菓子なのかというと、牛乳アレルギーの家族がいて普通のチョコがNGのため。代わりに買おうと考えたのが和三盆のお菓子です。その和菓子店は自家製のまんじゅうや団子で有名なのですが、他所の産地の有名どころから仕入れた和三盆のお菓子も置いていて、それを目当てに行ったわけです。
店頭で店員さんに「この和三盆のお菓子、牛乳使ってないですよね?」と言わずもがなの質問をすると、「うちで作ったのではないのでわからない」とお答えになる。ややあってパッケージの裏側の成分表示を見て、小さな声で「使ってないようです」と。
別のスーパーで。500mlの緑茶のペットボトルを6本、会議用に買っていこうと手に取ったところで、エコバッグを忘れてきたことに気づきました。最近のスーパーはレジ袋が欲しければ店員さんに言って持ってきてもらわないといけません。店員さんが持ってきてくれたレジ袋は大と小の2種類。同じくらいのサイズに畳んだまま私の目の前に出して「どちらにしますか?」とお尋ねになる。
店の教育がどうのこうのというつもりはありません。自分もいろいろな面で気が回らず周りをやきもきさせているであろうことを承知のうえで敢えて言うのですが、こういった気の回らなさ加減が当たり前の状態であるとしたら、貴社が社員の顧客対応力を高めて、一歩秀でるのはそんなに難しくないということです。
よく「お客様に寄り添う」と言いますが、和三盆事件であれば、なぜ「和三盆のお菓子に牛乳が入っていないか」などという妙な質問をするのか、その場で客である私に聞いてみることもできたでしょう。レジ袋事件であれば、6本のペットボトルを抱えた客の困りごとを解決できるのはどちらのサイズのレジ袋か、両方広げて一緒に確認することもできるはず。
こう考えると、お客様に寄り添うとは、客が本当に望んでいることは何かを知ろうとする姿勢、だとも言えそうです。いろいろな会社や店が「客に寄り添う」と言っていますが、「寄り添おう」という掛け声だけでできるものではなく、むしろ、一人一人がその場で客の意向をくみ取る能力、言い換えれば、気づく能力を高めていかないと難しいのです。
先の和三盆事件で、なぜ客が牛乳のことなど聞いたのか。背景にはいろいろな食物アレルギーを持っている人が増えていることがあり、和菓子についても成分や販売方法を考えなければいけないという推測が成り立ちます。アレルギーフリーの表示をした菓子をつくれば意外な需要を開拓できるかもしれません。客のイレギュラーな問いの背後にある新しい物事の発見、となれば、ルーティンワークのなかでも創造的な要素を見つけることができるはずです。
「客に寄り添う」ことは、自分のなかの創造性に寄り添うことでもある。こう考えると、寄り添う側の貴社の社員のモチベーションにも寄与するのではないでしょうか。
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