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成長シートづくりに失敗する企業の特徴とは

SPECIAL

人事制度コンサルタント

株式会社ENTOENTO

代表取締役 

会社を成長させる人事制度づくりで、700社以上の指導実績を誇る日本屈指のコンサルタント。日本の過去50年間の人事制度のつくり方とは異なり、経営者の評価と賃金の決め方を可視化してつくる画期的な人事制度は経営者から大きな支持を得ている。

人事制度で最も重要な成長支援制度。そしてその制度の中核となるのが成長シートです。自分の成長のゴールはどこにあるのか、上司として部下をどのように成長させたらいいのか、それらを教え、社員の成長を支援する大切なツールです。

人事制度で最も重要でありながら、最もつくるのが難しいのが成長シートです。成長シートは思いのほか簡単にはできません。

毎日色々なことを社員に指導し、「まだまだだな」と考えたり「成長したな」と考えたりしてきたことは事実です。指導の実体験をもとに成長シートをつくるのですが、それを「成長要素」という言葉にまとめたり、数字を褒めていたのか、行動を褒めていたのか、知識や技術を褒めていたのか、勤務態度を褒めていたのかと、整理したりしたことはないでしょう。だからどうしても難しいと感じます。

そして、「同業界の成長シートを参考にしたい」という発言になります。しかし、私はこれに応えることはできません。100%失敗するからです。

過去に、経営者からの「同業界の成長シートを見せてほしい」という強い要望に押されて、同業界の成長シートのサンプルをお渡したことがあります。その結果、いつも残念なことになりました。次のようなご連絡が来るのです。

「成長シートを拝見してみたところ、うちと全く同じでした!今回はこの成長シートを使っていきます」

これは「これからこの成長シートを使って失敗します」と宣言したも同然です。案の定、どの会社からも「やっぱり使えませんでした……。これから一(いち)から作成します」と連絡がありました。

中には「成長シートをつくり直したものの、社員から『またあんな役に立たないものを使えと言うんですか!』と成長シートに反発されてしまい、誤解を解くのに大変な時間と労力がかかりました」という残念な連絡があった会社さえあります。

それはそうです。成長シートは自社にいる優秀な社員をモデルにして作成します。自社と他社の優秀な社員が同じであることはありません。同じ業界であっても、同じ成長シートになることは100%ありません。99%ではなく、100%異なるのです。

同じ業種でも、会社によってどれほど優秀な社員像が異なるかがわかる、こんなエピソードがあります。あるとき成長塾へ、

  1. 業種が同じ(食品スーパー)
  2. 従業員規模がほぼ同じ
  3. 店舗数がほぼ同じ

と所在地以外がそっくりな会社が2社同時に受講されたことがあります。

2社同士も、一緒に受講されていた他の企業も、この2社の成長シートが全く同じになるのではないかと考えていました。しかし、実際に成長塾で仕組みを活用しながら可視化を進め、完成した成長シートを見せ合って驚いていました。全く内容が違ったのです。

1社は来店されたお客様にたくさん買ってもらえる社員が優秀だという成長シートでした。もう1社は来店されたお客様に会員に入ってもらえる社員が優秀だという成長シートでした。

経営者が違えば、優秀な社員像は全く違うのです。

このとき私が「小売業の成長シートはこういう風につくるんですよ」と事例を見せ、安易にその事例を活用するようなことになれば、この会社にいる優秀な社員像を可視化することはできなかったでしょう。

確かにこれまで「可視化」ということに取り組んだことのある経営者はほとんどいません。可視化した経験が一度もないのですから当然です。最初は乾いたぞうきんを絞って水を生み出すような大変さを感じます。しかし可視化の仕組みを学んで実践することで、コツがつかめるようになります。コツがつかめれば、成長シートをつくることは難しくありません。

大丈夫です。成長塾でも多くの方が「最初はかなり悩みましたが、アドバイスや添削を受けるうちに、だんだんわかってきました」と言われるようになりました。

大事なことは自社にいる優秀な社員を可視化して成長シートをつくることです。そこに経営者が本気で取り組みつづけることができるかどうかです。

そしてその成長シートを見せて経営者が次のように発言をすることです。

「我が社には優秀な社員がいます。その社員が、これまではどんな社員であるかということを皆さんに説明することができませんでした。よって、皆さんが成長したいと思ってもそのゴールがわからないため、途中で間違った方向に行ってしまったり、転んだり、または進むことにためらいがあったりということの連続だったでしょう。今度は成長シートがあります。何を守り、何を身に付け、何を行うと成果を上げられるようになり、優秀になれるかが書いてあります。この成長シートを見ながら成長してください」

社内にいる優秀な社員をもとに成長シートをつくっています。つまり、社内に「教えることのできる社員」がいるということです。

「同業界なら使えるだろう」と他社の成長シートを活用してしまうということは、「どこかの会社の優秀な社員になれ」と言うのと同じことです。社内に「教えることのできる社員」はいません。経営者さえもその成長シートの内容を説明できないでしょう。なぜその勤務態度を守らなければならないのか。なぜその知識・技術が必要なのか。どのようにその重要業務を行えば、その期待成果を実現できるのか。これが説明できなければ、成長シートを導入する意味はありません。

必ず自社の優秀な社員をもとに成長シートをつくること。社員の幸せを本心から考えるなら、この基本を守る覚悟をしていただきたいと思います。

 

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