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人が育つ会社とは?やる気に溢れる会社とは?その条件を確認する。

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

訪問すると、K社長の困った顔があります。事前のメールには、業績も順調、社内も良い状態とありました。

「矢田先生、所属する経営者団体で例会の報告を依頼されました。嬉しいのですがそのテーマが・・・。」

私は、K社長の次の言葉を待ちます。
「テーマが、社員教育なのです。」

私にも、困る理由が分かりました。
「正直に話されたらどうですか。」


人材育成には、訓練と教育の2段階が必要です。
この2段階を明確に分けること、そして、その其々において、明確な目的すなわちゴールを持つことが重要です。

訓練とは、「自分の業務を、自分で完結させ、きちんと成果を出せるようにすること。」となります。
それに対し、教育とは、「仕組みを作り変え、自分で問題を解決できるようにすること。」となります。

採用した人を、この状態までにすることが、訓練と教育、それぞれが持つゴールとなります。そのための仕組みを整備することになります。その其々の制度のことを訓練制度および教育制度と呼ぶことになります。

「自分の業務を、自分で完結させ、きちんと成果を出せるようにする」ためには、やはりそれなりの仕組みが必要になります。案件の進捗を自分で管理できなければなりません。また、その業務の基準が解っていることも必要です。

それらの仕組みが整備されるほど、能力が低い人や経験のない人でも、成果が出せるようになります。そして、訓練の期間は短くて済むことになります。

これを体系化したものを訓練制度といいます。人を採用し、訓練を実施し、その結果を検証し改善をする、これを繰り返すことで、その訓練制度はどんどん良く成っていきます。『人を戦力化する仕組み』が育っていくのです。我々は、人を育てるのではなく、人を育てる仕組みを作っているのです。

この段階を終えた社員は、次の段階に進めます。「問題を解決できるようにする」という教育に移行することになります。

会社としての方針を伝え、明確な目標を依頼します。「月20件の見込客のリストを獲得できるようにしてほしい」、「製造のロス率を3%まで下げてほしい」。そして、その実現のための施策と計画を立てさせ、実際に動いてもらいます。粘り強く修正を繰り返すことで、一つの仕組みが良くなります。

会社として、この一連のサイクルを持つことが前提となります。そのサイクルに実際に入ってもらうことで、その社員は育っていきます。一つの問題解決を担わせることで、その社員は、組織というものを理解することになります。そして、会社の中での自分自身の存在意義を本当の意味で感じることができます。自分が会社を変えていることを実感します。それが、愛社精神になります。

そして、そのサイクルの周りに、ローテーション制度や給与制度を整備します。それにより、長期の視点での人的資源の確保を確実にします。優秀な人材を自社に留めることもできます。これらを総称して、教育制度と呼びます。

これだけのものを作って初めて、『人を育てられる会社』になることができます。
会社としての事業を良くしていくというサイクルに如何に段階的に関わらせていくのか、が人を育てる仕組みとなります。


この「人を育てる仕組み」の全体像は、非常に見え難いものです。そして、この構築の仕方が解る人は、世に多くは居ません。

冒頭のK社も、3年前までは、完全に「人が育たない会社」でした。そして、「人が辞めていく会社」でした。
その当時のK社長の頭の中には、「社員をどう育てればよいのか」ということばかりでした。毎月、社長自ら講師を務める社内勉強会を開催しました。また、外部研修にもいかせました。そして、社員は2、3年という育ったころに辞めていきました。

K社長は言われました。
「いま思えば馬鹿らしいのですが、社員教育をすれば業績が良くなると本気で思っていました。」

当時の年商は6億です。3年後の今期の着地は8億6千万円です。これは、絶対に社員教育によってもたらされたものではありません。これらはK社長の創った事業構想によるものです。

K社長はまだ自分を責めます。
「自分の戦略能力の無さを、社員に責任転嫁していたのです。」

当時のK社の事業には、特色と呼べるものがありませんでした。そのため、社員は、顧客に軽く扱われていました。「他社と何が違うの?」、「もっと安くして」。
そして、仕組みの発想が無いために、サービスの品質も悪いのです。「納期の回答がほしい」、「また不良品がでたぞ」これでやる気が起きるはずが無いのです。

やる気を失ったその社員に追い打ちをかけるように、「教育」がされます。社内勉強会で理念や人格、外部研修ではマナーやモチベーションが、主なテーマです。そして、彼らは去っていきました。

いまのK社は、強い事業をやっています。見込客のところへ行けば、快く会ってもらえます。値下げを強く言われることもありません。そして、1回起きた問題が、繰り返されることはありません。仕組みを改善するサイクルが確実に回っているのです。

K社は、顧客の信頼を勝ち得ています。業界でも、「あの会社はすごい」という評判になっています。その状態に社員はやる気を保てています。そして、自分の仕事に自信とプライドを持っています。事務所を訪問する人も、それを感じることができます。

そんな頃に、自分の所属する経営者団体から、例会での報告の依頼を受けました。そのテーマは、「社員教育」です。K社長は、事務所に来た例会担当メンバーに「正直」に話をしました。事業戦略のこと、事業設計書のこと、PDCAを回していること、どのように会議を開催しているか。実際の書類も見せ、一生懸命に。

その結果、「例会の趣旨とは違う」ということで、オファーは取り下げられることになりました。伝わらなかったのです。K社長には、彼らの気持ちが解ります。3年前の自分もそうだったのです。
早く覚めてほしいという想いもあり、一生懸命に話をしました。しかし、ダメでした。K社長、「残念です。」と言われました。

人は、「教育」によって育つものではありません。
あくまでも、動いた結果により育つものなのです。

人のやる気は、「教育」によって高まるものではありません。
一時は高まったとしても、すぐに落ちてしまいます。
やる気は、あくまでも、成果の中で保たれるものなのです。

その原則を、我々は守る必要があります。
そして、それを満たすような会社づくりに向かう必要があります。
彼らが、動ける環境をつくるのです。彼らが、成果を出せる仕組みをつくるのです。

そのために、社長は動きます。
動いてみて、実際に回してみると、初めてそれを自分のものにできます。
すべては、動いた結果なのです。

 

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