社長の「意識」を変えることの難しさ―「体験」はアウトプットすることで血となり肉となる―
地方でコンサルティングや税務顧問の仕事をしていて不思議に思うのは、経営者の意識が何故かくも保守的で変わらないんだろう?ということです。
個人的な主義主張の範囲であれば、保守的だろうが頑固だろうがその人の勝手ですから構わないのですが、ことビジネスとなると時代の変化が激しいだけに「変わらない」という選択は、ときとして致命的なマイナス要因となって事業に悪影響を及ぼすのです。
時代がビジネスに対して要求してくる基準は常に変わります。
じっくりと考え慎重に行動することが当たり前とされていた時代もあれば、とにかくスピードが大事、考えるのは後からでいい、という時代もあります。また、地縁血縁的結びつきこそが最高のビジネスモデルとされていた時代もあれば、マーケティングによる科学的アプローチが必須とされる時代もあるのです。
経営者は時代に応じて、自らの事業の在り方や運営方法を自在に変化させていかなければなりません。そうしなければ、間違いなく大きな時代の流れから取り残され、事業の存続が危うくなるからです。時代に応じて変化し続けるには、いったい何が最も必要なのでしょうか。
私は、この変化し続けるための最も重要な要素は「知識」や「情報」だと思っていました。経営者が世の中の様々に変化する事象を見て、自身が変化するために必要な「知識」を身につければ、黙っていてもその人は変化するだろう、と思っていたのです。ところが、特に地方の場合、変化が必要な事態に追い込まれても、肝心の経営者が、なかなか重い腰を上げようとしません。
私は最初
「おかしいなあ??何故変わろうとしないんだろう?世の中が変化していることは、テレビや新聞といった、全国共通の情報媒体から伝わっているはずなのに・・・」
と、不思議でした。
日本の場合、そういった情報媒体から、地方だけが取り残されているわけではありません。全国共通のテレビ番組を見ることが可能であり、新聞からも国内から国際社会のニュースまで同じように記事の内容は伝わっているはずです。もちろん、インターネットにつながる環境も、全国ほぼ同レベルで整備されています。
にもかかわらず、都会と地方の格差がどんどん広がるのは何故だろう、と疑問だったのです。知識や情報を得られる環境は、両者ともそれほど変わらないのに・・・と、不思議に思っていました。
そして、あるとき気づいたのは
「これは「知識」の差ではなくて「意識」の違いなんだ!」
ということです。
いくら目の前に「知識」のもとや「情報」があっても、それを取り入れて、変化していこうという「意識」がなければ、変わることはできないんだ、という事実に気がついたのです。
それでは何故「意識」が変わらないのでしょうか。変えようとしないのでしょうか。これはかなり難しい問題で、様々な要因が考えられます。
ひとつ考えられるのは「2次元情報は脳に定着しにくい。」ということです。
「テレビや新聞から得られる情報は、全国共通のはずなのに・・・」と、先述しましたが、これらの情報は2次元情報です。つまり、テレビは画面であり、新聞は紙面です。どちらも、それを伝えるのは、見るだけ聞くだけ読むだけの、2次元の世界ということになります。
ところが、都会に暮らしていると、これらの情報媒体から得られた情報は、すぐに確認することができます。流行やグルメ、イベントなどが体験しようと思えば、実際に身近なところで体験することが可能なのです。
ということは、2次元情報は体験によって、より立体的な3次元情報に変わります。
そうなると、脳への定着率が格段に上がるのではないでしょうか。
こうして、現実世界で具体的に様々な体験をすることによって、単なる「2次元情報」だったものに肉付けが行なわれ、厚みが増すのです。こういったことが日々繰り返されるのですから、都会と地方の格差が次第に広がっていくのも無理からぬ話だ、と推察したのです。
もう一つ、地方が「意識」を変えられない要因として考えられるのは、過去の「成功体験」の大きさです。
特に地方の場合、うまくいったビジネスモデルが「地縁血縁ビジネスモデル」という、農耕民族である日本人のマインドに実にぴったり合った成功モデルだっただけに、これを変えることはかなり厄介です。
現在でも「地縁血縁社会」そのものが、地方からなくなったわけではありません。しかしながら、その、ビジネスを支える上でのパワーが、過疎化高齢化によって、極端に減少したためにこれを変えざるを得なくなったのです。
とはいえ、地方の人々にとって「地縁血縁社会」は、まだ目の前に厳然として存在するわけですから、それに日々触れ合いながら、かつてこれを高度に利用した成功モデルであったものを変えていくというのはかなり難しい試みなのです。
地方の経営者がなかなか意識を変えられずにいるのは、この過去の成功体験の大きさと、いまだにその地縁血縁社会の中で暮らしている、という2重の理由によってそうなっていると考えられます。
この難しい状況の中、それでもコンサルタントとしては、経営者の意識を変えてもらわなければなりません。というのは、上記のような旧モデルでは、事業が立ちいかなくなったことだけは、はっきりしているからです。旧モデルでいまだに自信満々、という経営者は、さすがにいなくなったものの、変えたくない、変われないという人はいくらでもいます。
この状況を打破する最も効果的な方法は何でしょうか?そんな「方法」というものがあるのでしょうか?・・・・・残念ながら、一発逆転、といった奇跡のような方法はありません。
ただし、地道であっても確実に変われる方法は存在します。
それは「行動」を起こすことです。
今までやっていなかったことでも、「これは必要かも・・」と思ったことは、とにかく実践してみることです。そういったトライアル&エラーを繰り返すことでしか変われる方法は存在しません。
仮に、大きな一発逆転といったドラスティックなやり方を、いきなり事業に取り入れたならば、失敗の可能性が大です。従業員をはじめ周りの事業関係者がついてくることができないからです。それに何といっても、経営者自身の意識改革が成されないままに、無謀に進めた場合、すぐに自分で自分がコントロールできなくなる恐れがあります。
実際、そういった例は枚挙にいとまがありません。例えば、いきなり会社に高度かつ高価なコンピュータ管理システムを導入したのはいいが、結局誰も使いこなすことができずに無駄な投資に終わった。とか、高額のコンサルタントと契約したものの、提供されたコンサルティングが難しすぎて経営者には理解できず、幹部社員に振ったもののやはりうまくいかず空振りに終わったとか、失敗のサンプルにはこと欠かないのです。
私が長い間コンサルタントとして、事業の改革を見てきた経験では、普段ボクシングのジャブのように細かくトライアル&エラーを繰り返し、チャンスが巡ってきたときに、重いストレートパンチを放つように、大きな改革を仕掛ける、といった方法でしか成功はあり得ません。しかも、それは他人(ひと)に頼るのではなく、自らが学習し続け、仕掛けていく必要があるのです。
さらに、経営者が自らの意識を変え、自己改革を早く確実なものにするために、極めて有効かつ確実な方法があります。
それは、いつも私が申し上げている、経営者によるアウトプットです。
トライアルしたこと、つまり体験したことを日常的にアウトプットしてみるのです。そこには必ず、やったことや考えていることを、頭の中で一度整理し見直しするというプロセスが含まれますので、場合によっては次の打ち手、改善へのステップも見えてきます。
普通はここまではやりませんから、意識改革といってもそのスピードはそれなりです。もちろんそれでも、トライアルをやるに越したことはありません。しかし、ここにアウトプットというひと手間を加えることで、改革のスピードは劇的に早くなるのです。
時代に合わせてビジネスを変化させていく、というのは事業を遂行する上での必須条件です。そのためには何よりも経営者の意識改革が必要になります。その意識を変えていくには小さな行動、トライアル&エラーを繰り返していくしかありません。それをより効果的に実現するために、アウトプットは極めて有効な手段なのです。
そのアウトプットのやり方を、効率的かつ効果の大きいものにするために、私のコンサルティングプログラムは作られています。ぜひ一度トライアルされることをお勧めします。
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