●●な相続対策による「争族」リスクの肥大化
当社は、同族会社と社長の財産管理専門機関で、日々会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。その中でも、「相続対策」に関するお悩みも大変多く寄せられます。
普段あまり表面化されない「相続対策」の話。社長の向き合い方一つで「吉」にも「凶」なる大変難しい論点であることは、確かです。理由としては、同族会社の場合は、非同族会社よりも「財務」の問題の根が圧倒的に深く、複雑な問題が潜んでいるのです。
大前提として、同族会社の場合には、「経営する人(=社長)」が、「所有する人」つまり「株式のオーナー」という構造にあります。「会社の財務」と「社長個人の財務」が表裏一体の関係にあるのです。
株式のオーナーが100%社長であれば良いのですが、ほとんどの場合、そうではないことが複雑となる要因です。
親兄弟だけでなく、親戚、いとこやはとこも関わってきたり、あったこともない知らない人が株主名簿に名を連ねていたり…。株式が分散すればするほど、大変な状況になることは一目瞭然です。
一昔前には、「経営権」を掌握することの重要性や、「争族」のリスクを理解していない税理士が、単純に「相続税」対策だけのため、株式や不動産の家族での共有・分散を提案していました。その結果、相続が発生するたびに、どんどん株式や不動産が分散していきました。
その後始末をせざるを得ない立場にある後継社長からすれば、「こんな余計なことを・・・」と思われるかもしれません。そもそも、「あくまでも、税理士は税金の専門家である」ということを忘れてはいけません。。
顧問税理士であれば、クライアント(社長)から求められれば、税金を少なくするための提案をするのは、当然の話です。しかし、税理士はあくまでも「税金」の専門家です。「財務」のことは専門外です。
そのため、社長がその節税対策を講じた結果、税金は一時的に圧縮できますが、それが他にどのような影響を及ぼすかについてまで理解していないのです。
「税金」だけを考えた無策な相続対策をしてしまうと、税金の圧縮効果以上の「争族」リスクが肥大化します。ここで大切なことは、後継社長が「財務」を理解し、顧問税理士を上手に使いこなすことなのです。
無策な相続対策の代償で、多くの後継社長が、分散した株式を買い集めるための資金を銀行から借金したり、あるいは、株式買取交渉でモメるなどが発生しています。
最悪のケースでは、買取価格について裁判に発展するケースもあります。この場合は、多大な金銭的支出と精神的ストレスが経常的に発生し、火種を大きくしてしまうのです。
大切なことは、同族会社のオーナー一族には、「争族」の火種はあちこちに転がっているということを、社長自身がよくよく理解しておかなければなりません。出来るだけ早い段階で、先手先手で火種を消すための財務戦略を持ち、関係者の心情に配慮しながら、確実に一手を打つべきなのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
あなたは、社長として、会社の未来をつくれていますか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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