「商品力」という会社の核のつくり方
例えば、大切なひとを1人 心の中に描いてみるとき、その人のどんな顔を思い浮かべるでしょうか。大切な「その人」は、奥さまやご主人、お子さん、恋人や親友、ご両親でしょうか。あなたの心の中で、その人はどんな表情をされていますでしょうか。思い浮かんだ表情はきっと、あなたがいちばん好きな、その人の顔なのではないでしょうか。泣いた顔、怒った顔、いろいろありますが、きっと「笑顔」を思い浮かべたのではないでしょうか?
わたしたちはだれしも、ひとの「笑顔」が好きです。実は、商品にも「笑顔」があります。そして、わたしたちは商品の「笑顔」が好きです。商品が“微笑んだ”とき、わたしたちはその商品に興味関心をもちます。商品が笑ったとき、その商品が好きになります。その商品の笑顔を思い出して、また恋しくなり、会いたいと思うようになります。
わたくしどもの商品リニューアル戦略は、「笑品リニューアル戦略」です。飽きられてしまった既存商品を、リニューアルによって磨きあげたとき、商品それ自体が、微笑みます。もちろんこれは比喩です。比喩ですが真理です。意味としては「商品が、リニューアルを喜んでいる。手に取ったひとが、商品の微笑みを知覚しワクワクした気持ちになる」ということを意味します。実は、この皮膚感覚こそが、商品リニューアルの肝であり、ヒットに必要な感覚となります。
微笑み、という意味で今大注目の人がいます。先日、来日された「ローマ教皇(法王) フランシスコ」です。日経新聞の社会面でも大きく紹介されましたが、25日に行われたミサにはたくさんの方が集まりました。商売の世界の言葉に変換すれば、東京ドームでミサを開催し、約5万人の集客に成功しました。
朝日新聞デジタル(2019年11月21日11時43分発信)の記事をそのまま抜き出せば「カトリック中央協議会(東京都)は今回の来日に合わせ、POPE FRANCIS IN JAPANのロゴが入ったマフラータオル、Tシャツ、マグカップなど11種類を作り、9月からインターネットで販売。長崎や東京の当日のミサ会場などでも売る」と。そして、先日のネットニュースではミサのチケットやグッズの完売が話題になりました。
さらに、こうしたグッズのひとつで、わたくしたちの身近で大ヒットしているのがPHP研究所から発売された「日めくり まいにち、教皇フランシスコ」という卓上カレンダーです。この文具商品の表紙はもちろん教皇フランシスコのアップ写真。いい「笑顔」をされています。なんともフレンドリーな笑顔にギャップを感じ、購買意欲をアップさせます。
そもそも「ブランド」という言葉は、家畜に施した「烙印」に由来する言葉ですので、ローマ教皇(法王)に当てることはできません。が、ある世界観の象徴で、教皇フランシスコはその世界観のトップリーダー、としてわたくしたち生活者は見ています。「教皇(法王)」関連アイテムは、例えば書籍など38年間絶えることなくリリースされていますが、世界観はそのままに、時代に合わせて「親近感」をコンセプトにリニューアルしヒットを飛ばしています。トップリーダーのフレンドリーな笑顔こそが「商品力」であり「笑品力」となっています。
ひるがえって、自社商品について検証してみましょう。競合商品の並ぶ棚の中で、商品の微笑みを感じるでしょうか。パッケージの色、ツヤ、質感、店舗照明の下で輝いているでしょうか。それとも、色あせたような感じがしますでしょうか。会議室ではなく、現場で並べた時にどうお感じになりますでしょうか? 食べ物であれば、自社商品を口に含んだ時、他社商品を口に含んだ時、「笑顔になる」のはどちらでしょうか。客観的な評価はどうでしょうか。
さらに自社のトップリーダーとして取材を受けるときはいかがでしょうか? 仏頂面ということはないと存じます。女性のお客様は「口の両わき」を無意識にチェックしています。キュっとあげた良い笑顔をされてますでしょうか? イメージがわかないときは前出の「まいにち、教皇フランシスコ」の笑顔が参考になります。
伸びる会社には「核」には、すぐれた商品サービスがあります。伸びる会社は、自社の核、「商品力」を磨き続けることが、経営において優先すべきことだと知っています。すなわち、経営は商品力であり「笑品力」が決め手です。人も商品サービスも「笑顔」が人の心を魅きつけ、人の心を動かし、具体的アクションを促します。商品サービスが、「笑品サービス」として輝いているかどうか。既存商品のネーミングやコピーライティング、パッケージデザインやプロモーションのイメージ写真をリニューアルするだけで、それだけで収益が2倍3倍アップする企業があります。トップの口角アップと売上が反比例することはありません。
自社商品が微笑んでいるかどうか、まず現場に行って手に取ってほしいのです。現場のお客様の表情を観てほしいのです。自社商品を手にしたとき、社長の心はスパークしましたでしょうか? ワクワクしたでしょうか?
誕生から年月を重ねた自社商品が、今を生きるお客様の気分をアップさせる「笑品」として生まれ変わり、厳しい時代環境下を生き抜く「勝品」として売れ続ける仕組みがありますでしょうか? 商品リニューアルは「ときめきづくり」です。過去の成功事例ではなく、今を生きる人の心がときめく商品にリニューアルすることが成功の要です。
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