商品力アップの具体策
スマートスピーカー、お掃除ロボット、Spotifyプレミアム、iPhone11・・・2019年が終わりに近づいています。今年、買ったモノやサービスを思い出してみてください。令和元年、多くの家庭ではITに関わるアイテムの買い物、買い替えや買い足しが多かったのではないでしょうか。かつてはボーナスで「白物家電」を買っていた時代がありましたが、時代が大きく変化しています。
ご存知のようにGAFA(ガーファ)などのビックテック企業に対抗し国内IT企業の経営統合が話題になっています。世界の市場を舞台に、大きく挑む流れであり、生き残りをかけた道です。一方、中小企業は足元をしっかり見る。もちろん大事な姿勢です。しかし、もしもそれが「目に見える世界」だけを見る、ということでしたら危険な姿勢です。
見るべき「変化」とは、お客様の「変化」です。お客様の「心の中」の変化です。ライフスタイルの変化によって、お客様自身の感覚が、価値観が、考え方が「変化」していることに気づくことが求められています。
例えば、スマートスピーカーや音楽・映像配信サービスをお使いになったご家族の話に耳を傾けてみてください。ご家族の中には、こうした新商品や新サービスに否定的な人もいたのではないでしょうか。わたくしの知人である40代主婦・Aさんもそんな1人です。
AさんはITツールに興味がなかったし、むしろ嫌悪感があったそうです。しかし家族のリクエストで「スマートスピーカー」を買いました。使っているうちに気持ちが変化したそうです。曰く「朝、必ず家族が “いま外の天気はどう? 雨降ってる? 傘を持っていった方がいい? ”っていちいち私に聞いてくるんです。で、私が外に天気を確認するのが日課でした。でもコレが来てからは天気を答えてくれます。しかも、間違わないんです。私自身がすごくラクになりました」と笑顔で話してくれました。
ビッグテック企業の提供する商品サービスが伸びるのは、人間が持つ「際限のない欲望」に応えるビジネスを展開しているからです。例えば米国では、チェーンストアのウォールマート社が生鮮食品をご家庭の冷蔵庫まで届けるサービスで収益を倍増させています。共働き世帯と高齢者の「ラク」「便利」を叶えるサービスです。
もっと「ラクしたい」もっと「時短したい」もっと「トクしたい」。もっともっと! の欲望を叶えることで、その障壁が低くなり、さらに欲求が強くなってゆきます。イノベーション商品に対して懐疑的だった生活者が、一度使ってみることで「便利」「ラク」を肌で感じ、イノベーションを受け入れ、さらに積極的に活用することになります。
時間に対する感覚が変わり、考え方が変わります。その変化はお客様の中にある心の変化なのです。目には見えません。人が生きるということは、世の中が変わり人が変わることそのものなのです。必ず変化するのです。
ひるがえって、自社商品サービスは「変化」し続けているでしょうか。時間が止まっていないか、死んでしまっていないでしょうか。わたくしたちは当たり前のように指導されます。目の前のことを一生懸命やっていなさい、 去年と同じコンテンツを愚直に回しなさい、“本質”だから変わらないよ、と。いつか、努力が報われるよ。本当でしょうか?
自社商品やサービスは、目には見えないお客様の心の変化に応えているだろうか。逆に、不満や不快、不安を与えてはいないだろうか。経営者としてではなく、一家庭人として生活を「もっと快適に・もっと便利に・もっとラクしたい」と望んでいるとするならば、自社のお客様の気持ちにも想像力が働くはずです。
伸びている企業は、危機感を持って「商品力」を磨いています。一方衰退企業は、楽観で「商品力」を現状維持しようとします。前者には、ビジョンに基づいた商品リニューアルの仕組みがあります。後者には、ビジョンがなく、仕組みがなく、そもそも商品リニューアルの発想がありません。世の中の儲かっている会社とそうでない会社の違いはとてもシンプルです。
商品力をアップさせましょう。商品やサービスそのものを磨き上げることです。「商品ファースト」であり、商品はすべてに優先されます。マーケティングもセールスプロモーションも広報活動も、商品サービスを世に送り出し、成功させるための要素と考えましょう。その順番を間違えてはなりません。
「商品力」とは商品そのものであり、そして、周辺世界もまた商品の一部です。インスタグラムなどのSNS、ホームページやネットショップの雰囲気、カスタマーセンターの対応、リアルショップの接客、広告など、そうした空気感も商品力の1つです。まだまだ、自社でできることがたくさんあります。時代が複雑に変化している時だからこそ、自社の商品力へ集中することです。商品力ファーストを合言葉に、ブレない仕組みづくりを構築してゆきましょう。
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