「会社の改革はどのように進めるのか? 大きく変えるために絶対必要となる条件とは?」
「先生 、ウチの人時売上は1万円台半ばぐらいなんで そんなに悪くはないと思うのですが・・・」とあるチェーンの社長さんからのご相談です。
データを拝見し、電卓で、このくらいですか?とお見せすると、「え?」と社長さんの顔色が変わりました。そこには 社長さんが想定していたものより3割くらい低い数値が出ていたからです。
ご相談にお見えになる企業では、こういったことがよくあります。背景には、人時の捉え方が違うことに、気づかぬまま、部下が出したその数値が人時売上と信じておられたということです。
店長などの管理職の残業時間が加味されていなかったり、サテライト店の人時が入っていなかったり、一方、売上でいえば、催事や移動スーパーなどの他社売上が入っていたり、少ない人員で売上がとれて、回せているかのように見えているということです。
まずは、その基準数値を正しいやり方で算出し、そこからどう改善していくか?ということが出発点となります。
そもそも、人時売上高は「もともとうちは人時売上が高い」と安心するためのものではなく、実態を掌握し、改善点を発見するためのものです。
こういった数値も日頃見慣れていませんと、良し悪しは見えないのですが、興味をもち見ていくコトで、出てきた数値に想定以上の差異があれば、疑ってみることが重要でだということです。
「そんな細かなことまで、やっていられない」という声が聞こえてきそうですが、
――――ちゃんとした正しい数値のひとつ出せない企業に、人時生産性の改善などできません。とキッパリ申し上げています。
あのウォルマートのCEOであっても、必ず電卓片手に会議に出席し、その場で確認することは、一人一人の相手を尊重する大事な行動としています。
僅か数十店舗、数百店舗の日々の人時売上実績をチェックできないくらいなら、これからのチェーンを率いる社長など務まらないということです。
最初はこうして、構造改革の基礎データを丁寧に積み上げていくコトになりますが、この過程が、定着できるようになると、改善速度は次第に早くなっていきます。
大事なことは 最初のこの利益を生み出すひとつのユニットが重要で、これこそが利益を生み出す根源となるからです。
よくあるのが「そんなもの、システムさえ、ちゃんと組めば間違いなく数値は出るはず」といって、担当者やシステム会社に丸投げしているところもありますが、売上ひとつとっても年に数回アブノーマルな数値が計上されたり、売上未計上といったことは起きるものです。
そこに「人時」というもう一つの新しい項目が追加されれば、煩雑化し、正しい数値がでてこななくなる確率はさらに高まるということです。
実際に、クライアント先のデータをチェックしていくと、明らかに数値が違っていて、それはシステム会社の数式の間違えであったことが、稼働して何年も経ってから、発見されることもあります。いわゆるバグ(欠陥)です。
それ以外にも、多くあるのが、クライアントの担当者が「部分的にあれも知りたい、これも知りたいといった 勝手な要望」をシステム会社に出し、そこでバグが発生し、トータル数値がおかしくなってしまうことです。
いずれにしても、受益者であるクライアント側の経営者が、その数値に重きをおこうとせず、トータルをチェックする組織や人が不在なことから、そういったことが起きるのです。
もし、昨日の売上高が間違っていたとか、一週間、予算比、前年比が違っていることがおきた場合、各店は、大騒ぎになるはずです。
今までの数値が、「違っていた」ということになれば、現場では「何が正しいのか?」と数値に対する信頼を失い、誰も真面目にやろうとしなくなります。
売上高を気にしない社長はいないと思いますが、人時売上高となるとこのように正しい数値がわからないことから、来年度の目標を出してくださいといっても、目標をハッキリと提示しようとしません。
本来であれば「来年度の人時売上目標はいくつで、そのためにこういった執行計画を予定しています。みなさんは、この取り組みを完全実施することで、各店の目標達成をさせてください!」といった、経営方針が、年度末に社長の口から発表されるものです。
改革が進まない企業というのは、何処を目指し、何をどうやればいいのかだれも分からない為、社員は自分には関係ないと思い、誰も動くことができないのです。
伊藤は、立場上、国内の製造、運輸、外食、医療といった多方面業界の経営者とお会いすることが多いのですが、今は、どの企業でも利益の出し方に懸命で、人時生産性ということについて先手先手で手をうたれています。
こと小売りチェーンとなると、人時生産性という考えが「わかってはいるけど」それより「売上」「販促」が大事という旧態依然の思考方法が根強く残っていて、経営者の腰が重いというのが共通点です。
ラクビーワールドカップでベスト8を目指すのであれば、ベスト8経験のある監督を選びますし、プロ野球であれば、優勝経験のある監督 コーチ陣を招聘します。
そこでおこなわれることは、目指すゴールを掲げ、そこから逆算して、勝ち進むプロセスを作り上げていきます。最終決戦では想定外の事を考える余裕を、どれだけ有することができるか?が、その勝敗を分けます。
勝つ為のプロセスは理論だけでなく、「仮説をたて実践で方向性を見いだしていく」ここに最も時間がかかるため、無駄なことをやっている時間は一秒も無く、まさに、時間との闘いです。
企業経営も同じで、生産性の高い仕事で、実績を上げた経験値が勝敗を分けるといっても過言ではありません。
そして、社長が掲げたゴールを目指し、そこから逆算し、達成するためのプロセスを一気に作り上げていくことになります。
「よくあるのが、うちは自社で幹部にそれを やらせて出来るようにしている」といわれる経営者がおられます。企業それぞれにお考えがあるので、それをどうこう言うつもりはありませんが、
勝ち方の分からない 自社幹部社員が自由にやって、企業の結果が変わるのであれば、世の中の企業は全て成功するはずですが、現実はそうはなりません。
人伝に聞いた話や、ネット記事情報で、社内の人間で一致団結すれば企業業績を変えられるほど、経営の改革は甘くないということです。
人はだれでも、実績をあげ、会社から受け入れられ他人から尊敬されたいものです。それには、幹部社員がその論理的思考と、環境に適応する行動力を身に着けることができる、いわゆる学習が必要です。
多くの失敗や成功を経験し、結果を生み出してきた人物から伝授される知恵や知識は、本やネットでは決して知ることができないものです。時には、経営者が「これはちょっと難しいかも」と打ちひしがれた時、激励し背中を押すことが、成功を実現させる唯一の方法だと理解しているからです。
全てやるべきことはやっても、目標達成できるとは限りません。大事なことなので繰り返しますが、一つひとつのユニットを完遂することであり、それを制限時間内にいかに多く検証できるか?ということです。
はじめは1年以上かかったことも、それが半年で出来るようになり、さらに3カ月、1カ月と短期間で実現できることで、取り組みの同時多発性を可能にすることができるからです。
表面の売上だけを捉え、そこで改革を諦めてしまう経営者が多い中、一方では自分の目と足で、人時売上で結果を出せる専門家とチームを組んで、実際に結果を出されている社長は、着実に増えています。
さあ、貴社では、社内の部下に任せ生産性が上がらぬまま、あなたの時代の終わりを迎えますか?それとも、自らの目と足で確かめ、それを企業内で再生、発展させていける仕組みづくりにチャレンジし突き進みますか?
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