任せきれない経営者の末路
私のこれまでの経験上、店舗ビジネス経営者の方々には、「任せることが苦手」な人が多いと感じています。そのパターンは大きく二つに分かれます。すなわち、「全く任せない」か「丸投げ」のどちらかです。
「全く任せない」経営者は、そもそもスタッフのことを信用していない場合が多いですね。飲食店でも、美容室でも、セレクトショップでも、経営者の自分が何でも一番とばかりに現場の仕事をすべて自分でやってしまい、「やはり私がいないと…」と悦に入っているパターンです。
「丸投げ」経営者の場合は、スタッフが育っていないにもかかわらず「あとは任せた」と早々に店を立ち去ります。当然まともな運営ができるはずもなく、スタッフにも相当の負担がかかります。こちらの場合もスタッフを責めつつ、「やはり私がいないと…」となります。
さて、上記2パターンのいずれも、経営者自身が店舗の主役であり、「人材育成の型」は持っていないことが通常です。そもそも育てようと思ってもいない可能性があります。双方の共通点として、スタッフの離職率の高さと離職の早さが挙げられます。
店舗ビジネスに限らずどんな仕事でも「人」を育てなければ、継続することはおろか日々のまともな売上を取ることもできず、相当なスピードで潰れます。その人材育成において欠かせないのは「任せる」ことであり、「任せ方」にも基本があります。
「任せ方の基本」で一番外せないのが「求める成果」です。これがなければ何も始まりません。任せられた方も、これがなければ何をしていいのかわからず途方にくれます。ですが意外と「これやっといて」や「君のセンスに任せた」などと相手にとっては「?」な任せ方が横行しています。
「求める成果」は相手が仕事を完了させる基準ともなり、はっきりと明示する必要があります。それをクリアすることでスタッフも成長をしていくのです。以下、掃除を例に見ていきましょう。
掃除に求められる成果は「きれいな状態にすること」といえますが、これだけでは間違いなく人によってバラバラな状態になります。それぞれで「きれい」の基準が違うからです。そこで、任せる方としては、「自店のきれいな状態」をまず現地、写真、文章などで明示する必要があるのです。
成果を明示したうえで、今度は掃除の手順ややり方を決めておき、それを教えて習得させて初めて「任せる」ことができます。これらを全部すっ飛ばして「私は全部まかせている」などと言っている経営者もいますが、店の状態を見れば大体わかります。
人に任せるには、経営者が仕事のすべてを理解しておく必要があります。理解するということは、それが言語化できるということです。自分の感覚だけでやり、言葉に出して説明できなければ、人に任せるなど土台無理な話です。自分の代で終わる職人ということでなければ、「任せる」ことを念頭に置いた人材育成の型をつくっていくべきでしょう。
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