なぜシェアリングビジネスがそんなに注目されるのか
世界ではUberやLyftなど、ライドシェアサービスのユニコーン企業が羽ばたく中、少し前までは「日本では規制があってなかなかシェアリングビジネスが根付かない」などと言われていたものでしたね。今やその風景はすっかり様変わりで、確かに大手ライドシェア企業こそ不発だったかもしれませんが、アイカサ(傘のシェアリング)や、コインパーキングと結びついたカーシェアリングなど、しっかりと日本の土壌に受け入れられたサービスも出て来ました。
サブスクリプションという対価支払いの考え方が普及したことと合わせて、「ルーティンの中でサービスを提供する/受ける」ことがビジネスである、というような感覚が広まってきたということだと思います。これはその対極にある「資産を販売する/保有する」というビジネスモデルの絶対性が薄れてきたことの証明でもあるのですが、先行的な事例としてはパソコンとクラウドソリューションの関係が挙げられると思います。
その昔、と言うほど昔でもないかもしれませんが、パソコンのソフトは一台ごとにライセンスを購入して、CDなどのメディアからインストールして使うものでした。これは販売/保有モデルそのものに他なりませんが、その後インターネットが普及するにつれ、クラウド上で提供されるサービスにとって代わられて行きました。今やクラウドソリューションでないパソコンの使い道など、少数派になっているのではないかと思います。
それが販売/保有モデルでも、サービス提供モデルでも、所詮デジタルで動いているサイバーベースのビジネスについてはさほど大きな副次的効果はなかったかもしれません。でもそれが実需の世界に展開されてゆくと、モノの流れに根本的な変革が起きる可能性が出てくるのです。
クルマを例にとって考えると判りやすいと思うのですが、カーオーナーは人によっては3年で乗り換え、別の人は10年以上も乗り続ける、みたいな消費行動をとります。オーナーシップによって廃車のタイミングも個々のケースで変わってくるという避けがたい宿命を負うことになります。でも、もしこれがサービス提供のシェアリングだったなら、何が起こるでしょうか?
言ってみれば大手企業が使うリースパソコンと同じで、ある日一斉にモデルチェンジが可能になるわけです、しかも計画的に。それが起きると、クルマの提供というサービスの総コストは劇的に安くなることに加え、廃車となる車のリユース・リサイクルにも大きな価値がつくようになることが想定されます。なにせ、全く同じモデルで全く同じ車齢のクルマばかりを計画した台数だけ集めることができるのですから。
この考え方は、対象が傘でも自転車でも「サービス提供型ビジネス」でさえあればたぶん有効です。シェアリングエコノミーの普及によって、そういう区切りでビジネスを提供するという取り組みが、すでにあちこちで始まっているわけです。
最近、環境ビジネスではよく「サーキュラーエコノミー」というコトバが聞かれるようになりました。いわゆるリサイクルビジネスと、現象的には非常に近いのですが寄って立つ考え方が少し違っています。政策的に言って既存のリサイクルビジネスが目指してきたのは、最終的には「廃棄物の削減」だったのですが、サーキュラーエコノミーには「新たな資源の投入を減らすことで地球の持続可能性を高めたい」という高次の理念みたいなものがくっついています。
環境ビジネスの側から言わせると、実はシェアリングエコノミーもまたサーキュラーエコノミーのバリエーションであると認識されているのですが、その理由は上で述べたように、オーナーシップが顧客に渡っていない分だけ、サプライヤー側が設備更新の自由を手にすることができるという点にあります。そうすることでリサイクルをしやすくし、再生資源のコストを下げて品質を上げることを可能にする、というものなのです。単にモノだけでなく、モノが提供する満足度を循環的に提供し続ける、そんなビジネスモデルを回す企業が出てくるような時代が、もうそこまでやってきているのかもしれません。
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