後継社長の「勇気」と「未来への投資」
当社は、同族会社と社長の財産管理実務の専門機関で、様々な会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。自ら会社を創業したオーナー社長さんもいらっしゃれば、後継社長さんもいらっしゃいます。
後継社長さんの場合は、先代社長さんと違い、資産や負債・従業員や取引先を背負っての船出になります。一般的には、後継社長さんは羨望のまなざしで見られることが多いのかもしれませんが、実際のところは、言葉には言い表せないぐらいの多くの苦悩を抱えているものなのです。
経緯に関わらず、一度社長に就任したのであれば、社員や家族を守るために最善を尽くさなければなりません。しかし現実には、後継社長にとって、社長経験が浅い段階で「乗り越えなければならない壁」目の前にたちはだかります。
私が知る限り、この「乗り越えなければならない壁」を上手に乗り越えた後継社長と、壁の前を右往左往している後継社長とでは、5年後10年後の未来が大きく変わってきます。
強く永く続く会社づくりに成功している社長は、全ての思考を「未来」から逆算して考えます。具体的には、「X年後の自分の会社の姿」を数字で明確に描き、それに必要な「投資」を積極的に行います。
また、前向きな将来への投資を行うだけでなく、「収益に貢献しない資産」や「改善の見込みがない赤字事業」、ときには「基本的なルールを無視する古参社員」などを「手放す勇気」を持っています。
シンプルなことに思えますが、実際にその立場に置かれると、「手放せない」「決められない」ということになりがちです。
ここで「手放す勇気」を持てる社長と持てない社長とでは未来が大きく変わるのですが、ここであえて「捨てる」という表現ではなく「手放す勇気」としたのには、理由があります。具体的には、「手放す勇気」の根底には、社長として会社を守る「覚悟」や、社長として全てを受け止める「腹のすわり」が不可欠だからです。
その一方で、なかなか苦しい状況が続く社長は、全ての思考を「過去」の延長線上で考えます。過去の前年対比だけで「今年は、売上が増えた/減った」と、過去と比較して見比べます。赤字が出た場合は、経費削減・コストカットなどの小手先の対処療法で解決しようとします。
そもそもの経営目標が「現状維持」のため、前向きな投資を嫌がる傾向にあります。むしろ前向きな投資をすることについては「利益が減ってしまう」「売上を増やさないと投資できない」と考えるのです。
しかし、前向きな投資というものは、本来、直後に限らず、3年・5年などの中長期で自社に還元されるものです。多くの場合は、売上自体の問題ではなく、財務構造自体に問題があります。しかし、その本質に気付かず、何年も同じことで悩み続けることになります。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
あなたは、社長として、会社の未来をつくれていますか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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