たまたま受注できた大型案件を、喜んではいけない理由とは?年商10億円企業は、得意の〇〇を売ることに徹する!
朝、PCを立ち上げると嬉しいメールが届いています。
おはようございます。今期も残すところ数日となりました。スポットの大型受注があり、創業以来初めて10億円を超えます。
これは偶発的なことと考え、来期の目標を8億円と致しました。年商10億円を超える力は、まだできていないと考えています。
来期もご支援のほどよろしくお願いします。
私は、「こちらこそよろしくお願いします。」と声に出してしまいました。
事業とは、「一つの得意とするサービスを、より沢山の顧客に提供する行為」と定義できます。
そして、年商とは、「その一つの得意とする単価と提供した件数の積」と定義できます。
職人社長や創業期の会社は、一つの「得意なサービス」と一つの「得意な単価」を見つける必要があります。
その「得意」に次の条件を満たすことができれば、一つひとつステージをあげることが可能になります。(一つひとつの条件の説明は、過去のコラムで何度もしておりますので、ここでは省略させていただきます。)
【職人社長を抜けるための条件】
(1)手間と単価が見合っていること。
(2)クリエイティヴが下げられており、並みの社員で回せること。
この2つの条件を満たすことが出来た時に、社長は現場を抜け、社員を活躍させられるようになります。この条件をクリアすることが事業家としてのスタートとなります。
しかし、これが揃ったからと言って、年商10億円になることはありません。
「大きくする」という視点が必要になります。
【事業を大きくするための条件】
次の2つの条件を満たすことで、年商10億円に進むことができます。
(3)手間の割に単価が大きいこと。
(4)そこそこの市場規模があること。
これを言い換えると、次のようになります。
「想定する単価と案件数を掛けてみた時に、年商10億円を超えるか」
一件のシステムが、400万円です。これを年間250件こなせば、10億円になります。これが、現実的かどうかです。「それだけの顧客が存在するのか。」、「そんなに沢山の案件をこなせるのか」
条件を満たせれば、スピードを持って会社を大きくすることができます。
【強い事業をつくるための条件】
その上で、「永続性」を得ることを考えます。これを言い換えれば、会社の「優位性」であり、会社の「資産」となります。
(5)シェアが取れること。
一つの評判や一つのサービスにより、継続的にシェアが守れる事業である必要があります。宣伝広告を打つことや、その実績を増やすほど、そのシェアは強固になっていきます。
逆に、シェアを守り難い事業も存在します。居酒屋、美容院、地域の工務店、開発型のシステム会社など。多くの企業が、「シェアを取る(守れるか)」という視点を持たずに事業を広めるために、不効率な営業活動と不安定な業績を余儀なくされます。また、属人的になりやすいという特性を併せ持つことが多くあります。
その事業は、「一つの技術の誕生」、「大手企業の資本にものを言わせた販促攻撃」、「そのサービスの普及とともに、コストが下がる」という荒波にも曝されることになります。IT系のサービスなどは、この典型になりやすいので注意が必要です。
この【職人社長を抜けるための条件】、【事業を大きくするための条件】、そして、【強い事業をつくるための条件】の3つを考えていくことになります。
社長は、「自分はどこまで行きたいのか」を明確にしたうえで、自社の事業を作り変えることになります。
もし、【大きく】【強い】の両方を望むのであれば、事業を展開する前から、このすべての条件を満たしていくことになります。事業を作り変えた上で、それらをこなす仕組みと、仕組みを成長させる組織をつくることをします。
その道は、やはり険しいものとなります。
冒頭のK社長は、この2年間で、この【大きく】と【強く】の条件を満たすことができました。
その結果、売上げは増えています。そこに、偶然はありません。設計通りに、集客を行い、成約していきます。得意な単価を一つひとつ積み上げていきます。
そんな中、偶発的な大きな案件が入り、今期年商10億円を超えることになります。K社長は、それで喜ぶことはありません。それどころか、その案件を受けることを一旦躊躇しました。
それは、その大きな案件を1件受けることの弊害も小さくないと考えたからです。
確かに、いまの自社の財務状況を見れば、嬉しい案件ではあります。しかし、その偶発的な案件により、自社の事業が壊れることを危惧したのです。
偶発的な案件を受けることは、自社の【得意な単価】とは異なる単価を受けることを意味します。それは、次のような現象を引き起こすことが考えられます。
・取扱う商品やサービスが増える。
・それに合わせて、内部の仕組みが複雑化する。
・一時に多くの人工が必要になる。その間その他の取組みが止まる。
・次を期待できない(期待しない)ため、「ノウハウ」の積み上げができない。
・自社が狙っているシェアとは無関係である。
K社長には、これらの弊害が良く見えていたのです。しかし、顧客との関係から考え、この「偶発的な案件」を受けることにしました。
そして、その上で、社内に方針を示しました。「これは、たまたまの案件である。これに関してのマニュアル化も仕組化も行わない。今回は力ずくで納める。」
心のなかで、「早く、このような案件を断ることのできる会社にしよう」と付け加えました。
年商を増やすことを目標にしてはいけません。
年商を増やすことを考えれば、無理をしようとします。「お客様にもっと多くの提案をする」、「取扱商品やサービスメニューを増やそうとする」これは、そのまま複雑化を引き起こします。そして、クリエイティヴという属人化を生むことになります。これは、いま進むべき方向の真逆に走ることになります。
K社長は、年商数億、職人社長時代の自社の事業に後戻りすることを恐れたのです。それは、自社の事業定義を自ら壊す危険性を孕んでいました。
偶発的な案件を望んでもいけません。我々がほしいのは、必然の10億なのです。売上げほしさに自社の得意でない単価を追って、自社の事業定義を壊してしまっている会社は少なくないのです。
目標にすべきは、件数となります。
得意なサービス、得意な単価を、どんどん量産する。それこそが、本来の事業の姿であり、それこそが年商10億に進むために必要なことなのです。
年商数億企業は、雑多なサービスを持ちます。そして、取引単価もバラバラです。
それに比べ、年商10億企業は、単品で勝負します。そして、取引単価のバラツキは小さいのです。
そして、年商10億社長は、その狙った単価以外に見向きもしません。
偶発的な売上げの誘惑には目もくれず、必然の売上げを愚直に積み上げるだけです。
余計なことはやらない。浮気しない。
それが、年商10億への最速となります。
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